2011年も残すところ約10日。今年も愛媛のスポーツ界ではさまざまな出来事があった。秋に開催された第66回国民体育大会「おいでませ! 山口国体」では、愛媛県は天皇杯(男女総合)で25位に入り、昨年の千葉国体での38位から大幅にランクアップ。6年後の国体に向けて着実に強化が進んでいる。またゴルフ界では松山市出身の松山英樹(東北福祉大)がマスターズで日本人初のローアマチュアを獲得。柔道界でも伊予市出身の浅見八瑠奈(女子48キロ級、コマツ)、松山市出身の中矢力(男子73キロ級、東海大)が世界柔道パリ大会で金メダルに輝いた。
 なぎなたでは39歳の池見敬子(松山東雲中学、高校教)が兵庫県で開かれた世界選手権で12年ぶり2度目の栄冠。なでしこジャパンのW杯制覇で注目が集まる女子サッカーでは、愛媛FCレディースが2部にあたるチャレンジリーグへの昇格を決めた。18日には全国中学校駅伝大会の女子の部で新居浜東中が県勢初優勝の快挙を達成している。そんな朗報も多かった1年を、ボート武田大作選手、ダイキ弓道部、ダイキジュニアゴルフスクールはどのように過ごしてきたのか。それぞれの2011年を振り返る。

<武田、五輪へ大きな試練>

 5度目の五輪出場へ、ボート武田大作には大きな試練が訪れている。今季は五輪出場権確保のため、8月の世界選手権(スロベニア・ブレド)で上位に入ることを目標に掲げていた。だが、夜久智広選手(東レ滋賀)と組んだ軽量級ダブルスカルでは7月の「FISAワールドカップ第3戦」では22位。世界選手権の出場を逃した。
「このレースで18位以内に入ることが世界選手権出場の条件でした。そのくらいの成績は残せると思っていただけに誤算でしたね。ただ、夜久君とペアを組んだのは3カ月前。2人の感覚を合わせ、コンビネーションを高めるには時間があまりにも短すぎました。これが現実なので仕方ないと思っています」

 さらに9月に行われた全日本選手権ではケガにも見舞われた。シングルスカルで決勝のレース直前に腰を痛め、まさかの2着に沈む。
「朝、サングラスをかけずに練習をしていて、太陽がまぶしかったので首を左へ曲げた瞬間に腰がグキッとなったんです……。それでも何とかなるという感覚はあったのですが、ラストの1800メートルくらいから足がしびれて動かなくなってしまった」
 過去、同種目で12度の日本一を達成している第一人者も「競技生活初めて」というアクシデントには対処しきれなかった。ゴール手前の大失速で1着の選手に逆転を許した。

 10月の国体では別府晃至(今治造船)と組んで成年男子ダブルスカルに出場(写真)。急造ペアながら準優勝を収めた。「もっと“世界で勝ちたい”という気持ちを全面に出して取り組まないといけない」と語る38歳にとって、若手の突き上げが乏しい日本ボート界の現状は決して満足できるものではない。当然、パートナーには高いレベルを求めており、ここ数年はペアを組む相手を探すのに苦労している。
「まず気持ち、心が強くないと戦いには勝てません。そして次が体。最後がテクニック、技です。体が強ければ、テクニックは練習でいくらでも磨けます。心技体ではなく“心体技”。これが僕がパートナーに求める優先順位です」

 五輪に出るためには来年4月のアジア大陸予選で3位以内に入ることが条件になる。
「頑張っていれば、光は見えてくる。そう信じています」
 決して楽観視できる状況ではないが、世界で戦い、世界に勝つ日まで諦めるわけにはいかない。

<弓道、来季こそ国体出場を>

 ダイキ弓道部は今季、「弓の安定」をテーマに掲げてスタートを切った。1月の全国弓道遠的大会では原田喜美子が2位。6月の日本勤労者選手権大会(岐阜県恵那市まきがね公園体育館)では主将の橋本早苗、山内絵里加、原田の3選手で大会に臨み、3位入賞を収めた。
「昨年の準優勝以上の成績を狙っていただけに悔いが残ります。ただ、私が入社して以来、2年連続で入賞したことはなかった。その意味では一歩前進と言えるでしょうか」
 主将の橋本は大会をそう振り返る。

 この大会で次々と矢を的中させたのが原田だ。これまでは緊張のあまり、本番で練習通りの力が出せないことが多かった。そんな彼女に橋本は「緊張するのは当たり前だし、緊張しないほうが無理。力んでもすぐ矢を離してしまうのではなく、納得いくところまで引こう」と声をかけた。
「昨年の大会は2位になったとはいえ、私は足を引っ張ってしまった。国体のブロック予選でも悔しい思いをして、もっと試合で弓をしっかり引きたいという強い気持ちが出てきました」
 そう語る原田は予選こそ矢が荒れていたものの、決勝トーナメントでは、本人曰く「神がかり的」な活躍をみせる。1回戦で最初の1本を外した以外は、2回戦、準決勝、3位決定戦とすべて的を射抜いた。

