以前、当コーナー内で山本化学工業が今回の福島第一原発での事故を踏まえ、放射線を防ぐ素材やウェアを開発中であるとの山本富造社長の発言を紹介した。そして、この5月にはバイオラバーRSM「放射線遮蔽ウェア」、6月には放射線遮蔽の「バイオラバーRSM WP-16」が相次いで発表されている。

 今回の原発事故は収束まで長期化の様相を呈しており、現場作業者のより一層の安全の観点からも、放射性物質が直接、人体に付着するのを防ぐ機能に加え、放射線自体からの被曝をより軽減する対策を施すことが不可欠になっている。
 
 だが、従来の放射線遮蔽服では「鉛の含有量が多く非常に重い」「体に密着感を持たせる形状にできない」「縫製加工などを行うと縫合部から放射線が透過侵入する」といった欠点があった。したがって作業員に対して被曝量をチェックをし、短時間の作業でも基準値を超えると別の作業員と交代せざるを得ないのが現状だ。

 この状況の改善に期待されているのがバイオラバーRSM「放射線遮蔽ウェア」である。これは、まず独自の技術を活用し、独立気泡構造合成ゴムに放射線を遮蔽する重金属を均一分散させている。そして、ハニカム構造によって直線光である放射線を乱反射させ、放射線の推進力を減衰させる。これにより、放射線を遮蔽する重金属の含有量を最小限に抑え、軽量化も可能になった。さらに縫製では接合する素材と素材を一体化する加工技術を利用し、接合部分からの放射線の透過侵入を防止している。

 ウェアは上半身を覆うベストと下半身を保護する短ズボン、そして甲状腺を守るネックガードの3パーツからなり、放射線に対して体の大切な部分を保護する構造になっている。この上から、さらに使い捨てタイプの放射線防護服を着用することで、ウェア自体は繰り返し何度も使用可能だ。山本化学工業では、このウェア着用により、被曝に対する本人や家族の不安や心配を軽減するとともに、現場での作業の効率化が図れることを期待している。

 また従来の放射線を遮蔽する素材では放射線中のX線は、ある程度防げる一方、より強いγ線は3割程度に留まっていることが知られている。このγ線を遮蔽する素材として開発されたのが、「バイオラバーRSM WP-16」だ。この新素材では、セシウム137が発する強い放射線(γ線)を1枚で21%遮断する。つまり、新素材を何枚にも重ねることにより、γ線を大幅に防ぐことができるというわけだ。

 しかもバイオラバーだけあって、素材には柔軟性があり、鉛板などを使用したものよりも軽くて扱いやすい。したがってウェアのみならず、さまざまな用途でこの素材を活用できる。たとえば、地下階から非常に強い放射能が出ている場合、建物内に人が立ち入ることができないが、この新素材を床面に重ねて敷き詰めることで被曝量は大きく低減できる。

 山本化学工業では、原発敷地内での簡易防護壁や、放射能に汚染された配管に巻き付けるといったかたちでも、この新素材は役立つとしている。


 山本化学工業株式会社