第1200回 ラグビーW杯再招致へ「総力戦」再現できるか
「4年に1度の世界的祭典であるラグビーW杯は、協会だけの思いで開催できるイベントではない。オールジャパン体制で臨む。最高のW杯を実現したい」(土田雅人日本ラグビー協会会長)。年初、日本協会は国際統括団体のワールドラグビー(WR)に、2035年大会開催地に立候補する意向を伝えた。
14日の会見で、土田会長は「オールジャパン」という言葉に、ひときわ力を込めた。ラグビー協会のみならず、スポーツ界全体、さらには政治、経済、行政が「最高のW杯を実現したい」という思いの下に結束し、それぞれが高いパフォーマンスを発揮しなければ「世界的祭典」を招致するのは容易ではない、という危機感の裏返しのようにも聞こえた。
思えば、アジアで初となる7年前の19年大会は、ある意味IRB(14年11月からWR)との戦いでもあった。放映権に始まり、スポンサー権、ライセンス権、マーチャンダイズ権など、収益に資する権利類のほぼすべてがIRBに握られた。組織委員会が手にできたのは、唯一チケット販売権だけ。大会招致に尽力した森喜朗氏は、苦虫を噛み潰すように語ったものだ。「両手両足を縛られて、どうやってトライをとれというのかね」
IRBが吹っかけてきた無理難題は、それだけではなかった。「大会保証料」という名目の財政保証も求めてきた。組織委も多少のギャランティ(保証)は覚悟していたが、額面を見て驚いた。9600万ポンド(約130億円)。とても組織委が用意できる金額ではない。
苦肉の策としてひねり出したのが、スポーツ振興くじ(toto)の活用である。だが、IRBは「クジの金は国の金ではない」と言って首をタテに振らない。「いやクジが法律でできている以上、国の金と同じだ」。最後は組織委が押し切った。totoを主管する日本スポーツ振興センターからは59億円の助成を得た。
totoが苦肉の策なら、こちらは秘策である。収益金の一部を大会費用にあてる「ラグビーW杯2019協賛くじ」が16年4月に発売され、これにより新たに100億円が財源に加わった。このスキームの考案者は組織委事務総長で元総務省事務次官の嶋津昭氏。19年大会は全国12の自治体で開催され、キャンプ地として61の自治体が参加した。舵取り役は、地方に顔がきく自治省出身の嶋津氏を措いて他にはなかった。
経済界からは御手洗冨士夫氏(キヤノン会長)が組織委会長としてリーダーシップを発揮し、大手企業を中心に30億円超の寄付金を集めた。日本代表のベスト8進出も追い風となり、組織委は68億円の黒字を計上した。チケットの完売率は実に99.3%。これが収益を押し上げた。
再招致に向け、この国は再び「オールジャパン体制」を組めるのか。大立物がスポーツの第一線から退いた今、文字通りの総力戦となる。
<この原稿は26年1月21日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>
