2012年シーズンは、石川ミリオンスターズにとって不甲斐ない結果となりました。前期こそ地区優勝を果たしたものの、後期は球団創設以来初の最下位。プレーオフでは福井ミラクルエレファンツに0勝2敗1分で敗れ、3年連続のリーグチャンピオン、そして2年連続での独立リーグ日本一の道が断たれました。来シーズンは今シーズンの反省を踏まえて、チームづくりをしたいと思っています。
 正直なところ、新人選手が多くを占めていた今シーズンは、BCリーグ初となる独立リーグチャンピオンとなった昨シーズンと比べれば、明らかに戦力ダウンは否めませんでした。それを補うだけの練習量をこなすことができず、ミリオンスターズの野球を徹底させることができなかった。これが今シーズン、最大の敗因です。

 ミリオンスターズの野球とは、ピッチャーを中心とした守備で接戦を制するというもの。ところが、リーグワーストとなる92個ものエラーを記録してしまったのです。これは球団創設以来、最多の数字です。これでは、接戦に勝つことなどできません。だからこそ、勝てる試合も落としてしまい、白星を伸ばすことができなかったのです。

「接戦では一つのミスが命取りになる」――プレーオフの福井戦がまさにそうでした。ロースコアの展開になると、福井は得意の足でかきまわす野球でプレッシャーを与えてきました。そのプレッシャーに耐えきれず、石川はミスが増えていったのです。昨シーズンまで自分たちがやってきた野球を逆にやられてしまったことが最大の敗因となってしまいました。

 小倉、謝敷に見られた成長の跡

 そんな中でも成長を見せてくれた選手もいます。チームトップの打率(3割2分)と盗塁(23)をマークした小倉信之(国士舘高−国士舘大−茨城ゴールデンゴールズ−フェデックス)、そしてその小倉に次ぐチーム2位の打率(3割1分3厘)とチームトップの打点(59)をマークした謝敷正吾(大阪桐蔭−明治大)です。

 小倉は入団1年目から試合に出場していましたが、やや自分の理想とするバッティングにこだわりすぎていた感も否めませんでした。そのため、過去2年間は1年目こそ2割6分7厘でしたが、2年目は打率1割8分8厘まで落ち込んでしまいました。そこで、今季は意識を変えたのでしょう。それまでのバッティングとは様変わりしたのです。

 昨季までの小倉は「遠くに飛ばしたい」という打者心理によって、大きい打球を狙おうとポイントを前にして、強振していたのです。確かに練習ではいい打球を飛ばしていましたが、試合となるとそうはいきませんでした。そこで今季はポイントを体に近づけ、引きつけて打つようにしたのです。その結果、ボールを長く見ることができるようになり、引っ張るだけでなく、逆方向にも打つことができるようになりました。それが3割2分という高打率につながったのです。

 一方、謝敷は1年目の昨季はリーグ3位の45打点、同2位タイの11本塁打と好成績を残しました。そのため、今季は厳しくマークされたのです。しかし、その中でもしっかりと打率、打点を残し、勝負強さを見せてくれました。特に進歩したと思えるのは、状況に応じたスイングができていたことです。「ここは大きいのが欲しい」という場面では力強いスイングを、「まずは出塁を」という場面ではコンパクトなスイングで確実性を重視したバッティングをしていたのです。今後は、本人も分かっている苦手なコースのボールが打てるようになれば、来季のNPB入りも期待できると思います。

 そのほか、新人の植総二郎(盛岡大学附属高−金沢学院大)も活躍してくれました。彼は器用さがあり、各ピッチャーに応じたバッティングをすることができるのです。課題は体づくりと守備でしょう。身長179センチと上背があるものの、まだ体の線が細いのです。また、今季は主にファーストを守りましたが、やはりNPBを目指すには二遊間を守れる大型内野手になることが不可欠。来季の成長に期待したいと思います。

山出芳敬(やまで・よしたか)>:石川ミリオンスターズコーチ
1983年4月3日、石川県出身。星陵高校、京都学園大学出身。卒業後は茨城ゴールデンゴールズに所属した。リーグ初年度の2007年、石川に入団。2年間、全試合に出場した。1年目の07年には全72試合に出場し、打率3割1分6厘、打点34、盗塁8(ベスト10)をマーク。チームの優勝に大きく貢献した。08年限りで現役引退し、09年よりコーチに就任した。
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