井上尚弥、KO勝ちで春ラスベガスへ ~ボクシング世界戦~
24日、ボクシングの世界戦が東京・有明アリーナで行われた。メインイベントの世界スーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチは王者の井上尚弥(大橋)がWBO同級11位のキム・イェジュン(韓国)を4ラウンド2分25秒KOで破った。
メインイベントまでの4試合は判定が続いた。好勝負はあったものの、会場はこの男の登場を、KO勝ちを期待しただろう。
入場曲はTVドラマ『Good Luck』のメインテーマ『Departure』だ。特設のステージがせり上がり、井上は左拳を挙げた。4団体に加え、リングマガジン認定ベルトを手にした「アンディスピューテッド王者」。花道を歩くチャンピオンの後を5本のベルトを掲げた弟・拓真らが続いた。
リングインの瞬間、井上が右拳を挙げると歓声が沸いた。ファンにとっても待ちわびた一戦に1万人を超える観客が集まった。「(今日を迎えるまで)自分もどうなるか不安だった。リング上で会場を見渡した景色。多くのお客さんがいて、すごくうれしかった」と井上。本来なら彼にとってスーパーバンタム級で3度目の4団体統一王座防衛戦は12月24日に予定されていた。
しかし挑戦者のサム・グッドマン(オーストラリア)の負傷により、1カ月延期。グッドマンが1月に再度負傷したことにより13日前に対戦相手がキムに代わった。大橋秀行会長によれば、キムのリザーバーも用意し、2月6日を予備日としていたという。
試合開始のゴングが鳴ると、相手を測るようにキムのジャブを叩くパーリング。じりじりと距離を詰めていくと、試合時間が1分経過しようかというところで右ストレート。これはクリーンヒットしない。2ラウンドでは、井上の右ストレートを浴びたキムは首を横に振ってダメージがないことをアピールした。キムは左構えから強気に踏み込んだ。3ラウンドには井上が被弾する場面も見られた。
試合が動いたのは4ラウンドだ。井上の連打に対し、キムは右手をクイッと引き、“来いよ”と挑発。試合後、キムは「近付いてきたところでパンチを当てるつもりだった」とカウンター狙いだったことを理由を説明した。当の井上は「ちょっとムッとしました」と口にし、「“絶対倒してやる”と思った。そんなにことしなきゃいいのに……」と胸の内を明かした。
最後はワンツーが顔面をクリーンヒット。キムはロープに弾かれるようにして膝をついた。レフェリーがカウントアップ。セコンドからもタオルが投げ入れられたが、記録は10カウントコールよるKO勝ち。「手応えは最初の方からあった。どういうフィニッシュにつなげていくかを考えていました」と井上。アクシデント続きの防衛戦を快勝で締めた。
「大事な年にしたい」と井上。今後については「大橋会長と話をして決めていきたい」と話したが、リング上のインタビュー中、トップランクのボブ・アラム氏が「偉大な国の偉大なチャンピオン」と井上を評し、春にラスベガスで試合を開催する意向を伝えた。井上本人も「海外での試合を目指している。ラスベガスで試合をしたいと思います」とリング上で応じた。
(文/杉浦泰介、写真/大木雄貴)