18日間で4試合という、前例のない、そしてこれからもなかなか起こりえないであろうクラシコが終わった。結果は1勝2分け1敗と全くの五分。そのうち3試合を10人での戦いを余儀なくされたことを考えれば、レアル・マドリードの奮闘が光ったクラシコでもあった。
 この期間中、その過激な言動で大いに注目を集めたのがレアル・マドリードのモウリーニョ監督だった。一貫していたのは審判に対する反発で、「なぜバルセロナばかりが」と欧州サッカー連盟にまで牙を剥いた。もっとも、「なぜ」という問いかけに関して言えば、モウリーニョ自身、答えはよくわかっているはずである。
 彼の率いるチームがバルセロナと戦うと、ほとんどの場合、ボール保持率は30対70になる。今回の4試合もそうだった。サッカーのルールがボールを持っている側に与える罰則をほとんど持っていない以上、ポゼッションで劣るチームがカードをもらう可能性が高いのは当然である。おそらく、彼としては審判のバルセロナ寄りを批判することで、実際に笛を吹く者たちの「そんなことはない」という反応を引き出したかったのだろうが、あまりうまくいったとは言い難かった。

 とはいえ、半年前には0−5で惨敗したチームを、内容はともかく五分の結果を残せるところまで育て上げたのは、モウリーニョの手腕によるところが大きい。この調子でいけば、来シーズンこそは……との期待も膨らむところだが、いまのところ、去就は全くの白紙であるとされている。
 気になるのは、今回の4連戦の最初に見られた、記者会見におけるモウリーニョ監督の態度である。地元記者の質問に一切答えない、というやり方は、当然、メディアとの関係を著しく悪化させた。もちろん、そんなことはモウリーニョ監督も十二分に承知していたはずで、これは、長期政権を築こうとする人間の取る道とは思えない。一昔前、スポンサーを探す選手たちはスパイクのラインを炭で塗り、自分がフリーの立場であることをアピールしたものだったが、記者会見でのモウリーニョの態度は、国外のクラブに対するメッセージではなかったか。

 ちなみに、一連のモウリーニョ発言の中で、わたしが一番興味深く聞いたのはグアルディオラ監督に対するコメントだった。「彼はバルセロナだから勝てたのだ」という言葉は、もしかすると、グアルディオラ監督のもっとも柔らかい部分を突き刺したのではないか。彼がバルセロナの監督を辞することがあれば、それは、モウリーニョの言葉と無関係ではないのでは、と思うのだ。
 だとしたら、CLのタイトルを逃した今年のモウリーニョは、バルセロナのもっとも貴重な部分にヒビを入れたことになる。

<この原稿は11年5月5日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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