通常国会が24日からスタートしました。毎日、さまざまな会議をはしごしながら、情報収集や政策立案に動き回っています。
 今国会ではまず2011年度第4次補正予算案を成立させ、引き続いて12年度の予算案に入ります。文部科学省のスポーツ関連予算は過去最高の237億9300万円。今年度と比較すると約10億円のアップです。昨年度からは1億円のプラスだったことを考えれば、大幅増と言っていいでしょう。
 スポーツ予算が増えた背景には、昨年6月に成立したスポーツ基本法があります。各事業の裏付けとなる基本法ができたことにより、予算を獲得しやすくなりました。政府が各省庁の予算を1割カットする方針を打ち出していたなか、スポーツ分野の増額が認められたのは「スポーツ立国の実現」という意思表示の現れです。この点は大きく評価したいと思います。

 今回のスポーツ予算には新たな事業が含まれています。なかでもエポックメイキングなのは、「障害者等スポーツ活動重点推進プロジェクト」に2億7600万円の予算がついたことです。このコーナーでも何度も取り上げてきたように、従来のスポーツ政策は縦割り行政に悩まれてきました。障害者スポーツに関する事柄は、これまでなら文科省ではなく厚労省の管轄とされていたでしょう。実際、概算要求をした際には文科省の担当者が財務省サイドから、そのような指摘を受けたそうです。

 しかし、スポーツ基本法の基本理念には「スポーツは、障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければならない」と記されています。障害者スポーツも、これまで文科省が担当してきた競技スポーツなどと同じ「スポーツ」の枠であることが明確になったのです。

 今回、計上されたプロフェクトでは障害者のみならず、幼児や高齢者など幅広い人々がスポーツに触れられるよう、環境整備を進めることが盛り込まれています。3億弱のお金ですが、省庁の枠を超えて予算がついた点は、これからのスポーツ庁設立への一里塚になると信じています。実際、スポーツ庁の在り方に関する調査も来年度からスタートし、各国のスポーツ行政組織の情報分析のため、1000万円が割り振られました。

 基本法でも定められたように、老若男女や障害の有無といったことに関係なく、「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利」です。来年度の予算では、加えて女性アスリートに対するサポートの充実、強化も新たな施策として掲げられました。昨年は、なでしこジャパンのW杯制覇に日本中が沸き、女子のスポーツにスポットライトが当たった1年だったといえるでしょう。その一方で、世界一になった代表メンバーでも年俸は決して高くなく、女子のスポーツの厳しさもクローズアップされました。

 女性のスポーツは、その多くが男性の同じ競技と比べるとマイナーなのが現状です。また妊娠、出産という特有の事情もあります。女性がアスリートとして活動を続けるには男性以上に支援が欠かせません。今回の施策では、サポート体制強化の第1段として国立スポーツ科学センターなどの女性スタッフを増やし、医科学などの各分野でよりきめ細かい対応ができる予定です。

 誰もがスポーツを楽しむには指導者や施設面での環境整備が欠かせません。12年度からは新学習指導要領に基づき、中学生の武道・ダンスが必修化されます。ただ、柔道などでは死亡事故が多いなど指導体制の不備が指摘されているのも事実です。今回の予算案では継続して公立中学校に武道場を整備する(45億3400万円)ほか、指導者教育の実施や支援体制の構築に2億5000万円の枠が設けられました。

 さらには地域スポーツを活性化するためのトップスポーツとの「好循環推進プロジェクト」も継続して行います。12年度は今年度より約1000万円増額となり、5億8200万円の予算額となりました。このプロジェクトでは各地の総合型地域スポーツクラブでトップアスリートが指導できる体制を整え、スポーツの拠点を中央集権から地方分権化することを目指しています。これにより、トップスポーツと地域スポーツの連携はもちろん、元アスリートが地元に戻ってジュニアを育成するという循環も生まれてきます。

 これまで日本の地域スポーツは学校と地区ごとのスポーツ少年団が中心を担ってきました。日本における総合型地域スポーツクラブは、学校の部活動やスポーツ少年団の活動と対立するものではなく、連携し、ともに地域を盛り上げるものだと考えています。ですから、この好循環プロジェクトでは小学校に「体育活動コーディネーター」を派遣することも含まれています。昨年は震災もあり、各地のスポーツ活動にも影響が出るなか、プロジェクトに対して全国のクラブから多くの申請がありました。ここから生まれた好循環が大きな輪となって、日本のスポーツのしくみが変わっていくことを期待しています。

 今年はオリンピックイヤーでもありますが、日本でも数々の国際大会が予定されています。3月31日からは7人制ラグビーの世界大会「HSBCセブンズワールドシリーズ」が東京で開催されます。また8月には女子サッカーのU−20W杯が日本で実施される方向です。正式決定すればFIFA主催の女子の大会を日本が行うのは初めて。これは、近い将来に日本で女子W杯を開くための布石になります。

 予算案では19年のラグビーW杯日本開催、20年の東京五輪招致に向けた国立競技場改築への調査が盛り込まれました。どのくらいの規模で改築するかは、今後の議論になりますが、個人的には単に新しいハコモノを建設するのではなく、「スポーツ立国」にふさわしいスポーツパークとして国立競技場を位置付けられればと考えています。

 過去最大規模のスポーツ予算が追い風となり、ロンドン五輪はもちろん、各世界大会で日本勢の快進撃が見られるとうれしいです。そして、ひとりでも多くの方が「スポーツを通じて幸福で豊かな生活」を営めるよう、政策実現に向けてドリブル突破していきたいと考えています。2012年はスポーツイヤー。振り返ってそんな1年になるよう、引き続き頑張ります。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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