スピアーズ船橋・東京ベイ、今季5度目の後半に逆転勝ち ~リーグワン~

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 14日、「NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25」ディビジョン1の第11節が東京・秩父宮ラグビー場で行われ、3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイが12位の浦安D-Rocksを33-22で下した。次節はスピアーズが5位の横浜キヤノンイーグルス(22日、東京・スピアーズえどりくフィールド)、D-Rocksが8位の三重ホンダヒートと対戦する。

 

 後半17分過ぎ、神宮球場側のゴール裏に陣取っていたカメラマン数人が伊藤忠商事ビル側に移動してきた。プロのカメラマンたちの仕事は決定的な瞬間を撮ること。それは伊藤忠ビル側に攻めるスピアーズに潮目がきていることの証左である。

 

 一時は22点差を離されていたが、スピアーズは16分にスクラムでペナルティーを獲得。直後のラインアウトからのモールで押し込み、HOマルコム・マークスがトライ。SOバーナード・フォーリーのコンバージョンキックで1点差に迫っていた。

 

「相手のバックスペースにチャンスがあることはWTB根塚( 洸雅 )選手と話していた」とFB押川敦治。22分、絶妙なグラバーキックをディフェンスラインの裏に転がした。これに反応した根塚がディフェンスで競り合うとボールがこぼれる。さらにD-RocksのWTB松本壮馬が弾き、トライエリア(インゴール)でバウンドした。ここに詰めていたのがスピアーズのCTBリカス・プレトリアスだ。

 

「相手がボールをタップしていたのをアピールしていた」
 一旦は手を挙げてマイボールをアピールしたが、弾んだ楕円球はタッチラインを割らなかった。「ラッキーなバウンドをしたので反応した」。すぐにプレトリアスは両手でグラウンディング。TMOの末、トライが認められ逆転に成功した。

 

 29分、押川が自陣から右サイド奥にロングキック。弾んだボールが22mライン内内側のタッチラインを割りそうになり、「50:22」を避けたD-RocksのFBクリス ・コスグレイヴが防ごうとしてたところにプレッシャーを掛け、ターンオーバー。ボールを左に展開。CTB立川理道、フォーリーと繋ぎ、FLトゥパ・フィナウがトライエリアに飛び込んだ。フォーリーがコンバージョンキックを決め、スコアを33-22とした。

 

 その後もスピアーズはD-Rocks陣内に攻め込み、2度、トライエリアにボールをグラウンディングしたが、いずれもTMOにより一連のプレーで反則があったと判定され、トライは認められなかった。試合はそのまま33-21でノーサイド。前半15点差(0-15)、最大22点差の逆転劇を演じてみせた。


 今季、前半リードされながら逆転した試合は5勝目だ。トヨタヴェルブリッツ戦10-21、リコーブラックラムズ東京戦11-15、イーグルス戦3-12、コベルコ神戸スティーラーズ戦3-20からひっくり返した。

 

 その要因のひとつに挙げられるのが後半から出てくる破壊力抜群のリザーブ陣だ。マークス、PRぺティ・ヘルら強力なFWパックが出てきてチームに勢いを付けている。立川は「強いチームは対応力、修正力に長けている。その意味ではスコッドの層の厚さは感じている」と地力がついてきた手応えを感じつつつも“スロースターター”ぶりを課題に感じている。

 

 多少の点差なら跳ね返せるという自信はあるのか、と問うとSH藤原忍はこう答えた。「ないですね。本当は最初からリードしたい」。この日も途中出場からテンポの速いパス出しでチームをリードしたが「(途中出場の場合)負けていたら流れを変える。ただ勝っていても負けていても自分の役割は変わらない」と、やるべきことを遂行したという。

 

 自分たちのやるべきことをやる。先発フル出場のプレトリアスもハーフタイムや試合中のハドルで「クボタのプロセスを信じよう」と話し合ったという。それはフラン・ルディケHCも同じで「自分たちはハーフタイムに修正して、冷静にやるべきことをやったので、ひっくり返すことができたと思います」と言い、こう続けた。
「内容としては、小さなこと、ベーシックなことを確実にやったことで、この結果につながった。そこは選手たちを褒めたいと思います」

 

 一方のD-Rocksはリードを守り切れず悔しい逆転負けとなった。前半はボールをワイドに展開し、スピアーズの守備網を切り裂いた。ゲームキャプテンのHO藤村琉士は「いいチームは80分間素晴らしいパフォーマンスができるチーム。後半も変わらずにやらないといけないので、自分たちはもう一段階上げないといけなかったかなと思います」と肩を落とした。

 

 またこの試合は「deleteCマッチ」として、D-Rocksの選手はdeleteCのメインカラーであるマゼンダを基調としたジャージを着用。来場者にも先着1万人にマゼンダカラーのベースボールシャツを配布し、スタンドをその色に染めた。グレイグ・レイドローHC、藤村も試合後の記者会見で、協力への感謝を冒頭に述べた。

 

 この日の秩父宮ラグビー場には1万4056人の観客が集まったが来場者数×10円、D-Rocksの得点×1万円などがガン治療研究の寄付に充てられる。D-Rocksは社会貢献活動にも注力している。

 

(文・写真/杉浦泰介)

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