21日、いよいよ前節が開幕しました。石川ミリオンスターズは、ビジターで新潟アルビレックスBCと対戦し、7−2で快勝。翌日も新潟に9−3で連勝し、幸先よいスタートを切ることができました。投打ともに、各選手が自分たちの力を発揮した結果ではないかと思います。
 新潟との開幕2連戦を連勝できた要因は、やはり打線でしょう。調子のいいバッターが何人かいたことで、2試合ともに2ケタ安打をマークし、効率よく得点を重ねることができました。しかし、まだ調子が上がってきていない選手もいます。2試合で無安打の4番・敬洋(九産大九州高−日本ウェルネススポーツ専門学校−TDK千曲川)、そしてヒット1本ずつに終わったマデラと新人の富永裕也(星稜高−大阪体育大)です。特に俊足の富永が人工芝でヒット1本に終わったというのはさみしいですね。人工芝は打球の球足が速く、バウンドが高い。ですから富永の足なら叩きつければ、内野安打になる可能性が高いのですが、フライを上げてしまう場面も少なくありませんでした。俊足の彼が出塁数を増やすことができていれば、打線はさらに活気づいたことでしょう。

 また、結果は出ているものの、内容としてはまだまだの選手もいます。今シーズン、2番に起用している謝敷正吾(大阪桐蔭高−明治大)です。オープン戦からヒットは出ているものの、納得のいくヒットの数は多くはありません。例えば、新潟との開幕2連戦では9打数4安打という成績を残しました。しかし4安打のうち、しっかりと打てたのは2試合目、8回表に先頭打者として放った二塁打のみ。この1本は自分の間合いで、きちんと下半身を含めた体全体でスイングしてボールをとらえていました。結果的には三塁を狙ってタッチアウトとなり、記録は二塁打となったわけですが、逆風にもかかわらず右中間を軽々と破るいい当たりでした。その他の3本はたまたまヒットとなったようなラッキーなもの。もう少し下半身の粘りが出てくれば、もっと鋭い打球が多く出てくると思います。

 整いつつある先発投手

 一方、投手陣ですが、2試合目には新外国人左腕のハモンドが7回を4安打1失点と好投しました。米マイナーリーグ3Aで投げた経験もあるハモンドはスピードもあり、変化球は特にスライダーのキレがいいですね。普通に投げてくれれば、十分に勝ち星を計算できるピッチャーです。ただ、23日に投げたHARD OFF ECOスタジアムのように硬めのマウンドであればいいのですが、米国のマウンドとは異なり、軟らかい日本のマウンドには少々、苦戦している様子。今後はマウンドへの対応が必要になってくるかもしれません。

 即戦力として期待している元NPBの松山傑(横浜商大高−日本ハム−横浜)ですが、トレーニングで筋量が増えたことで、逆に筋肉が硬くなり、それがフォームを小さくし、力だけで投げていました。しかし、ここにきてしっかりと体重移動をして全身を使って投げられるようになってきています。キャンプでは寒さもあって、少し調整が遅れてしまったため、開幕はリリーフで起用しましたが、腕も振れていますので、5月のGW明け頃からは先発でいく方向で考えています。

 そのほか、今後の活躍が楽しみなのは外国人選手でいえば、ハモンド、バスケス、マデラです。彼らはNPBでも十分に活躍できる実力がありますから、シーズン中に声がかかるかもしれないと期待しています。また、日本人選手では昨年と比べて成長が見られるのが謝敷と佐竹由匡(清陵情報高−日本ベースボールセキュリティ専門学校)です。特に佐竹は課題だったバッティングで下半身が使えるようになり、長打力が増しました。これまで2年間で2本だったホームランを、4月8日に行なわれたHBC金沢との練習試合では3本も打ったのです。オフの自主トレでしっかりと下半身を鍛えてきたことが、今、生きているのでしょう。

 さて、開幕2試合で連勝したわけですが、チームとして課題がないわけではありません。最大の課題は守備。開幕戦で失った2点はいずれも守備でのエラー絡みのものでした。打線がいいだけに、守備がよくなれば、「打って守れる」チームとなり、安定した戦いをすることができます。チームの課題として今後、取り組んでいきたいと思います。

森慎二(もり・しんじ)プロフィール>:石川ミリオンスターズ監督
1974年9月12日、山口県出身、岩国工高卒業後、新日鉄光、新日鉄君津を経て、1997年にドラフト2位で西武に入団。途中、先発からリリーバーに転向し、2000年にはクローザーとして23セーブを挙げる。貴重なセットアッパーとしてチームを支えた02、03年には最優秀中継ぎ投手に輝いた。05年オフ、ポスティングシステムによりタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)に移籍。2年間のメジャー契約を結ぶも、オープン戦初登板で右肩を脱臼。07年、球団から契約を解除されたものの、復帰を目指してリハビリを続けてきた。09年より石川ミリオンスターズのプレーイングコーチに就任。10年からは金森栄治前監督の後を引き継ぎ、2代目監督としてチームの指揮を執っている。
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