ダルビッシュ有(レンジャーズ)はWBC不参加を表明する声明文でこう書いた。
<I have decided with my team of advisors that getting ample rest is the most important thing for me right now…>
 いや、何も英語を引用しなくてもいいのだが、ちょっとカッコつけてみました。英語がカッコいいなどという感性は、我ながらどうかと思いますが(笑)。
 要するに周囲の関係者に相談して、今最も大事なのは、休養をとることだと決心した、ということだ。「ample rest」というんですねぇ。英和辞書を調べたら、「ample」は「十分な、豊富な」という意味らしい。おそらくはこの声明文がきっかけとなって、他の日本人メジャーリーガーも、WBCを辞退しやすくなったと思われる。黒田博樹(ヤンキース)も青木宣親(ブルワーズ)も岩隈久志(マリナーズ)も辞退した。最初に明確に声をあげるあたり、さすがダルビッシュだと感心する。

 結果、第3回WBCは、国内の選手だけで編成されることになった。これはこれでいいのではないだろうか。
 個人的な夢を語れば、ダルビッシュにも黒田にも来季は20勝してほしい。この2人なら大いに可能性はある。サイ・ヤング賞も獲ってほしい。そのためには、3月に所属チームを離れて、コンディションをトップにもっていくのは、明らかに無謀だ。1シーズンもつはずがない。国内組の日本代表でWBCを戦い、シーズンに入るとダルビッシュと黒田が最多勝を争う。大いに結構ではないか。

 打線に勢いつける「1番・糸井」

 さてさて、国内選手による候補選手が発表された。では、本大会を勝ち抜くためには、どのようなスタメンがいいだろうか。誰もが考えることでしょうが、以下、私案を。

1<右>糸井嘉男(北海道日本ハム)
2<遊>坂本勇人(巨人)
3<左>長野久義(巨人)
4<捕>阿部慎之助(巨人)
5<三>松田宣浩(福岡ソフトバンク)
6<一>中田翔(日本ハム)
7<中>大島洋平(中日)
8<D>内川聖一(ソフトバンク)
9<二>本多雄一(ソフトバンク)

 どうだ……というほど目新しくはないが、既に候補選手32人は決定しているので、それ以外の名前を出して意表をついても意味がない。そこはご容赦を。ともかく、4番・キャッチャー阿部というのは、山本浩二監督の中では決定事項らしいので、まず、これは固定する。報道によれば、3番・ショート坂本もほぼ確定らしい。確かに坂本はいい打者だが、私ならば、3番には糸井を入れたい。ただ、そうすると、3、4番で左打者が続くことになってしまう。それは避けたい。

 本来は、3番に最強の左打者、4番は右のクラッチヒッターというのが、打線の理想である。ま、日本野球の典型をいえば3番・王貞治、4番・長嶋茂雄という並びです。その意味では、3番・糸井、4番・中田というのがあるべき打順の姿だと思うが、それには、やはり故障明けの中田の状態も気になるし、ここは山本監督の決定事項である4番・阿部を尊重することにする。

 ただし、個人的には今回の日本代表で最も期待する打者は糸井である。3番を避けるとすれば、思い切って1番に置いてはどうだろう。いきなり、パカーンと二塁打で試合が始まるイメージである。とすると、2番は右打者。あえて坂本にしてみた。坂本は目立った活躍もするけれど、意外とあっさり凡退するイメージもある。坂本と長野を比べると、より確実に、コンスタントにヒットが出るとしたら、長野の方ではないだろうか。というわけで、3番・長野。

 投手コーチの手腕に期待のクローザー

 5番は、走者がたまったところで、ガツンとタイムリーを打てそうな松田。失点して気落ちした相手投手の初球を、6番・中田がドカンとホームラン。「くそ、ここで切ってやる」と力んだ相手投手の低めの変化球を、7番・大島がしぶとくヒットして、走る。8番・内川タイムリー。9番・本多、1番・糸井という俊足の左打者にまわる……。とまぁ、そういう意図の打線です(中田のファーストと内川のDHはポジションが逆かもしれないが)。

 セカンドは、鳥谷敬(阪神)をコンバートするというのが有力のようだが、私は本多のスピードに賭けたい。ファーストは稲葉篤紀(日本ハム)というのも、魅力的ではある。中田よりも確実性は高い。意外にホームランも打てる。迷うところではあるのだが、一応、中田のパワーの方を選んでみた。

 投手に関しては、ほぼ常識通りでいいだろう。先発三本柱は、田中将大(東北楽天)、前田健太(広島)、内海哲也(巨人)。球数制限があるので、第2先発、ロングリリーフとして、摂津正(ソフトバンク)。もう1枚、下手投げの妙味を買って、牧田和久(埼玉西武)あたりか。

 問題は、クローザーである。うーん、絶対的なクローザーはいない。藤川球児(阪神からFA)がメジャーに行き、岩瀬仁紀(中日)に陰りが見える以上、これはいたしかたない。前回のWBCで山田久志投手コーチが藤川に見切りをつけ、ダルビッシュを起用して成功したように、実際には、投手コーチの腕の見せ所ということになるだろう。報道されているように、杉内俊哉(巨人)をクローザーに起用するという手もあるのかもしれない。

 とはいえ、せっかくだから、私案をはっきりさせておこう。杉内は、摂津、牧田と並ぶ、第2先発、ロングリリーフとしたい。クローザーにすると、土壇場で外国人選手の長い腕が杉内の変化球に届く、という可能性を排除しきれないので。それより、長いイニングを安定して抑えてもらった方がよい。

 セットアッパー、すなわち8回は、左が山口鉄也(巨人)、右が山井大介(中日)。そして9回、クローザーは、浅尾拓也(中日)。高めのストレートに伸びがあり、フォークが大きく落ちるから。ただし、これにはいい時の状態に戻っているのであれば、という条件がつく。さあ、これで、どうだ!
 あとは、田中や前田が来季、シーズンに入って故障を発生しないことを、切に祈る。

上田哲之(うえだてつゆき)プロフィール
1955年、広島に生まれる。5歳のとき、広島市民球場で見た興津立雄のバッティングフォームに感動して以来の野球ファン。石神井ベースボールクラブ会長兼投手。現在は書籍編集者。
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