パラ9競技団体協働プロジェクト、“共助”の3期目へ ~P.UNITED SESSION~
パラスポーツ9競技団体が共同に行うプロジェクト『P.UNITED』(P.U)が6日、都内でイベント「P.UNITED SESSION 2025」を開催した。トークセッションの1部にはパリオリンピック総合馬術団体で銅メダルを獲得した戸本一真、カーリング元日本代表の市川美余、パラ馬術でパリパラリンピック8位入賞の稲葉将、車いすフェンシングでパリパラリンピック2種目入賞の加納慎太郎、パラ水泳&車いすカーリングの花岡恵梨香に加え、スポーツジャーナリストで当HP編集長・二宮清純が登壇した。
P.Uとはパラスポーツ競技団体が持つ共通の課題に対し、9競技団体(日本車いすカーリング協会、日本障害者カヌー協会、日本障がい者乗馬協会、日本パラ射撃連盟、日本身体障害者アーチェリー連盟、日本知的障害者水泳連盟、日本知的障がい者卓球連盟、日本パラ・パワーリフティング連盟、日本パラフェンシング協会)が協働することで、それぞの基盤強化に繋げるためのプロジェクトである。2023年6月に設立し、この4月で3期目を迎える。河野正寿プロモーションチームリーダーはここまでの2年を振り返り、こう所感を述べた。
「1が9集まることへの反響が予想以上に大きかったと感じています。実際にこの活動をしていく中、我々が直面している課題、普及が進まない、スポンサーが付かないというところで、(P.Uには)3団体に付いていていただいた。普及イベントを開催しても多くの人に来ていただけているのは、成果として手応えを感じています」
2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季パラリンピックまで、あと1年という節目に、トークイベントは開かれた。第1部では現役オリ・パラ選手、元選手、スポーツジャーナリストによるトークセッションとなった。二宮はP.Uについて、「素晴らしい試みだと思います。これまで日本のスポーツというのは縦社会だった。P.UNITEDは横連携。自助、共助、公助、その全部が大切です。中でも共助は、共に支え合い、共に学び合い、そして共に助け合う横連携です。P.UNITEDは決してメジャーとは言えない9団体が共助の精神で一緒にマネジメントをやりましょう、一緒に広報活動をやりましょうと手を組む素晴らしい活動だと思います」と語り、こうエールを送る。
「ぜひ成功してもらいたいと思います。9団体が力を合わせることによって、三位一体ならぬ“九位一体”で頑張ってもらいたい」
P.U効果について、パラ側の意見はこうだ。
「他の競技団体、P.UNITEDとしての横の繋がりということで言うと、僕はこれまで他のイベントにも参加をさせていただき、他競技の選手とお話をさせていただいた機会がありました。ルールを知るところから、交流することにより、その競技に対して興味が湧いたり、より深く知ってみようという思いに繋がってくると思う。僕自身、いろいろな競技のルールから最初は入り、『普段はどんなトレーニングしているんですか?』『どうやって過ごされているんですか?』などと少しずつ意見交換しています。この活動で世界が広がっていくような感じがします」(パラ馬術・稲葉)
「P.UNITEDの選手同士でLINEのグループをつくっています。そこで内側からやっぱこう盛り上げることによって、外側にエネルギーをこう発信できるようにしたいなというふうにコミュニケーションをとったり、なんで影響を与えようという努力をしています。みんなで仲間意識を持ち、エールを送り合ったりできることは、すごくいいところだと思っています」(車いすフェンシング・加納)
「P.UNITEDでいろいろな体験会などに参加すると、自分の競技の紹介をするのはもちろんですが、他競技を体験する。同じように他競技の選手が車いすカーリングを体験したり、『体験してみたい』との声をいただくことも。これは横の繋がりで得られたことだと思っています。車いすカーリングはP.UNITED内で唯一の冬競技なので、夏冬二刀流も可能なので『夏冬に挑戦してみよう』という選手も出てきたりする」(パラ水泳&車いすカーリング・花岡)
日本カーリング協会のアスリート委員を務める市川は、他競技との交流について、こう語る。
「協会によってシステムは全く違う。他競技の方との交流によって、情報をいただけることもあります。カーリングのアスリート委員会主催の勉強会などにも他競技の方を呼び、一緒に勉強しようと取り組んでいます。例えばセカンドキャリアについて、講師の方呼ぶ勉強会にも他競技の選手に声をかけて一緒に勉強会をするなど、今は少しずつ広がっていると感じています」
馬術の戸本は、オリ・パラ協働を提案する。
「パラの馬術の方が、我々よりもチーム感がすごいといつも思っていました。それがどういった人が選手をサポートしているのかを知りたい。我々の技術、普通の馬術選手にはないものだったり、連盟のシステムだったりがあるかもしれませんから。馬術競技でオリ・パラ一緒に開催することで、パラ馬術のサポート体制も学べるんじゃないかなと思っています」
この日のイベントを通じた“異業種交流”もP.Uの効果と言えるだろう。
第2部にはP.Uの野口尚伸プロジェクトマネージャー、栗栖良依アンバサダー、女優のサヘル・ローズが「人や社会を動かす力」をテーマに、アート・スポーツ・エンターテイメントの視点からトークセッションをした。東京2020パラリンピック開閉会式のステージアドバイザーを務め、アートと社会の架け橋として活動するSLOW LABEL(スローレーベル)の創設者(現・芸術監督)である栗栖アンバサダーは「まずは
栗栖アンバサダーのパラスポーツとの関りはリオデジャネイロパラリンピックから。閉会式の旗引き継ぎ式にステージアドバイザーとして関わった。
「比較的長い年月、パラスポーツとは近いところにいます。開会式をつくるにあたり、パラスポーツの歴史も調べ、大分にも結構通いました。パラスポーツの選手たちとの接点はそれなりにあるので、アンバサダー就任に違和感はありませんでした。東京大会が終わってから、パラスポーツと直接関わる機会がなくなっていたので、今回接点をいただけてうれしいです」
東京大会の開会式ではスローレーベルでソーシャルサーカス(障がいの有無にかかわらず、サーカス技術の習得を通じ。協調性を学び、コミュニケーション能力も培うプログラム)プロジェクトの参加者が出演した。栗栖アンバサーはパラスポーツXソーシャルサーカスという取り組みも考えているという。
「ぜひP.UNITEDのアスリート
スポーツに限らず芸術・アートともコラボするP.U。<これからって時が、いちばん面白い。>。まだ立ち上げ2年である。その可能性は幾通りもあるだろう。
(文・写真/杉浦泰介)
■関連記事はこちら
https://www.ninomiyasports.com/archives/129640