新年明けましておめでとうございます。今年の福井ミラクルエレファンツは、酒井忠晴監督を新指揮官に迎え、新たにスタートします。そして僕自身、昨シーズン限りで現役を引退し、今年からはコーチとして指導者の道を歩むことになりました。地元・福井で、そしてリーグ一温かいファンのいるエレファンツで、再スタートを切ることができることに今、大きな喜びを感じています。
 さて、昨シーズンを振り返ると、なかなか投打がかみ合わず、苦労しました。その最大の要因は投手陣に故障者が多く出たことで、計算が狂ってしまったことです。それでも後期に優勝することができたのは、「これではこれまでの弱いエレファンツに戻ってしまう」という危機感をチームでもてたこと、そして新人の川端元晴(鯖江高−福井工業大)や森本将太(福井高)、岡本伊織(武生商業高)といった若手のピッチャーが期待以上に頑張ってくれたことにありました。

 チームの投手成績を見ると、完投は22試合とトップです。これは完投能力の高いピッチャーがそろっているということでもある半面、彼らにばかり頼っているということでもあります。つまり、ある特定のピッチャーたちに負担がかかり過ぎてしまっているのです。2010年であれば、藤井宏海(福井高)、高谷博章(北海高−浅井学園大)、岩井昭仁であり、11年であれば藤井、高谷、そして川端でした。現在はプロでもピッチャーの分業制は不可欠となっています。もちろん、先発完投型というのが理想であることに変わりはありません。しかし、シーズン中には4連戦もあり、先発投手だけでは長いシーズンを戦い抜くことはできません。ですから、今シーズンは先発以上に安定したリリーフ陣を擁し、強固な投手リレーを作り上げたいと思っています。

 一方、打撃の方では昨シーズン、打率、打点、本塁打、盗塁の全部門でリーグベスト10に入った内田享良と、僭越ながら僕が退団したことで、正直、これまでエレファンツの得点の心臓部が抜けた状態になっています。それを埋めなければいけないわけですから、決して楽観視することはできません。そこでチームの得点力を上げてくれる選手として期待しているのが、昨年のドラフトで指名した伊勢田翔(横浜商科大高−新潟アルビレックスBC−紀州レンジャーズ)です。身長180センチ、体重95キロと恵まれた体格をもつ彼は一発を期待できるパワーがありますから、ここぞという時のポイントゲッターとして、うまくはまってくれたらと思っています。

 さて、僕自身はというと、今シーズンからコーチとして指導者の立場に立つことになったわけですが、実はずっと「指導者にだけはなりたくない」と考えていました。なぜなら、ずっと現役として野球を続けていきたいという気持ちがあったからです。そんな僕が2年間、BCリーグで過ごすうちに、野球人としての次なる夢として「指導者になりたい」と思うようになったのには、やはりこのリーグに対する感謝の気持ちがあったからに他なりません。僕にとってBCリーグ、そしてエレファンツは、もう一度、野球選手として光を与えてくれた場所。この2年間は、キャプテンとしてチームを優勝に導きたいという思いでやってきたわけですが、今シーズンからは指導者としてチームの優勝はもちろん、BCリーグの認知拡大にも貢献していきたいと思っています。新監督の下、これまで築いてきたものを継承しながら、さらに進化していきたいと思っていますので、今シーズンも熱い声援をよろしくお願いいたします。

織田一生(おだ・いっせい)プロフィール>福井ミラクルエレファンツコーチ
1983年8月20日、福井県生まれ。福井高、東北福祉大、TDK千曲川、TDKを経て、2009年シーズン途中、福井ミラクルエレファンツに入団。10、11年と主将としてチームを牽引した。11年シーズン限りで現役を引退し、今シーズンよりコーチを務める。
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