ブリスベーンでの激闘が終わってから数時間後、ドーハではイラクがオマーンと引き分けた。これでB組では、勝ち点7の日本と勝ち点1のヨルダンをのぞくチームが勝ち点2で並んだことになる。日本との勝ち点差は5。得失点差でも大きな開きがある。追う側からすれば、気が遠くなるような差にも感じられるだろう。すでにイラクでは、「もはやグループ1位のチャンスはない」といった声も上がっているようだ。
 それにしても、ブリスベーンでのオーストラリアは強かった。特に前半の彼らは、完全に日本を圧倒していた。日本に対しては手も足も出なかったオマーンと引き分けたのが信じられないほどの強さだった。

 だが、おかげでわかったこともある。
 ホームで戦うオマーンは、ヨルダンは、やはり相当に手ごわいであろうということ。日本の2連勝は、相手が弱かったからではなく、日本が強かったからだということ。ただし、その強さはまだ国外で発揮できるほどではないこと、などである。

 オマーン戦、ヨルダン戦での日本は、相手にほとんど決定機を作らせなかった。それは、中盤でボールを持った相手の選手から、ほぼ完璧に空間と時間を強奪していたからである。オーストラリア戦の後半に見せたサッカーも、まさしく同種のものだった。

 もし、オーストラリアに主導権を握られたのが後半だったとしたら、問題はいささか深刻なものになっていた。だが、現実は逆だった。前半の問題点を試合中にほぼ改善したことで、選手たちはかつてないほど大きな手応えをつかんだことだろう。

 自分たちのサッカーをやれば、つまりコンパクトな状態を維持できれば、オーストラリアが相手であっても圧倒できる――。

 ブリスベーンでの日本が自分たちのサッカーをやったのは、試合の半分に満たない時間だった。審判の不可解なジャッジにも泣かされた。負けていても少しも不思議ではなかった状況で踏みとどまり、勝ち点1を持ち帰ったことは大いに評価したい。

 9月のイラク戦に関しては、油断が禁物なのはもちろんとしても、個人的にはあまり心配していない。美しく整備されたピッチは、日本の良さを存分に引き出してくれることだろう。わたしが注目したいのは、11月14日に予定されているアウェーでのオマーン戦。ここでどんな戦いを見せるかによって、ブリスベーンで得た教訓、自信が本物だったかが見えてくる。W杯にまで持っていける教訓、自信だったかどうか、も。

<この原稿は12年6月14日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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