 好成績を弾みに8月の国体ブロック予選(写真)には成年女子の県代表にダイキ弓道部の3選手(橋本、原田、北風磨理)が選ばれる。しかし、ここで落とし穴が待っていた。近的で2位、遠的で3位に終わり、総合3位(出場は上位2県)で国体出場を逃してしまったのだ。他の種別(成年男子、少年男女)はすべて1位通過。しかも山口での本番では成年男子が遠的で準優勝を収めるなど全種別で入賞を収めただけに、余計に成年女子の落ち込みが目立った。

 屈辱の2年連続国体ブロック予選敗退から2カ月。第59回全日本実業団弓道大会、第31回全日本実業団遠的大会に参加したダイキ弓道部は近的女子の部で2年連続11度目の団体優勝に輝く。産業別団体戦(金融・商事・その他の部)では連覇を逃したものの3位。個人では橋本が交歓射会で3位入賞し、遠的女子の部で5位だった。

「来年こそ、まずは国体出場を勝ち取らないといけない。まだまだ崖っぷちです」
 橋本たち部員が見据える最大の目標は当然、来年の国体出場、そして上位進出だ。県代表を選考する予選会はこの25日からスタートする。代表に選ばれるのは3名。5名の部員たちは仲間でありライバルだ。2年連続で予選の補欠にまわった山内は「レベルアップした姿をみせたい」と練習後も体力強化をはかっている。部内の競争が激しさを増し、自然とお互いを高め合う。その先に大舞台が待っている。

<着実に成長遂げるジュニアゴルフ>

 活動3年目を迎えたダイキジュニアゴルフスクールが着実に成果を収めつつある。8月9日に高原ゴルフ倶楽部(久万高原町)で開催された愛媛県小中学生ゴルフ大会では、中学女子の部で3年生の野々村颯記さんが2位、小学男子の部で6年生の岡山史弥くん(写真)が2位、小学女子の部で4年生のマニックス・ジョイ明美さんが3位に入賞した。岡山くんは7月18日に新居浜カントリー倶楽部で行われた四国小学生ゴルフ大会でも3位に入り、10月の全国大会(千葉カントリークラブ)への出場権を獲得した。

 また8月18日の愛媛ジュニアゴルフ選手権(高原ゴルフ倶楽部)では小学生の部で岡山くんが2位、中学生の部で1年生の竹下桃夏さんが1位と同スコアの2位と結果を残している。好成績をあげたのは、先に紹介した子どもたちだけではない。愛媛県小中学生ゴルフ大会では小学校男子の部でトップ10のうち半数をスクール生が占めた。
「全体の選手がレベルアップしている。これは予想以上の成果です」
 江口武志監督も手ごたえを感じている。昨年12月の就任以降、「練習のための練習ではなく、試合のための練習」をモットーに、実際のコースでラウンドする機会を増やした。その中でスクール生はぐんぐん成長をみせている。

 10月9日に開かれた全日本小学生ゴルフトーナメントに参加した岡山くんは12オーバーの29位。しかし、江口監督は「全国大会になると緊張して力が出せない選手が多い中、彼はイメージしていたショットができていた」と評価する。現に愛媛に戻って彼はゴルフが変わってきたそうだ。
「ショット、パットともに不安な素振りを見せなくなりました。全国大会で自信がついたのでしょう。彼の場合、練習量も多いし、技術的な基礎は固まってきました。あとは体が大きくなって力がつけば、おもしろい選手になると思います」

 子どもは年単位ではなく、季節単位で伸びていく。江口監督も「夏と比べてスイングが力強くなってきた子が多くなりました」と明かす。この冬はなわとびやランニングなども取り入れた下半身強化に力を入れ、来季以降もラウンド練習を継続する方針だ。
「えひめ国体まであと6年。ここからは新しい子どもたちを増やすこと、今の生徒たちのレベルを底上げしたい」
 宮崎順GMは、そう今後の方針を明かす。

 国体で活躍できるゴルファーの育成という点では、野々村さんが6月の選考会で6位タイとなり、県の代表候補選手に選ばれた。まず国体に出られる選手を育てることがスクールの当面の目標だ。
「体や技術が伴わないのに、いきなり全国大会で優勝を求めるのは現実的ではありません。それよりもしっかり基本を身につけ、一打でも平均ストロークを上げる。これが個々の選手たちの目標です。練習も試合も一生懸命に、かつ楽しく取り組んでもらうことを目指したいと考えています」
 江口監督が語るように、ダイキジュニアゴルフスクールでは2012年も目先の結果にとらわれず、長い目で若きゴルファーを指導していく。

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(石田洋之)
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