武智成翔(狭山セコムラガッツ/愛媛県松山市出身)第1回「ボーデン・バレット級!?」
ラグビーリーグワン・ディビジョン3の狭山セコムラガッツで存在感を放っている若手スクラムハーフ(SH)がいる。全国大学ラグビー選手権13度の優勝を誇る強豪・帝京大学出身、22歳の武智成翔(たけち・あきと)だ。今季、アーリーエントリーながら既に5試合に出場し、1トライを記録(5月2日時点)している。
「リーグワンでプレーすることを目標にしてきていたので、試合に出られたことがうれしい。大学ではプレッシャーを感じながら、プレーしていましたが、今は楽しくラグビーができています」と本人。ラガッツにはSHを本職とする選手が武智を含め6人もいるが、「みんな先輩ですが、負けたくない。練習でしっかりアピールしていきたいです」と意気込みを示した。
SHはフォワード(FW)とバックス(BK)とのリンクマンで、チームの攻撃リズムを司るポジションだ。高いパススキルと、フィットネスが求められる。自身の武器は「一番はフィットネス。誰よりも走ることにこだわっています。加えてディフェンスも得意」。身長163cmと小柄だが、上半身は厚みがあり、簡単には当たり負けしない。
ヘッドコーチ(HC)やチームメイトからの信頼は厚い。
「サイズはないけどタフ。スピードがあるし、スキルもある。帝京大学という高いレベルでプレーしているから判断が速い」(スコット・ピアスHC)
「武智はオールマイティー。ハーフとしてのスキルが全部高いと思います。キックはピカイチで上手いです」(SH高橋香成)
「テンポのいいハーフなので、チームに対し、いい影響を与えてくれる。パスのスキルがズバ抜けています。ハーフの中でもすごく基礎的なパス、ボックスキックのレベルが高いと思います」(SO忽那鐘太)
「ものすごい選手がいるぞ!」
武智の採用に関わったリクルートメント・マネージャー兼アドバイザーの山賀敦之は、帝京大OBである。山賀の耳に、武智の名前が入ったのは、彼が大学3年生の冬から大学4年の春だった。
「帝京の首脳陣は先輩や後輩です。そこから“ものすごい選手がいるぞ!”と情報をいただいた。当時はまだ公式戦に出ていない時期だった。なぜなら彼の1学年上にはリーグワンのディビジョン1の強豪クラブに入ったSHが2人いましたから。帝京のスタッフからは“一生懸命やる子だ”と聞いていました。実際、私が見に行った時も、ひたすら居残り練習をしていた。大学で会う時はいつも練習している。グラウンドで自主練しているか、ジムでウエイトを鍛えているか。特にブロンコテストの数値は、私が知っているナンバーワンです。4年春のベストスコアが4分10秒台。そんな選手、どこの大学にもいなかったし、今のウチ(ラガッツ)にもいない」
ブロンコテストとは、20m、40m、60m走を繰り返し、計1200mのタイムを測るフィットネステストだ。オールブラックス(ニュージーランド代表)の通算キャップ数100を超え、2016年から2年連続で世界最優秀選手賞に輝いたボーデン・バレットの自己ベストが4分12秒。武智は“ボーデン・バレット級”の持久力の持ち主だということだ。
実は武智、大学在学中にリーグワンのあるチームへの入団の話がまとまらず、「ラグビーを辞めようとも考えた」という。本人によれば、そこで手を差し伸べてくれたのがラガッツだった。だが山賀の見立ては異なる。
「チームにSHが足りないというわけではなく、彼のモノが良かったからアタックしたんです」
ラガッツの日本人選手は社員契約だ。武智がセコムの入社試験を受け、内定が決まってからも山賀は彼をマークし続けた。
「帝京のスタメンだとディビジョン1からも狙われる。彼をよそに取られないように“ストーカー”のようについていきました。夏の菅平合宿では、帝京大学の試合や練習に向かえば、彼の傍に付き、周りに私の存在をアピールしました。帝京大学内でも私のことは“彼のストーカー”と呼ばれていましたから」
愛媛県松山市生まれの武智が楕円球に触れたのは、小学4年時からのタグラグビーからで、本格的に始めたのは中学に進学してからだ。実は長距離走に自信があった中学進学時は陸上部に入る予定だった……。
(第2回につづく)
<武智成翔(たけち・あきと)プロフィール>
2003年10月26日、愛媛県松山市出身。小学4年時からタグラグビーに触れ、6年時には全国大会にも出場した。中学でラグビー部に入り、本格的に競技生活をスター。高校は新田高校に進学し、2年時には主将として全国高校ラグビー大会(花園)に出場した。22年、帝京大学に進学。4年時にレギュラーの座を掴み、全国大学選手権ベスト4に貢献した。今年2月からアーリーエントリーで狭山セコムラガッツに加わり、第8節のヤクルトレビンズ戸田戦でデビュー。第13節の中国電力レッドグリオンズ戦で初トライを記録した。身長163cm、体重70kg。
(文/杉浦泰介、写真/狭山セコムラガッツ提供)
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