第283回「ホノルルマラソンマジック!?」

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 冷たい風が吹き始めるとマラソンのシーズン。

 現在、日本国内では年間100大会前後が開催されていると言われており、シーズンが始まると毎週末どこかで大会が開催されている。なかでも、数値的にもっとも人気があるのは東京マラソンで、3万5千人の定員に約10倍の応募がある。

 そんなマラソン好きの日本人が、もっとも行ってみたい大会として必ず挙がるのはホノルルマラソン。今年で53回を迎えたが、いまだにその人気は他の追随を許さない。

 

 私も10年ほど前までは仕事で携わっており、その魅力には触れていたのだが、今年は久しぶりに走らせていただいた。

 そこで見たのは、参加者の強い想いと、地元との深い関係だ。

 

 1973年、12月に心臓病のリハビリ、予防のためにつくられた大会で、90年代には3万人の参加者のうち日本人は2万人という驚くような人気を誇った。その後、コロナ禍を経てインフレ、円安などの問題で日本人にはハードルが高くなっている。ピーク時からは下がっているものの、今年の日本人参加者数は1万人を超え順調に回復。メインランドからの参加者も増えているので、同日に行われる10kmのカテゴリーを含めると、合計4万人を超えた。

 

 90年代は飛行機代、宿泊費を含めても10万円程度で行けたのに、今では約40万円もかかってしまうという厳しい中で、根強い人気を誇る秘密はなんなのか。ロケーションは当然だが、「ホノルルマラソンマジック」と言われるほど中毒性のある魅力を、現地にて多くの方に聞いてみた。

 

 とにかく頻繁に出てきたキーワードは「温かいマラソン、やさしいマラソン」。

それはもちろん気候的なこともあるのだが、ハワイの人々から感じるものが大きいよう。正直、ボランティアなどに出される指示は、かなりいい加減だったりするが、それでも何となくいい感じに回るのは、“好い加減”なのだろう。ボランティアで参加した日本人の方も、そのギャップに驚かれていた。主催者として理想の形に近づけたいという気持ちは分かるが、指示が細かいとそれはもう仕事。するとボランティアの動きや表情にもそれが出てしまう。ボランティアはあくまでも自主的な奉仕に過ぎない。近年は、その点をかなり指摘されるようなってきたが、まだまだ日本では運営スタッフになってしまうのだろう。

 

 東京マラソン、東京オリンピック・パラリンピックを通して、確実に育ってきているボランティアマインドだが、まだまだ大会側のマインドが変わっていかなければならないのだろう。

 

4万人分の想い

 

 そしてなにより、この大会に強い想いを持っている方が多かった。まあ時間もお金もかかる大会に行くのだから、当たり前と言えばそれまでだが、予想以上だった。一緒に参加していた母親が亡くなったので、その想いを紡ぐために走る方。脳卒中からのリハビリの目標として大会に申し込んだ方。子ども時代に祖父や父母と走ったので、今度は自身の子どもと父親を連れて走る親子3代チーム。自分が生きている証として出場を続ける85歳。結婚25周年の記念として思い出の大会に子ども4人と走る夫婦。などなど一つ一つが記事になるような素敵なエピソードがもりだくさんだ。

 

 ということは、今年は4万のエピソードがあるわけで、それで大会が濃くなるわけだ。大会に制限時間がないからこそこうしたチャレンジも出来るので、日本では困難だがそれだけが理由でもない。こうした複合的な魅力こそが人を惹きつけるのだろう。

 

 また、今年は若い参加者の姿も目立った。

 90年代、安くホノルル行けた時代は、「卒業旅行で来ました!」的な若者が少なくなかったが、近年の費用高騰により、どんどん中高年の割合が高まっていた。その様子が少々変化してきたようである。彼らに聞いてみると、前段の理由は様々あれど「一度はホノルルマラソンを走りたかった」というのだ。近年、北米では若年層のランニングブームが起きており、10kmやハーフマラソンなどのエントリーが伸びているという。そんな流れが日本にも少しずつ来ているのかもしれない。いずれにしても高齢化していた大会としては明るいニュースだ。

 

 もちろんホノルルマラソンだけがマラソンではない。

 しかし、その魅力を失わず、歴史を重ねているマラソンに、日本の大会はまだまだ学ぶところがあるようだ。

 スポーツとは人を幸せにするものである。

 そんな原点を今年も見せてくれたホノルルマラソン。

 なんだか、来年も走るつもりになっているのは、完全にマジックにかかっている証拠か!?

 

 

白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール>

 スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための会社「株式会社アスロニア」を設立、代表取締役を務める。17~25年まで東京都議会議員を務めた。著書に『仕事ができる人はなぜトライアスロンに挑むのか!?』(マガジンハウス)、石田淳氏との共著『挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術』(清流出版)。最新刊は『大切なのは「動く勇気」 トライアスロンから学ぶ快適人生術』 (TWJ books)

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