WBC王者・中谷潤人、“ビッグバン”の破壊力でKO防衛! WBA王者・堤聖也はドロー防衛 〜ボクシング世界戦〜

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 24日、ボクシングのダブル世界戦が東京・有明アリーナで行われた。WBC世界バンタム級タイトルマッチは王者の中谷潤人(M.T)が同級6位ダビド・クエジャル(メキシコ)を3ラウンド3分4秒KO勝ちを収めた。WBA世界バンタム級タイトルマッチは王者の堤聖也(角海老宝石)は同級4位で元WBC世界フライ級王者・比嘉大吾(志成)は引き分け。堤が初防衛となった。また119ポンド(約53.98kg)契約10回戦はWBOアジアパシフィックバンタム級タイトル王者の那須川天心(帝拳)が前WBO同級王者ジェーソン・モロニー(オーストラリア)に判定勝ちした。

 ネクストモンスター、愛の拳士からビッグバンに異名を変えた中谷。早速、名物ロングアナのジミー・レノン・ジュニアからコールをされ、リングに上がった。
 
 その爆発的なパンチは健在。試合時間(インターバルを除く)が10分も絶たぬうちに勝負を決めた。中谷によればルディ・フェルナンデストレーナーからの指示は「インサイド、真ん中を打っていけ」だった
 1ラウンド目から当たるパンチを探るように攻撃を繰り出していく。身長はクエジャルが中谷より1cm高い(中谷173cm、クエジャル174cm)。「もっと簡単に当たるかなと思っていたが、うまく当てさせてくれなかった」と中谷は振り返った。
 
 だが“調整時間”はそれほどかからなかった。3ラウンド、残り30秒を切ったところで最初の「振るよりも真っ直ぐ当てる」というイメージで左ストレートを見舞い、ダウンを奪う。挑戦者が立ち上がったところをすかさずラッシュ。「左フックの軌道で相手の中心を狙っていた。身体がスムーズに動いた」と、相手のガードをかいくぐる左が顔面を襲い、追撃の左で仕留めた。レフェリーが10カウントし、両手を交差した。
 リング上でインタビューを受ける際、IBF同級王者の西田凌佑(六島)がリングイン。中谷は「前回は“WhosNEXT?”って言いましたけど、今回は、西田選手、やりましょう」と呼びかけた。西田も「自分は中谷選手とやりたいと思っていた。ぜひお願いします」と返答。次戦は統一戦を目指す方向だ。日本人が4団体それぞれの王座を持つバンタム級戦国時代だが、緑の王者・中谷がその中心にいる。
 日本人対決となったWBA世界バンタム級王座を争う一戦。堤vs.比嘉の4年2カ月ぶりの再戦は、再びドローという結果となった。2020年10月に対戦した両者。当時は比嘉を1人のジャッジが支持し、あと2人はドローだった。
 
 堤は井上拓真(大橋)から王座を奪取して以来の初防衛戦、比嘉はWBO王者の武居由樹(大橋)に敗れた後の再起戦だった。戦前は打ち合いが予想されたが比嘉は距離を取り、カウンターを狙った。手数やアグレッシブなのは堤に見えたが、カウンターで有効打を与えているのは比嘉に映った。
 
 4ラウンドには偶然のバッティングから堤が右目付近をカット。視界が狭くなった状態で以降、戦わざるを得なくなった。
 試合後が動いたのは9ラウンドだ。1分50秒過ぎ、比嘉のカウンターの左フックで堤がダウン。「人生で初めて。スパーリングでもなかった」というダウンにも王者は動揺しなかった。「流れの中で出したもの」と打ち下ろし気味の右で比嘉を前のめりに倒した。比嘉が立ち上がった後もラッシュを仕掛けたが、ここは仕留めきれなかった。
 
 比嘉によれば、ダウン以降の記憶はあまりないという。セコンドの野木丈二トレーナーはラウンド後のインターバルでの一幕を明かす。
「『やばいです。今どこ? 誰と試合していますか?』と言っていた。意識を呼び戻すことで精一杯だった」
 観客の大きな拍手で迎えられた10ラウンド。堤は仕留めにかかるが倒し切れない。比嘉も耐えて12ラウンドが終了した。堤によれば、ゴングを聞いた後、勝った手応えはなく、「比嘉がチャンピオンになっても文句は言えないという内容だった」という。ジャッジ3人が114-114。激闘を終え、2人は抱き合いリング上で言葉を交わしていた。
 
 堤は規定により防衛に成功。「比嘉が強かったのが前提ですが、自分自身が情けない気持ちが残る試合でした。自分の弱さが表れた。もっと理想の自分を出せるように頑張りたい」と複雑な胸中を語った。今後については「この内容で統一戦だとか、『そんな器じゃない』と言われる。口に出しても文句を言われないくらい強くなりたい」と話すにとどめた。
 バンタム級リミットより1ポンド重い119ポンド契約で行われた那須川とモロニーの一戦は、10ラウンド30分を戦い抜いた。
 
 モロニーは井上尚弥(大橋)、武居とも対戦経験がある元世界王者。プロボクシング6戦目にして過去最高の実績を誇る相手にどんな闘いを見せるのか。那須川陣営にとって“世界前哨戦”の位置付けとなろう。
 
 試合は那須川がスピードを生かしながら、距離を取って左を当てていく。モロニーは距離を詰めて接近戦を望んだように映ったが那須川は付き合わない。6ラウンドにモロニーの右ストレートを食い、あわやダウンかと思われたが、那須川は踏ん張って免れた。
 
 結局両者決定打がないまま、最終ラウンドへ。10ラウンドは打ち合いの様相を呈したが、決着は判定に委ねられた。3対0のユナニマス・ディシジョンで那須川の勝利。ジャッジ1人は98対92、残り2人は97対93を付けたが、スコアほど両者の差はなかった。これはラウンドマストシステムのため、微妙なラウンドでも10対9と優劣が付くためだろう。
 
 試合後はかねてから那須川と対戦を希望する武居がリングイン。那須川が「僕が挑戦する立場。いつかどこかで闘いましょう」と言うと、WBO王者は「自分もやらなきゃいけないことがある。またリングで会いましょう」と応じた。那須川は試合後の記者会見で今後について「まずはベルト。その後に武居選手とベルトを懸けられたら」とプランを述べた。
 
(文/杉浦泰介、写真/大木雄貴)
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