次世代の「ミスター愛媛」として期待されている選手である。
 越智亮介、21歳。大分トリニータのユースから故郷のクラブでプロになって3年目。主にボランチで昨季は31試合に出場した。イヴィッツア・バルバリッチ監督からも「プレーにクリエイティビティがある」と評価を受けている。
(写真提供:愛媛FC)
「ゲームを組み立てられるところはおもしろいですね。でも逆に言えば、自分が機能しないとチームがダメになる。大変なポジションだと思います」
 169センチ、62キロ。華奢な体と甘いマスクは一見、サッカー選手とは思えない。しかし、ひとたびボールを持つと流れるようなパスでチャンスを演出し、スキあらば自ら持ち込んでミドルシュートも放つ。

 6月19日の鳥栖戦でも途中出場でピッチに入ると地味ながらキラリと光る仕事をした。後半24分、センターサークル付近でボールを持つと、ドリブルでまず中盤の選手を引きつけ、左サイドへボールをさばく。これで相手の中盤と最終ラインの間にスペースができた。そこへFWジョジマールが入り、ボールを受けたDF前野貴徳が素早くクロスを送り込む。ジョジマールは得意の左足を振り抜き、先制ゴールを決めた。そして同点に追い付かれた終了間際には中央からロングボールを入れ、ジョジマールの勝ち越し弾の起点となった。

 パスにはこだわりを持っている。
「パスでゲームコントロールができる選手になりたい。得点に絡める選手になりたい」
 それが理想のプレースタイルだ。パスの重要性に気付いたのは、トリニータのユースの頃。中学まではフォワードやトップ下のポジションでドリブルを得意にしていた。中2の時にはスカウトにやって来たトリニータの担当者から、3年生と間違われるほど能力はズバ抜けていた。

 しかし、上には上がいる。ユースに入ると越智はひとつの壁にぶち当たった。
「中学までは通用していたドリブルが思うようにいかなくなったんです。身体能力が自分より高いヤツがいっぱいいました。どうしたらいいのか考えた結果、自分はパスで人を動かすタイプで、人を活かすことで自分も活きるんだと気づいたんです」
 自分の特徴を知り、パスに磨きをかけ、プレースタイルを変えた。最初はなかなか試合に出られなかったが、最終的にはユースでボランチのポジションを獲得した。

 愛媛でのルーキーイヤ―は開幕戦から出場を果たし。2年目の昨季は31試合に出場した。着実に成長の階段を上っている。
「まだまだ相手のプレッシャーがきついとプレーの精度が落ちるのは課題ですね。前に向けるところでもプレーが消極的になってしまう。でも、昨年の経験で、試合にも慣れて、1試合を戦い抜く体力がついたと思っています。今季はもっと点に絡む仕事をしたい」

 先述の鳥栖戦で劇的勝利を収めた愛媛は6月20日現在、J2の3位につけている。開幕直後を除けば、昇格圏内に入るのは初の出来事だ。
「地元のチームがJ1に行くとすごく盛り上がる。それを大分にいた時にすごく感じました。だから愛媛もJ1に上がったら、全体が盛り上がるはず。だから愛媛をJ1に上げたい」
 今季の目標は5ゴールと定めた。ボランチの彼が得点をあげられるようなサッカーができれば、J1は充分、視野に入ってくるはずだ。そして、夢を現実に変えた時、越智亮介はミスター愛媛の継承者となる。

(後編につづく)

<越智亮介(おち・りょうすけ)プロフィール>
1990年4月7日、愛媛県出身。ポジションはMF。6歳からサッカーをはじめ、将来有望な選手として愛媛県トレセン、四国トレセンにも選ばれる。明徳義塾中から今治日吉中を経て、高校時代は大分トリニータユースへ。ボランチとして頭角を現し、09年、愛媛に加入。豊富な運動量と攻撃の起点となるパスが持ち味。昨季はシーズン途中から副キャプテンに任命され、31試合に出場。第4節の鳥栖戦でプロ初ゴールも決めるなど、将来のクラブを背負う選手として期待が高い。身長169cm、62kg。



(石田洋之)
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