第299回 元谷友貴はRIZINバンタム級王者・井上直樹に勝てるのか? 3・30香川『RIZIN.50』展望

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「勝てて嬉しい。でも試合内容的には『しょっぱいな』とも思います。しっかり一本で勝ちたかったので、それができなかったことは悔しい」

 試合後に元谷友貴(ATT)は、そう話した。

 昨年大晦日『RIZIN.49』第10試合「バンタム級王座次期挑戦者決定戦」で秋元強真(JTT)に判定完勝した直後のことである。

 

(写真:判定は3対0で元谷<右>。秋元の進撃にストップをかけた ©RIZIN FF)

 勝負論のある試合だった。

 MMA(総合格闘技)デビューから7連勝と勢いに乗る18歳の「超新星」はどこまで強いのか? RIZIN4戦目で一気にタイトルマッチに辿り着くのか?

 秋元に注目が集まった試合ではあったが、2015年のRIZIN旗揚げ戦から出場している35歳のベテラン戦士・元谷が意地の勝利、実力の違いを見せつけた。

 

(写真:昨年大晦日『RIZIN.49』、秋元をグラウンド攻防で圧倒した元谷 ©RIZIN FF)

 1、2ラウンドともにグラウンドの展開に持ち込みバックを奪う。秋元は必死に脱出を試みるが、元谷は巧みなボディコントロールでそれを許さない。最終の3ラウンド、秋元は打撃を駆使し一発逆転を狙うが元谷が凌ぎ切って試合は終わる。ベテランの上手さが強く印象に残った。

 これにより元谷がRIZINバンタム級王者・井上直樹(キルクリフFC)に挑むことが決定した。その舞台は3月30日、あなぶきアリーナ香川『RIZIN.50』。

 

4年前のリベンジを果たしたい

 井上直樹vs.元谷友貴。

 いぶし銀ファイター同士の興味深いカードだ。互いにトラッシュトークは好まない。リング上での闘いで魅せるタイプで、十分なキャリアを積んできている。

 

「地獄のエンジェル」王者・井上は27歳で18勝(11一本&KO)4敗の戦績を誇る。この間にUFCにも参戦、今年9月『RIZIN.48』ではキム・スーチョル(韓国)に1ラウンドTKO勝利し念願だったバンタム級のベルトを腰に巻いた。

 元谷の戦績は37勝(22一本&KO)11敗1無効試合。戦場はほぼRIZINとDEEP。

 マイクを持つ際には「DEEPの元谷友貴です」と必ず口にしている。DEEPに強い愛着があるのだろう。同団体の元フライ&バンタム級王者だ。昨年からATTに練習拠点を移し3連勝中でもある。

 

(写真:3月30日、香川で開かれる『RIZIN.50』での対戦が決まった王者・井上<右>と元谷 ©RIZIN FF)

 そんな二人は、過去に一度RIZINのリングで対戦している。

 約4年前、コロナ禍の2020年の大晦日『RIZIN.26』。この時はスタンドでの互角の攻防が長く続くも、展開がグラウンドに移行した直後に元谷の背後にまわった井上がチョークを決め1ラウンドで勝利している。

 

 前戦を振り返って元谷は言う。

「あの時は自分の力を発揮できなかった。今度は自分の力をしっかりと発揮することを目標にしたい。それができれば良い勝負ができると思う」

 両者ともに打撃、組み、寝技に優れたオールラウンダー。骨格サイズでは井上が優るが実力はほぼイーブン、互いに粘り強く闘えるタイプ。いかなる作戦を立てるか、試合序盤でいずれが主導権を握るかが勝敗を分けることになろう。

「井上優位」との見方がやや多いが、元谷も十分にチャンスがあるように思う。井上戦がRIZIN21戦目となる元谷にとっては、ようやく巡ってきた王座挑戦の機会。RIZIN初上陸の四国で歓喜の叫びを上げたい――。

 

 

<直近の注目格闘技イベント>

▶1月12日(日)、大阪・176BOX/「GLADIATOR 029」フェザー級王座決定戦、ダギースレン・チャグナードルジvs.パン・ジェヒョクほか

▶1月19日(日)、東京・後楽園ホール/「PROFESSIONAL SHOOTO 2025 開幕戦」世界フライ級暫定王座決定戦、関口祐冬vs.安芸柊斗ほか

▶1月24日(金)、東京・有明アリーナ/プロボクシングWBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ、井上尚弥vs.サム・グッドマンほか

▶1月25日(土)、東京・後楽園ホール/「RISE 185」安本晴翔vs.ワン・シャンチンほか。

▶1月26日(日)、東京・後楽園ホール/「Krush.170」フライ級タイトルマッチ、大夢vs.長野翔ほか

▶1月26日(日)、大阪・世界館/「WARDOG.51」武蔵vs.川添太貴ほか

 

 

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)プロフィール>

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『伝説のオリンピックランナー“いだてん”金栗四三』『柔道の父、体育の父 嘉納治五郎』(いずれも汐文社)ほか多数。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)

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