4月21日に開幕して、ちょうど1カ月が経ちました。群馬ダイヤモンドペガサスは22日現在、14試合を終えて7勝7敗で首位・新潟アルビレックスBCとは1.5ゲーム差の上信越地区2位です。5月11日からは5連敗を喫していますが、チームに開幕時との変化はなく、特別に何かが悪いというわけではないのですが、少しずつ歯車がかみ合わなくなってきているのでしょう。しかし、チームの雰囲気は決して悪くありませんので、悲観的にはとらえていません。
 現在、投手陣は既存の堤雅貴(高崎商業高)と栗山賢(日本文理高−鷺宮製作所)が2勝ずつ(22日現在)と、先発の柱として頑張ってくれています。抑えに抜擢したのは独立リーグ経験者の清水信寿(豊田西高−中京大−エイデン愛工大BLITZ−三重スリーアローズ)です。清水は球に力があり、それを短いイニングで最大限に発揮してもらいたいと思ったからです。もともと抑え経験があり、自らも抑えのポジションを望んでいた清水ですから、気持ちの強いピッチャーです。現在はリーグトップの4セーブを挙げています。

 そして、今後に期待したいのが北井頌太(樹徳高−日本ウェルネススポーツ専門学校)です。まだ、勝ちゲームには投げていないのですが、今月初めにフォームを変えてから少しずつ調子を上げてきています。北井はこれまでコントロールに難があり、私が見たところ、腕の振りがスムーズでないような気がしていたのです。そこで「サイド気味の方が合っているんじゃないか?」と、少し腕の振りを下げて投げさせてみたところ、本人もしっくりきたようで、コントロールもよくなり始めました。「下げた」とはいえ、見た目からはほとんどわからないほどの差です。しかし、本人にとってはそのちょっとした差が、とても大きな変化なのです。徐々に自分のフォームにしていっているようですので、今後の活躍が楽しみです。

 一方、打線の方はというと、正直言って、いまひとつと言ったところです。一番の問題点はチャンスの時のバッティングです。それまで積極的だったバッティングが、チャンスになると消極的になってしまうことが少なくありません。もっと結果を恐れずに、どんどん振っていってほしいと思います。

 また、走塁に関しても同じことが言えます。チームの盗塁数はリーグトップの20個。その4分の3を新井伸太郎(日本航空高−創造学園大)、小林恭兵(会津工業高−会津ベースボールクラブ)、高津啓輔(佼成学園高−東京農業大)の3人が稼いでくれています。3人ともにしっかりと自分たちの役割を果たしてくれているとは思いますが、今後重要になってくるのは、プレッシャーのかかる場面でいかにいいスタートを切ることができるか、トライする勇気を持てるのか、ということになります。その点に関しては少し物足りなさを感じているのが現状です。

 今、最も調子がいいのが4番の大松陽平(日南学園高−横浜商科大−香川オリーブガイナーズ−三重スリーアローズ)です。チームで唯一、3割台の打率を残し、打点もチームトップタイの8点を挙げています。大松は穴の少ないバッターです。広角に打ち分ける技術もありますし、選球眼もいい。チャンスにも強く、チーム一信頼できるバッターですね。

 とはいえ、だからこそ、相手ピッチャーからのマークが厳しくなってきています。そこで重要なのが、彼の後を打つ5番打者です。せっかく大松の前にランナーをためても、容易には打たせてくれません。そこで、大松の後に1本が出るか出ないかが非常に重要になってきています。大松の後にも手ごわいバッターが控えているとなれば、大松で勝負しなければならなくなりますし、ピッチャーにとっては気が休まる暇がなく、プレッシャーがかかってくるからです。そうなれば、自ずとこちらにチャンスが増えてきます。ですから、不動の5番打者の台頭が欲しいところですね。

 前述したようにチームは今、7勝7敗と勝率5割。新人選手が20人という中では、ここまでは十分な成績と言っていいでしょう。正直、順調に勝ち星を積み重ねてきた開幕当初は、出来すぎと言ってもいいと思います。ただ、勝負はやはりそう甘くはありませんね。5連敗を喫し、貯金を使い果たしてしまいました。しかし、だからこそ、私は今からが本当のスタートだと思っています。今後、チームがどう成長していくのか、私自身も楽しみですし、ファンの皆さんにも期待して見ていてほしいと思います。


五十嵐章人(いがらし・あきひと)プロフィール>
1968年4月12日、群馬県生まれ。前橋商業高校では3年夏にエースとして甲子園に出場。日本石油を経て、90年ドラフト3位でロッテに入団した。その後、オリックス、大阪近鉄でプレー。プロ野球史上唯一、全ポジションで出場し、全打順でホームランを放っている。2003年現役引退後は解説者・評論家として活躍した。07年より福岡ソフトバンクで2軍外野守備走塁コーチを務め、11年限りで退団。今季より群馬ダイヤモンドペガサスの監督として指揮を執る。
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