“本場”に近づきつつある日本下部リーグの熱狂

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 今年のJリーグも、残すところ昇降格を決める試合のみとなった。J1は鹿島が久しぶりの頂点に立ち、J2では水戸が、J3では栃木Cがクラブ史上初となるカテゴリーへの昇格を決めた。それぞれのリーグを制したチームにはもちろん、素晴らしい新スタジアムを力に変えたJ2長崎、青森県から初のJ2クラブとなる八戸に、改めて祝福の拍手を送りたい。

 

 それにしても、J1昇格を争うプレーオフの準決勝は、どちらも壮絶だった。特に千葉、大宮のサポーターにとっては生涯忘れ得ぬ試合になっただろうが、個人的には、試合内容に負けないぐらい、スタジアムの雰囲気に胸を打たれた。

 

 千葉を含めた10チームでJリーグが始まった93年当時、日本で11番目、12番目のチームはかつての日本サッカーリーグ時代同様、閑古鳥の鳴くスタジアムで戦っていた。あの当時の日本にあったのは、サッカー人気ではなく、Jリーグ人気、もしくは日本代表人気でしかなかった。

 

 だが、25年の日本では、この国で23番目、24番目のチームが戦う試合に、5ケタの観衆が詰めかけるようになった。戦ったとしても昇格が決まるわけではない準決勝に、多くの人々が熱狂するようになった。

 

 これって相当にとんでもないことではないか、と個人的には思う。

 

 存在意義も、レギュレーションもまったく違うことを考えると、一概に比較できないのは言うまでもない。それでも、プロ野球における下部リーグにあたるイースタン、ウエスタン・リーグの観客数は、トップリーグのそれには遠く及ばない。バスケにしてもラグビーにしても、1部と2部の集客力は歴然としている。現時点において、J2は日本一の集客力を持つ下部リーグと言っていい。

 

 初めてイングランドで昇格プレーオフを観戦したのは、ロンドン五輪の前取材だった。見たことのないユニホームを着たファンがピカデリー・サーカスに溢れており、聞けばウェスト・ヨークシャーからチャンピオンシップ(2部)昇格をかけたプレーオフのために乗り込んできたハダースフィールドのファンだという。慌ててチケットを購入し、かけつけたウェンブリーはほぼ満員だった。

 

 チャンピオンシップへの昇格を狙うということは、つまりは3部リーグのチーム。それでも、ロンドンの景色を変えるほどのファンが動き、スタジアムが埋まる。改めて、イングランドにおけるサッカー熱の奥深さを思い知らされた気がしたものだった。

 

 ちなみに、今年のJ3からの昇格プレーオフが集めた観客数はといえば、4389人と2127人。まだまだイングランドには及ばないのは言うまでもないが、それでも、2番目のカテゴリーまでであれば、比較の対象となるレベルにまで上がってきた。

 

 地元の娯楽が高じてプロに転じていった欧州と違い、Jリーグは代表強化を大きな目標の一つに据えて発足した。日本代表がW杯出場を逃そうものなら、サッカー界全体がダメージを被ってしまう危険性があった。そこが、イタリアやイングランドとの大きな違いだった。

 

 いまでもその危険性が消えたわけではない。ただ、フクアリ、ポカスタの熱狂は、日本のサッカーが以前ほど代表チームにおんぶに抱っこではなくなりつつあることを実感させてくれた。さて、今週末はどんなドラマが待っているのだろう。

 

<この原稿は25年12月11日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>

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