今季のJリーグは後に「歴史的ターニングポイント」として記憶されるシーズンになるかもしれない。
 まず注目したいのは、今年から導入されるクラブライセンス制度である。一時は凋落の一途をたどっていたブンデスリーガがギリギリのところで踏みとどまり、やがて再上昇のカーブを描くことができたのは、厳密なライセンス制度によって健全な財政状態が保たれていたからでもある。
 ただ、日本の現状を鑑みた場合、「3年連続赤字ならJより降格」という罰則は、赤字を避けるための消極的な経営に走るクラブ、つまり勝つための資金投下を渋るクラブを増やしてしまう可能性もある。

 そうならないために必要なのは、勝ち続けることによって人気と資金を集めるクラブ、いわゆるジャイアント・クラブの存在なのだが、そうなる可能性の最も高いクラブも、今季から生まれ変わることになる。言うまでもなく、浦和レッズである。

 志はともかく、結果としては大失敗に終わってしまった“フィンケ時代”の数年間によって、レッズはほぼ手中にしかけていた「巨人」の資格を取り落としてしまった。昨季15位に終わったチームを建て直すのはペトロヴィッチ監督といえども容易ではないはずだが、かといって再建に時間がかかりすぎるようだと、レッズが日本の象徴となる可能性はますます失われていってしまう。

 ただ、柏レイソルのJ1優勝、FC東京の天皇杯優勝によって、タイトルを以前よりもグッと身近に感じるようになった選手、クラブは少なくないはず。いままでは戦う前から優勝を諦めていたようなチームも、今季は何か一つはタイトルを、と狙ってくるに違いない。強豪と目されるクラブにとっても、相当に難しいシーズンとなろう。

 難しいといえば、J2は大変なことになる。何しろ、22チームのうち9チームにJ1に所属した経験がある。以前のJ2はJ1復帰を狙うチームとそうでないチームとの間に歴然とした格差があったが、今季は、ほぼ半数が復帰を狙うチームとなり、しかも、JFLとの入れ替え戦も導入される。今年の末か、それとももう少し先になるか、いずれにせよ、J1からJFLに転落するチームが出てくるのは間違いない。そうなった時、チームは生き残ることができるのか。それとも、消滅を余儀なくされるのか――。

 間違いなく言えるのは、今年からのJリーグは、セーフティーロックが外されたリーグになる、ということである。破滅の穴は深くなった。ゆえに、生まれるドラマも奥深くなる。

<この原稿は12年1月19日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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