今回、徳島で監督を務めることになりました。正直なところ、自分がチームを率いる立場になるとは思ってもみなかったです。12月の頭に球団から就任要請を受けた際も、ずっと断り続けてきました。なぜなら、僕自身、タイプ的にに先頭に立ってチームを引っ張る器でないと感じたからです。むしろコーチとして影で支える立場のほうが向いていると考えていました。
 それでも監督を引き受けたのは球団の誠意に負けたからです。何度も何度もお願いされ、最終的には「これも経験かな」と思い、決意を固めました。本当に監督になるとは想像していなかったので、どんな指揮官を目指せばよいか、これから一懸命、勉強する必要があります。幸い、高校時代は木内幸男監督の指導を受け、プロに入ってからは4球団を渡り歩いていろんな監督と出会ってきました。そのなかでいいものを実践しながら、自分なりの監督像をつくっていきたいと思っています。

 ただ、長年、野球をやってきて、トップに立つ人間に求められる要素は状況判断の速さだと感じています。高校の木内監督もスパッと決断が速い方でした。リーダーが迷っていては選手は不安になるでしょう。どんな時も判断、決断のスピードを速くすることを心がけていきたいと考えています。

 昨年も斉藤浩行前監督から投手陣を任せていただいていたため、継投に関しては何とかなるでしょう。攻撃で試合に流れに沿った采配がどのくらいできるかが問われていると思います。その点、野手は國信貴裕や猪澤海が退団したとはいえ、松嶋亮太関口大志といった主力が残りました。昨季の攻撃野球にプラスアルファが見込めると期待しています。

 一方、投手に関しては残留組が岩根成海小福川誉河野章休の3名のみ。クローザーの富永一が広島入りし、最多勝の大川学史もチームを去ったため、今季は新たにローテーションを組み直す必要があります。しかもレギュラーキャッチャーの山村裕也も退団したため、バッテリーの信頼関係も一から構築しなくてはなりません。残った3投手はぜひチームの軸になってほしいものです。
 
 なかでも2年目の河野には期待しています。彼はまだ19歳。練習もまじめですし、これからドンドン伸びるとみています。彼の良さは右打者のインコースにも思い切って投げられるところ。コントロールも悪くなく、投球術を覚えれば先発、中継ぎ、どちらでも通用します。昨季は17試合に投げて1勝6敗、防御率4.71。まずは経験を積んでほしかったので、彼には「打たれて覚えなさい」と言ってきました。時には厳しいことも言いましたが、1年間の成果が今年に出てくるとみています。

 また新戦力でもドラフト2位指名の山口直紘(桜丘高−明治大学−千葉熱血MAKING)はトライアウトでもキレのよいボールを投げていました。制球もまずまずでフォームもいいので、うまくいけばローテーションに入ってくるでしょう。また沖縄出身の安里基生(前原高−沖縄国際大)もいいボールを持っています。ちょっと太り気味の体型のため、1年間を投げ抜く体力がつけば十分、戦力になるとみています。加えて1位指名で強肩強打のキャッチャー、山城一樹を獲得することができました。21歳ながら体つきもしっかりしており、山村の穴を十分埋めてくれそうです。

 昨季、徳島は球団史上初の優勝を収めました。しかし、独立リーググランドチャンピオンシップではアイランドリーグ勢では初めて日本一を逃す屈辱も味わっています。やはり選手たちの経験が浅く、勝負どころでの弱さが出ましたね。前向きにとらえれば、今季に向けてのいい宿題ができたと言えるでしょう。斉藤前監督が築いた土台をベースに、短期決戦でも勝てる緻密さを攻守にわたって植えつけたいと考えています。

 目標はもちろん独立リーグ日本一です。そして今年のみならず、ずっと勝ち続けることのできる常勝軍団を目指します。不安がないと言ったらウソになりますが、選手たちと一緒になって精一杯、頑張ります。徳島のみなさん、若い選手の多い新生インディゴソックスをどうぞよろしくお願いします。


島田直也(しまだ・なおや)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1970年3月17日、千葉県出身。常総学院時代には甲子園に春夏連続出場を果たし、夏は準優勝に輝いた。1988年、ドラフト外で日本ハムに入団。92年に大洋に移籍し、プロ初勝利を挙げる。94年には50試合に登板してチーム最多の9勝あげると、翌年には初の2ケタ勝利をマーク。97年には最優秀中継ぎ投手を受賞し、98年は横浜38年ぶりの日本一に貢献した。01年にはヤクルトに移籍し、2度目の日本一を経験。03年に近鉄に移籍し、その年限りで現役を引退した。日本ハムの打撃投手を経て、07年よりBCリーグ・信濃の投手コーチに。11年から徳島の投手コーチを経て、12年より監督に就任。
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