「演技が終わった後に次がある」羽生結弦が観る者に託したHappy End ~notte stellata 2026~

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 アイスショー「東和薬品 presents 羽生結弦 notte stellata 2026」の初日公演(観客:6500人)が7日、宮城県内のセキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)で行なわれた。このアイスショーはインターミッションを挟んだ前半と後半の2部構成だ。座長を務めるプロフィギュアスケーター・羽生結弦は、スペシャルゲストの東北ユースオーケストラと1部の最後、2部終盤と2度コラボレーション。スケートとオーケストラが組み合わさった壮大なパフォーマンスを、観客やライブビューイング視聴者、配信視聴者に披露した。notte stellata 2026は8日、9日と同アリーナで行なわれる。

 

ⓒnottestellata2026

 

 2023年に始まり、今回で4回目となるnotte stellata。2011年3月11日に発生した東日本大震災の被災地である宮城県から希望を発信することがコンセプトだ。このアイスショーでは毎年、スペシャルゲストとスケーターのコラボレーションが披露される。

 

 今年のスペシャルゲストは東北ユースオーケストラだ。このオーケストラは、世界的音楽家・坂本龍一の呼びかけにより、東日本大震災で被災した学校の楽器の点検や修理をするプロジェクト「こどもの音楽再生募金」から派生し、2014年に誕生した。今年度で11期を迎え、小学生から大学生までの約90名が所属する混成オーケストラである。彼らは「音楽は、生きようとする力を引き出すことができる」「支えられるから、支えるへ」などをミッションステートメントとして掲げ、活動している。今回のアイスショーには、50名が参加している。

 

 羽生は2025年8月から「メンテナンス期間」と称し、パフォーマンス向上に時間を費やした。約半年ぶりの“公での氷上復帰”となった。

 

 1部の最後に、羽生と東北ユースオーケストラの最初のコラボレーションが設けられていた。楽曲は、坂本が作曲した「Happy End」。この楽曲は主旋律を木管楽器、弦楽器、ピアノ、金管楽器へと受け継いでいくのが特徴だ。

 

 「Happy End」は、羽生が自ら振り付けをした。リンク中央に仰向け大の字になったところから演技はスタート。東北ユースオーケストラの演奏が始まると、羽生は起き上がろうにも苦しそうに起き上がれない様子を表現した。曲中、暗い穴から地上に出たい、と思わせるように空中へと手を掲げた。

 

 切迫感、焦燥感さえ覚える東北ユースオーケストラの奏でる旋律とともに、羽生は氷上でのたうち回り、苦しみを表現し続けた。演奏がプツりと終わると、もがきにもがいた羽生は氷の上に体を伏せて演技を終えた。まるで、観る者に想像の余地を残すように。

 

 生演奏とコンテンポラリーダンスに近い羽生の演技に、観客は圧倒された。いつもなら、全員がスタンディングオベーションのところを、圧巻のパフォーマンスに立ち上がることさえ忘れている観客もいたほどだ。

 

 初日公演終了後、羽生はHappy Endというプログラムでは「めっちゃ苦しい感じ」を表現しかったと語り、続けた。

 

「今回は、自分自身の体がむしばまれていったり、とか。もちろん、坂本龍一さんの曲なので、この曲を書いた当初、ずっと病にむしばまれていた頃だったとお聞きしています。被災地、宮城県、仙台もそうですけど、間違いなくちょっとずつ復興はしているけど、傷あとは残っている。僕自身、アイスリンク仙台で滑るときに、残っている壁の傷であったりとか、補修されているけれど見える傷、みたいなものを少しずつ感じながら。それにまたむしばまれながら自分は苦しんでいるけれども、最終的にはその傷も全部自分なんだ、と受け入れる。“演技が終わった後に次があるよ”と思えるようなプログラムにはしたつもりです」

 

 羽生と東北ユースオーケストラはハッピーな結末ではなく、ハッピーエンドに至る生々しい過程を披露してくれたのだ。ハッピーエンドとは、現状、苦しんでいる者が望むのかもしれない。他力ではなく、歯を食いしばるように苦しみを受け入れつつ自らの手で掴み取るもの、もしくは創り出すものなのかもしれない。

 

「演技が終わったあとに次があるよ」――。羽生と東北ユースオーケストラは、物語の結末を観る者に託してくれたのだ。

 

(文/大木雄貴、写真提供/nottestellata広報事務局)

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