24日現在、群馬ダイヤモンドペガサスは21試合を終えて7勝11敗3分。首位の新潟アルビレックスBCとは3.5ゲーム差で上信越地区3位に低迷しています。「ピッチャーを中心に最少失点に抑え、守り勝つ野球」ができていた前期は2位の信濃グランセローズに5ゲーム差をつけて優勝しましたが、後期に入って一転、投打がかみあわない試合が続いています。技術的に不足していることもありますが、最大の理由は選手一人一人の気持ち。チーム全体でもっとモチベーションを高めていかなければいけないと感じています。
 実は開幕前、僕は前期のような圧勝というかたちで優勝できるとは全く思っていませんでした。というのも、投手陣では通事慧太、野手ではカラバイヨと丹羽良太が抜けましたので、昨季と比べると戦力的には落ちると感じていたからです。加えて、故障者が相次ぎ、一時は僕自身が選手登録をせざるを得ないというほどの危機的状況でした。

 そういった中で優勝できたのは、何より投手陣の頑張りがあったからこそに他なりません。その証拠に、前期の21勝のうち3点差以内のゲームは実に半数以上の11にものぼりました。まさに「最少失点に抑え、守り勝つ野球」ができていたのです。

 ところが、後期に入ってかみ合わない試合が多くなっています。もちろん、他球団の戦力がアップしていること、優勝した群馬に対して研究していることなど、要因はさまざまあると思います。しかし、一番は選手自身の気持ちでしょう。前期で優勝したことにより、群馬には既にプレーオフの進出権が与えられています。それが心の緩みを生じさせているのかもしれません。また、NPBに上がるという本来の目標を忘れ、このリーグの試合に出場しているだけで満足してしまっているように感じられるのです。

 選手たちはなぜ、このリーグに来たのかを今一度、思い出してほしいと思います。BCリーグは最終目標ではないなずです。ここでの活躍をステップにし、NPBへ上がること。これこそが、BCリーグに来た本来の目的ではなかったかと思います。ならば、より高みを目指して技術を習得するためにしっかりと練習をし、レベルの高いプレーができるように必死に努力しなければなりません。また、BCリーグはあくまでも観客に入場料を払ってもらっているプロリーグであることも忘れてはなりません。「野球で飯を食べている」という自覚をもっともってほしいと思います。

 こうした中でも新人の新井伸太郎(日本航空高−創造学園大)が予想以上の活躍をしてくれています。前期は故障がありながら、優勝に大きく貢献してくれました。彼はリーグでも一、二を争うほどの俊足の持ち主。現在、盗塁数21はリーグトップの成績です。とはいえ、まだまだ課題は山積しています。特にバッティングに関してはパワー不足が否めません。筋力をつけ、速い打球が打てるようになれば、さらに大きく成長することでしょう。内野手で171センチ、63キロと、ポジションも体格もほぼ僕と同じこともあって、期待している選手の一人です。性格は明るく、練習態度もいたってマジメ。成長著しい選手ですので、ぜひ注目してほしいと思います。

 さて、僕自身はというと、昨季限りで現役を引退し、今季から指導者の道を歩み始めたわけですが、尊敬できる秦真司監督と八木沢荘六コーチから学ぶことも多く、勉強の毎日です。自分でやることと教えることの違いをまざまざと感じ、大変なことも多いのですが、いろいろなことを吸収できる今、充実感でいっぱいです。例えば、これまで現役時代は投手陣についてほとんど知らなかったのですが、八木沢コーチからは投手心理や配球のことについても教えていただき、また違った角度から野手たちにアドバイスすることができています。指導者としては1年目で、正直、まだ右も左もわかっていません。しかし、選手と同世代だからこそ、監督や八木沢コーチと選手との仲介役を担うことができます。それも大事な僕の役目だと思っています。指導者としての勉強を重ねながら、少しでもチームに貢献できるように、僕自身も頑張りたいと思います。

青木清隆(あおき・きよたか)プロフィール>:群馬ダイヤモンドペガサスコーチ
1985年8月30日、群馬県出身。前橋育英高、大東文化大を経て、2008年、群馬に入団。チーム一の俊足プレーヤーとして活躍し、08、09年にはベストナイン、09年には盗塁王に輝いた。今季よりコーチに就任し、指導者としての道を歩み始めた。
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