浮かんでは消え、消えては浮かぶ。MLBの気紛れにプロアマ含めたこの国の野球界は、どれだけ振り回されてきたことだろう。
 海の向こうで、またぞろインターナショナルドラフトの導入が浮上してきた。MLB機構がインターナショナルドラフトの実現性を話し合う委員会を設置し、来年早々から協議に入るというのだ。
「国際ドラフトが日本プロ野球を潰す!」。こんな刺激的なタイトルが冠されたリポートを国際情報誌に私が寄稿したのは今から17年前のことだ。当時の旗振り役はドジャースのオーナー、ピーター・オマリー。エクスパンションによりメジャーリーグが28球団制になったのは1993年から(その後、98年から30球団に)。MLBは人的資源を中南米諸国に求め、それでは足りないとばかりに東アジアにまで触手を伸ばし始めたのは周知の通りだ。これによりMLBの外国出身選手の割合(開幕時点、ロースターと故障者リストの選手で計算)は97年の19%から、05年には29.2%にまで跳ね上がった。今でも実に4人にひとり以上が非米国人である。

 MLBではドラフトを6月に実施する。現在の指名対象は米国、カナダ、プエルトリコの学校や独立リーグ出身の選手に限られている。これが新制度の導入で日本のアマ選手も対象となり、ヤンキース3巡目、ドジャース5巡目、マリナーズ15巡目といった具合に勝手に指名されたらどうなるか。もちろん指名された側に拒否する自由はあるものの、本人がその気になったら誰も引き止められない。こうなれば日本プロ野球の空洞化は避けられない。

 ところでNBA、NHLにおいてはインターナショナルドラフトで指名された日本人選手が過去に3名いる。たとえばバスケットボールの岡山恭崇。81年のNBAドラフトで彼はウォリアーズから8巡目指名を受けたが、ルーキーキャンプに参加しなかった。

 話を本論に戻そう。断っておくがインターナショナルドラフトの実施は日本のアマ選手の選択を広げるものであり、それ自体を否定するものではない。危惧するのは米国の覇権主義的な“黒船政策”に、果たして紳士協定で対応できるのかということだ。他国を単なる人的供給源としか見なさない米国の“国際的青田買い”には断じて「NO」と言うべきである。

<この原稿は11年12月21日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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