昨日は「久しぶりにテニスを見た!」という方も多かったことだろう。どこの国でもそうだろうが、とかく日本人は海外で自国民が活躍するニュースに弱い。
 スポーツ選手の躍進は、日本人としてのプライドを大いにくすぐってくれるものらしい。おそらくは各方面から「感動した」といったコメントが出てくるだろうが、そろそろ結果を消費するだけでなく、生み出すために何かをしようという機運は出てこないものか。感動するだけして、あとはポイ捨て。そういう扱われ方をしてきたスポーツが、この国はあまりにも多すぎる。
 昨年、日本中を感動させたなでしこたちを取り巻く狂騒曲は、いまなお続いている。サッカーとは直接関係のないジャンルに顔を出しているケースも珍しくない。これまでまったく注目してもらえなかっただけに、このチャンスを逃したくないという関係者の気持ちは痛いほどにわかる。だが、彼女たちはあくまでもサッカー選手であって、芸能人ではない。

 ロンドン五輪でのメダル獲得が決して簡単な目標ではないことを考えると、ユニホーム姿以外の露出が多すぎる現状に、反動の怖さを覚えてしまう。そろそろ、勇気を持ってブレーキをかける必要があるのではないか。

 ちなみに、個人的にはなでしこよりもロンドンでメダルを獲得する可能性が高いのでは、と見る男子五輪代表は、2月5日にグループ2位につけるシリアとの直接対決を迎える。本大会でのメダルの可能性を言いながら矛盾するようだが、この試合で日本が敗れる可能性も十二分にある。それぐらい、今回のシリアは強い。日本にとっては、あのジョホールバルでのイラン戦以来、およそ15年ぶりに味わう“危険な真剣勝負”と言えるかも知れない。

 前回の対戦では急遽チームに加わったボルシアMGの大津が救世主となったが、今回はチーム側から合流への難色を示されていると聞く。シリアを倒すためには、現場の頑張りはもちろんだが、交渉に当たる協会の手腕も重要な意味を持ってくる。

 A代表では本田圭佑のラツィオ入りが秒読みに入ったという。ロシア・リーグも決してレベルの低いリーグではないが、守備に関して言えばイタリアとは比較にもならないほど緩く大雑把である。ゆえに、献身的な動きをする本田が守備的な負担を負うことも多かったのだが、ラツィオが用意したされる背番号は10。攻撃的な大黒柱としての活躍が期待されている。ここで期待にこたえることができるようならば、ロンドンの2年後、ブラジルでの4強入りも現実味を帯びてくる。

<この原稿は12年1月26日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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