前々回に当コーナーで紹介した山本化学工業の医療機器「温熱バイオラバー」が、10月1日から全国で発売された。この機器にはバイオラバー素材に取り外し可能な温熱ジェルパックがついている。ジェルパックを加熱することで温熱治療が行えるだけでなく、パックを冷却することで消炎鎮痛処置を施せるという。この画期的な医療機器に関する今後の展開について、当HP編集長の二宮清純が、「ゼロポジションスイムウェア」のさらなる展開について訊ねた。

(写真:ジェルパック(上)は電子レンジ(600W)で30秒加熱する)
 体温を1度上げる効果

二宮: 今回の「温熱バイオラバー」の特徴について、改めて教えてください。
山本: もともとバイオラバーには赤外線を発して体を温める機能がありますが、その機能をより高めるには、ラバーで体をこする必要がありました。「温熱バイオラバー」では温熱ジェルパックを入れることで、装着するだけで体をより温めることができるのです。

二宮: 発表まで最も苦労した点は?
山本: 厚生労働省から医療機器として認可されるまでには紆余曲折がありました。赤外線を発する部分が肌に直接当てられる形状にしなくてはならないとか、温度をあげた状態で赤外線を放射しなくてはならないとか、いろいろハードルがあった。実は温熱ジェルパックはそれらをクリアするために考え出したものです。

二宮: 装着した時の効果は?
山本: 9月10日から名古屋で開催された日本ハイパーサーミア学会で、近畿大学医学部の植村天受教授が「温熱バイオラバー」を装着することで体温を1度上げる効果があると発表しています。しかも、このバイオラバーは電気を使わないためオンオフによる影響を考慮しなくていい。電気機器だと、どうしてもオン時とオフ時の体温変化が生じてしまうので、体温調節を司る自律神経に負担がかかります。このバイオラバーなら、装着している限り、体温を高めた状態を維持できるのです。

二宮: 実際に使用した人からの反応はいかがですか?
山本: 低体温の方に「温熱バイオラバー」を当てると、体温が正常値まで上昇するといった感想をいただいています。冷え性で手足が冷たい方も30分間、装着すると指の先まで温かくなってくる。人間は体温が低いと免疫力が低下し、病気にかかりやすくなります。冷え性や低体温症対策はもちろん、高齢者の方の病気予防、リハビリの促進を目的とした活用が期待されます。

 リハビリの効果もアップ

二宮: 「温熱バイオラバー」がリハビリをする上でもプラスになる理由は?
山本: 体が温まるので、その分、筋肉がほぐれて動きやすくなるからです。介護の現場においてリハビリは大変な作業です。高齢になればなるほど体が硬くなっているので、なかなか筋肉は伸びません。筋肉が伸びないと動きが悪いままですから、取り組んでいるほうも苦しい割には効果が実感できないという悪循環に陥ってしまいます。そこでこの「温熱バイオラバー」をしばらく装着してからリハビリを開始すると、血流が改善し、筋肉が柔らかくなるので、今まで以上に体を動かせる。同じ時間でもリハビリの効果が上がるわけです。

二宮: 特に高齢者の場合、体が冷えている状態で無理に動かすと、靭帯などを痛める心配もありますからね。
山本: そうなんです。だからリハビリを担当する人たちも無理矢理動かすわけにはいかない。この点はスポーツのリハビリとは少し違います。無理が利かない分、余計に効果が上がらなくなってしまうんです。それが少しずつでも動くようになればリハビリの効果も出てくるし、取り組む方もヤル気が出てくる。リハビリでも運動でも一番ツライのは最初ですからね。そこを乗り越えると、体を動かすのが苦ではなくなってきます。

二宮: リハビリのみならず、スポーツをする際にも故障予防として応用できそうですね。
山本: はい。「温熱バイオラバー」を装着すれば、ウォーミングアップも効率よくできます。血行が改善されるので筋肉痛や疲労回復にも利き目があります。先にも話したようにバイオラバーは赤外線を発するので、単に表面だけを温めるわけではない。体の中から温かくしてくれる。健康のために始めたスポーツでケガをしては元も子もない。もともとは体温を上げるための医療機器ですが、スポーツの分野でも役立つと見ています。

二宮: 山本社長もこれを装着してダイエットに挑戦しているとか。
山本: おかげさまで昨年の冬から14キロ痩せました。毎朝、腹筋を300回やって、その後、拳立てもやっているのですが、やはり腹筋も最初の60回が苦しい。そこでバイオラバーマットを敷いて、「温熱バイオラバー」を装着すると20回くらいで体が温まってくる。そうすると何回やっても苦しくないんです。おそらく30分前から装着して運動すれば、最初の1回目から動きが違ってくると思います。

二宮: 季節は秋になり、スポーツには最適なシーズンです。
山本: ジョギングをしている知人に、これを試してもらったところ、「体が重くて走るのがツライと感じる日がなくなった」と感想を漏らしていました。筋肉の働きが良くなるので体がよく動くのでしょう。可動域が広がる分、ゴルフの飛距離が上がったと教えてくれた人もいます。誰もがスポーツを楽しくケガなく続けられるようにお手伝いする。これが我々の役割かなと感じています。

(つづく)

 山本化学工業株式会社