日本はE-1で多くの収穫
E-1選手権で日本が2大会連続、通算3度目の優勝を決めた。
以前から言われていたことではあるが、今大会もまた、「大会の意義」について様々な声が飛び交った。「こんな大会に参加すること、勝つことに意味はあるのか」などなど。
再来月、日本は米国に遠征して親善試合を行うことが決まっている。敵地で、W杯を開催する2カ国と戦うことによって得られるであろう財産、経験を考えると、確かにE-1という大会の持つ意義はちっぽけにも思える。
ただ、ものは考えようである。
いわゆる欧州組が参加できないことで、今大会では多くのJリーガーが初代表に選出された。レベルがどうであれE-1は国際Aマッチ。選手のキャリアには「日本代表選手」という付加価値がついたことになる。
おそらく、このことに一番喜んでいるのは選手の代理人だろう。無名の若手が海を渡ろうとする場合、どうしても交渉相手からは足元を見られがちで、ともすれば先方の言い値での契約を迫られることも珍しくない。だが、そこに「日本代表」という肩書が加われば、交渉はまた違ったものになるだろうからだ。
当然、Jのクラブにとっても恩恵はある。今大会の活躍によって、たとえばジャーメイン良の知名度と注目度は確実に上がった。チームのアイコンたりえる存在の誕生は、プラスはあってもマイナスはない。海外志望の強い若手を抱えるクラブにとっては、雀の涙程度だった移籍金に変化が出る可能性もある。
正直、代表を率いているのが外国人監督であれば、こうした副産物は「知ったことか」でしかない。求められているのは代表で結果を残すことであり、将来の日本サッカーのためへの投資を考える必要はないからだ。この大会での結果だけを考えるのであれば、欧州組以外の、しかし代表歴のある選手で固めるのが定石だった。韓国の洪明甫監督がそうしたように、である。
代表監督という立場からすると、かなりリスクのある手法を取った森保監督だったが、その甲斐はあった、と言っていい。W杯本大会のメンバー選考が難しくなったというのは、掛け値なしの本音だろう。
初代表組で評価を上げた選手としてまず挙げられるのは、もちろんジャーメイン。香港戦の4ゴールだけでは微妙だったが、韓国戦で決勝点をあげたのは大きい。欧州組のライバルは多いが、本大会行きのウエーティングリスト最上位にランクされたのは間違いない。
もう一人評価したいのが、中国戦で素晴らしいセーブを見せた早川。大迫はもちろん安定していたが、早川の場合、初代表であれだけのプレーを見せたところに価値がある。立場としては大迫、谷に並んだと言えるのではないか。
福岡からただ一人選ばれた安藤の奮闘も光った。まだ粗さは残るものの、球際の強さ、機を見て前線に飛び出す勇気と迫力は、大きな可能性を感じさせた。
本人は出来に不満かもしれないが、原のスケールの大きなポストプレーも魅力的だった。使い方によってはいままでにないタイプのアクセントにもなるだろう。
というわけで、意味がないどころか、この大会で一番多くの収穫を得たのは日本だったのではないか、とわたしは思う。W杯予選を欧州組だけで戦うことが常態化した日本だからこそ、この大会の存在意義はある。
<この原稿は25年7月17日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>