10日現在、信濃グランセローズは15試合を終えて7勝6敗2分で上信越地区2位です。とはいえ、首位の新潟アルビレックスBCとは0.5ゲーム差、3位の群馬ダイヤモンドペガサスとは1ゲーム差と、まさにダンゴ状態。対戦成績も新潟とは3勝3敗1分、群馬とは1勝0敗1分と、五分です。3チームともに実力は拮抗しており、いずれも優勝の可能性は十分にあります。ですから、いかにとりこぼしを少なくしていくかが重要です。暑さが増すこれからが正念場となります。
 さて、信濃のチーム状態はというと、先発ピッチャーの杉山慎(市立船橋高−日本大−全足利クラブ)、給前信吾(横浜商大付高)、篠田朗樹(春日部共栄高−武蔵大)が本当に頑張ってくれています。課題はリリーフ陣。せっかく先発ピッチャーが試合をつくっても、リリーフが崩れて勝ちゲームを落としたり、引き分けに終わったり……。先述したように、今後は取りこぼしができない試合が続きます。実力が拮抗しているだけに、1、2点を争う接戦も多くなってくることでしょう。そういう時にリリーフの存在は欠かせません。優勝するためにも、非常に重要なポジションです。そこで約1週間前から篠田をリリーフにまわしました。彼はどんな場面にでも攻めていくことのできる強心臓の持ち主。その部分を買ったのです。

 また、5月に加入した中村尚史(武蔵工大付高−中央大−クリーブランド・インディアンス1A)の存在も大きいですね。彼は現在、21試合に投げて2勝0敗2S、防御率1.89。中継ぎ、抑えとフル回転で活躍してくれています。中村のボールは威力があり、打者の手元でちょっと落ちたりと変化をするのです。球速も140キロ台半ばありますから、打者にとってはやっかいでしょうね。また、打者に向かっていく強気の姿勢がいい。ピッチャーには非常に重要なことです。素材的にはもっとボールに伸びが出てくるはずですから、今後の成長が楽しみです。

 一方、打線はというと、前期の勢いが少々なくなってきているように感じられはするものの、現在チーム打率は2割8分とリーグトップ。昨季と比べると、特に長打力がアップしています。昨季、21本だった三塁打は既に19本、23本だった本塁打は26本を数えています。

 なかでも最も成長したと思われるのは、脇田晃(関西創価高−創価大)です。今季は軸がしっかりとしてきて、バットの出がよくなりました。現在、打率3割6厘はリーグ6位の成績です。その背景には彼のひたむきな努力があります。キャンプで彼は自ら志願し、毎日特打ちを行なったのです。キャンプで一番バットを振ったのは脇田と言っても過言ではありません。今の成績はその努力の賜物なのです。

 さて、私は就任以来、ずっと「ピッチャーを中心に守り勝つ野球」をテーマに掲げてきました。しかし、前期はイージーなゴロを弾いたり、捕っても悪送球したりと、つまらないミスで失点することも少なくありませんでした。しかし、後期に入ってそういったミスがだいぶ少なくなってきています。その最大の要因は、今村亮太(佐久長聖高−東京経済大)を外野からサードへとコンバートしたことにあります。おかげで内野の守りが非常に締まるようになってきました。

 また、ショートの松本匡礼(松商学園高−松本大)の存在も大きい。今季の松本は、守備の面で非常に上達しました。バウンドの合わせ方が巧くなりましたし、スローイングも安定しています。その要因の一つにはキャプテンに就任したことがあるのでしょう。我々が何も言わなくても、必要と感じれば、自主的にチームでミーティングを開いたりして、チームを引っ張ってくれています。その責任感が守備にも好影響を与えているのだと思います。今の松本はキャプテンとして言うことなし。このまま、今後も頑張ってほしいですね。

 さて、現在のダンゴ状態から抜け出し、後期優勝を達成するためには、やはり取りこぼしは許されません。勝ちゲームを確実にモノにしていくには、1球、ワンプレーに集中し、大事にしていくことが需要です。そのことをチームで徹底して戦っていきたいと思います。


佐野嘉幸(さの・よしゆき)プロフィール>:信濃グランセローズ監督
1944年4月1日、山梨県出身。甲府工業高から1962年、東映(現・北海道日本ハム)に入団。72年に南海へ移籍し、レギュラーに定着した。73年にはリーグ優勝に貢献する。75年のシーズン途中で広島に移籍し、同年チーム初のリーグ優勝に貢献。79年に現役を引退し、翌年から国内外の球団でコーチや二軍監督を務める。2001年〜03年にはMLBパドレスのスカウトに就任。04年〜08年は千葉ロッテのコーチを務めた。10シーズンより信濃の監督に就任した。
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