ロンドンオリンピック開幕まで、残り3週間を切った。現在、英国では世界各国から選ばれたランナーたちによって、聖火リレーが行なわれている。日本でもオリンピックに関連するニュースが増えてきており、世界中でオリンピックムードが色濃くなってきている。そのオリンピックの閉幕後、8月29日にはパラリンピックが開幕する。3日には、日本パラリンピック委員会(JPC)から正式に全競技の代表選手が発表された。そこで今回は、パラリンピックにおける注目競技・選手を紹介したい。
 日本が出場する16競技の中でも、最多人数を誇るのが陸上競技だ。主にトラックとフィールドに分かれ、それぞれ障害の度合いによってわけられたクラスごとに、各競技でメダルが争われる。なかでもメダルラッシュが期待されているのが、最終日に行なわれる男子の車いすマラソンだ。昨年10月に行なわれた大分国際車いすマラソンで国内トップ3に入った樋口政幸、洞ノ上(ほきのうえ)浩太、副島正純の3名に加え、花岡伸和、安岡チョーク、山本浩之と実力者がズラリと顔を揃えた。また、ただ一人女子でマラソンに出場する土田和歌子にもメダルが期待されており、オリンピック同様、パラリンピックも最終日まで楽しめそうだ。そのほか、同じ車いすでは北京で400メートル、800メートルで2冠を達成した伊藤智也、日本における義足アスリートの代表的存在である、走り幅跳び北京銀メダリストの山本篤など、世界のトップに君臨する選手は少なくない。北京での12個を上回るメダル獲得に期待が寄せられている。

 4年前、銀メダル一つに終わった視覚障害者柔道だが、ロンドンでは複数のメダル獲得が目標だ。男子では66キロ級代表の廣瀬誠に注目したい。60キロ級代表で出場したアテネでは銀メダル、北京では7位入賞を果たしてきた廣瀬だが、今回は階級を一つ上げての出場となる。66キロ級には、シドニー、アテネで2連覇し、北京では惜しくも銀メダルながら3大会連続でメダルを獲得している藤本聰がこれまで絶対的エースとして君臨してきた。しかし、5月に行なわれた予選会でその藤本に一本勝ちを収め、見事3大会連続出場を決めた。それだけに金メダル候補として世界から注目されていることは間違いない。また、女子では初出場ながらバルセロナオリンピック95キロ超級銀メダリスト小川直也の「小川道場」で力をつけてきた52キロ級の半谷静香にも注目したい。国内ではほぼ敵なしの半谷。得意の一本背負い以外の技も習得しており、世界の舞台でどんな柔道を見せてくれるのか楽しみだ。

 多くのメダリスト輩出してきた競泳は、今大会も注目選手がズラリと並んでいる。視覚障害クラスではバルセロナ以来、5大会連続で出場し、これまで21個ものメダル(金5個、銀9個、銅7個)を獲得しているベテラン河合純一をはじめ、その河合の後を追うように台頭してきた秋山里奈や木村敬一といった若手にも複数のメダルが期待されている。また、そのほかのクラスにおいても北京では50メートル平泳ぎの予選で世界新記録を樹立し、決勝でもトップでゴールし金メダルに輝いた鈴木孝幸(多肢欠損)や、昨年のパンパシフィックで100メートル平泳ぎで銀メダルに輝き、現在世界ランキングでも2位の中村智太郎(先天性両上肢欠損)などの泳ぎにも注目したい。

 車いすテニスでは、北京で悲願のシングルス優勝を果たした国枝慎吾が、連覇に挑む。しかし、前年にグランドスラムを達成し、世界王者として臨んだ北京とは違い、国枝は現在、世界ランキング4位。北京以降の4年間は決して順風満帆だったわけではない。2010年11月の世界マスターズで準決勝で敗れ、07年から積み上げてきた連勝記録が107でストップ。翌年1月の全豪オープンでは大会5連覇、同年9月の全米オープン4連覇を達成したものの、それ以降はヒジの故障で11月の世界マスターズと日本マスターズ、そして今年1月の全豪オープンを欠場。そして2月に手術に踏み切り、リハビリ生活を経て、5月のジャパンオープンでようやく実戦復帰したばかりだ。だが、それ以降は脅威の回復力を見せている。復帰戦となったジャパンオープンでベスト4に進出すると、今月1日まで行なわれていたフレンチオープンではついに、昨年9月の全米以来となる優勝を果たした。敗戦による悔しさ、ケガによる苦しさを乗り越えた国枝だからこそ、北京以上の強さを見せてくれるはずだ。

 団体種目で予選を突破したのは、女子シッティングバレーボール、男子車椅子バスケットボール、ウィルチェアラグビー、ゴールボールの4競技だ。いずれもこれまでのパラリンピックではメダルには届いていない。しかし、10年冬のバンクーバーパラリンピックではアイススレッジホッケー日本代表が初めて決勝に進出し、堂々の銀メダルを獲得している。日本の団体種目に与えた影響は決して小さくはなかったはずだ。特に現在、世界ランキング4位のウィルチェアラグビーや、北京で女子をベスト4に導いた岩佐義明ヘッドコーチ率いる車椅子バスケは初のメダル獲得に期待が寄せられている。

(文・写真/斎藤寿子)
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