前期に続き、後期も9勝19敗4分の最下位。やはりリーグ参入1年目のチームが、7年目を迎えた四国の4球団と対等に戦うのは簡単ではありません。すべてにおいて力不足を感じた1年でした。開幕前、選手たちはもう少し、いい成績を残せると思っていたことでしょう。実際、僕たちももうちょっと上を目指せたとみています。ただ、開幕から負けが込んだ時の選手たちの考えに大きな差が出てしまったように思います。
 三重の選手たちは結果が出ないと「何が足りないのか」を反省するのではなく、「次は大丈夫」と根拠のないプラス思考に陥っていました。現実を直視せず、自分に都合のよい方向に解釈していたのです。「このままではダメだ」という意識に到達するには、かなりの時間を要しました。

 シーズン当初に描いていた投手陣の不調も誤算でした。エースの洪成溶、元千葉ロッテの末永仁志、長富浩志前監督が期待していた清水信寿……。彼らが思ったように結果を出せず、悪循環にハマってしまいました。

 ただ、実戦を積むことで選手たちは着実に成長はしてきています。後期は最下位だったとはいえ、前期ほど手も足も出ない内容は少なくなりました。負けの中にも手応えをつかんだ戦いだったと思います。

 それだけに来季のリーグ参戦を断念せざるを得なくなったのは残念でなりません。今回の決定に関して事前に球団から話は聞いていましたが、こればかりは現場の我々はどうすることもできません。チーム自体、今後どうなるか分かりませんし、選手たちもおそらくバラバラになることでしょう。僕自身も今後は未定です。もし引き続き、三重で指導するにしてもまた1からチームづくりをすることになるでしょう。

 アイランドリーグでの3年間は2度、シーズン中の監督交代でチームの指揮を執るなどいろいろありました。客観的にリーグの実力をみつめた時、個人的には結果を残している先発投手がもう少し評価されてもよいのではと感じます。このところNPBのドラフト会議では各チームの中継ぎや抑えが指名される傾向が強いです。確かにボールの速さといった部分ではスカウトには彼らのほうが良く見えるのでしょう。

 しかし、1年間、先発ローテーションを守り、コンスタントに成績を残してきた安定感は他のアマチュア選手にないアドバンテージです。今季に関して言えば、最多勝に輝いた徳島の大川学史や香川の高尾健太などはNPBに行っても充分、通用するでしょう。これといったボールはなくても勝ち星を積み重ねている事実に目を向けてほしいものです。

 そのためにも、やはりNPBに行った選手たちが活躍してリーグのレベルが高いことを示す必要があります。野手ではありますが、長崎時代に指導した東北楽天の松井宏次は2軍のコーチ陣から高い評価を得ています。まだ育成選手ではありますが、みやざきフェニックス・リーグにも参加しており、支配下登録も近いとの話を耳にしました。彼は何より守備という武器があり、足も速い。1軍で即レギュラーになることは難しくてもベンチの控えとして役割は果たせます。こういった特徴のある選手は、うまくチームで居場所をみつけると長く生き残れるものです。ぜひ松井には来季こそ支配下登録、そして1軍昇格を勝ち取り、リーグの後輩たちの目標となることを期待しています。
  
 1年間、三重の皆さんにはお世話になりました。まだ来季のことは未定ですが、いずれにしても、この経験を生かして今後も野球に携わっていくつもりです。また、どこかでお会いできるのを楽しみにしています。

古屋剛(ふるや・つよし)プロフィール>:三重スリーアローズ監督
1970年4月13日、東京都出身。駿台甲府高、拓大、新日鉄君津を経て1997年、ドラフト7位で内野手として西武に入団。翌年、1軍デビューを果たし、8年間のプロ生活で79試合に出場した。04年限りで戦力外通告を受け、現役引退。通算成績は打率.187、1本塁打、6打点。09年から長崎のコーチとなり、10年5月からは長冨浩志前監督の解任に伴い、監督に昇格。11年は再び長富監督の下、三重のコーチに就任する。だが、長富監督辞任の後を受け、5月17日より監督代行として指揮を執る。7月より監督に昇格。
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