第174回 アウトプットこそ、大事なんです!

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 先輩の皆さまと楽しい会。尊敬する大先輩がこんなお話をしてくれました。

「だんだん(歳をとってくると)生活の中にインプットが増えてくる。ジム、哲学勉強会、読書……。この間ふっと、それに気がついて、ゾ~ッとしました。これまでの(仕事のある)人生ってインとアウトが自然とバランスが取れていたし、取れなくなったら意識して調えるを繰り返していたんだなぁと」

 

 そして、先輩の話は続きます。
「アウトプットすることがどんなに大事なことか改めて気づかされました。なぜなら、相手に伝わらないと意味がない。だから伝わるように勉強しなければならないんです!」

 

 この時私は、先日小学校を訪問したイベントを思い出しました。全学年の児童対象にパラアスリートとのトークショー。アスリートから提案いただいたテーマは「チャレンジ」。素敵なお話を引き出す役目を仰せつかりました。

 

 集中力が途切れないように、動画を観てもらったり、参加者に身体を動かしてもらったりするコーナーを入れて構成しました。“いい感じ”と自画自賛。しかし、本番数日前にあることに気づきました。“小学1年生は「チャレンジ」という言葉だけで意味を理解するのか?”という疑問です。直前ですが、気づいてよかったです。

 

 「チャレンジとは、やったことのないこと、できるかどうかわからないことをやってみること」これを最初にお話しなきゃ、いけません。

 

 子どもに話すのは大人のそれより、よほど難しいこと。何故なら、大人は一つの単語にその背景や歴史、現状をさっと思い浮かべ、こちらの言いたいことを察してくれます。

 しかし、子どもにそれを期待できないからです。

 

 トークショーの途中で、こんなこともありました。

「優勝した国際大会。決勝戦の前日、どんな気持ちでしたか?」という私からの質問に対し、パラアスリートから「予選で怪我をしてしまったので……」との答えが返ってきました。

 

 このアスリートが出場した大会は、予選リーグを経て、決勝トーナメント、決勝戦と続きました。このことを大人はすぐに想像します。しかし、子どもは「?」が頭に浮かぶのです。

 

 そこで私から「大会にはたくさんの国からチームが出場しています。優勝するまでには、いろんな国と何度も試合をして、勝ち上がって、そして決勝戦なんですね?」と質問を入れました。

「はい! そうなんです。最初の試合から優勝まで10日くらいかかります」

 子どもたちの「???」の表情は解消され、その目はキラキラと光っていきます。

 

 インプットは、自分さえわかればいいし、自己満足できればいい。

 しかし、アウトプットは、伝えたい人にまずは伝わらなければ意味がありません。そのあと共感してもらえたら、さらに嬉しい!

 

 大先輩から身に染みるお話をご教授いただき、小学校で素敵な機会をいただき。さらに光栄なことに「児童にわかりやすいお話でした」と校長先生からお褒めのお言葉をいただきました。またまた大成長したわたくしです。

 

 自慢話にならないように書いたつもりですが、なってしまいましたか?

 でも、それが偽らざる気持ちです。

 

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。STANDでは国や地域、年齢、性別、障がい、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。2024年、リーフラス株式会社社外取締役に就任。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。

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