アイスランド戦を最後の強化試合にした理由
アメリカ、カナダ、メキシコ3カ国開催のFIFAワールドカップ2026に出場する日本代表は5月31日に東京・国立競技場でアイスランド代表と国際親善試合を行ない、1―0で勝利した。
欧州はシーズンが終わったばかりで、選手たちのコンディション的にはまだまだ。ゲームに目を向ければなかなか突破口を見つけられないもどかしい展開が続きながらも3-4-2-1から超攻撃的な3-1-4-2にして何とか1点をもぎ取り、その後は5-4-1で逃げ切りを図った。三笘薫が抜けた左シャドーに伊東純也、中村敬斗、後藤啓介を起用し、ボランチに瀬古歩夢をテスト。また、キャプテンの遠藤航を3カ月半ぶりに実戦復帰させ、度重なるケガに泣かされてきた冨安健洋も約2年ぶりに日本代表のピッチに立たせている。本大会で採用される主審がカウントを始めて5秒以内に行わなければならないスローイン、ゴールキックや10秒以内の交代時間など時短のルールや3分間の飲水タイム「ハイドレーションブレイク」も経験できた。収穫の多い一戦となったのは言うまでもない。
前回のカタール大会でキャプテンを務めた吉田麻也が1試合限定で呼ばれ、前半14分の途中交代時には両チームが花道をつくって送り出した。「何もワールドカップ前にやらなくても」という声もあるが、吉田が最後にキャプテンマークを遠藤に渡すなどチームの結束をより高める森保一監督の〝演出〟にも思えてくる。アメリカでプレーする吉田の現地情報も、チームにとって有意義だったに違いない。
ただ、グループステージ初戦のオランダ戦から約2週間前となるこのアイスランド戦が本大会前ラストの強化試合になるとは思わなかった。現地、またはその近くで他の代表チームと1、2試合こなしてから初戦に臨むのが一般的。前回のカタール大会でも初戦の6日前にUAEでカナダ代表と戦っている(結果は1―2)。5月15日のメンバー発表時、メディアに配布されたスケジュール表にその予定は入っていなかったものの、後日決まるのだろうと踏んでいたが、そうではなかった。
アイスランド戦後の会見で指揮官は、このように説明している。
「フィジカルコーチともスタッフミーティングで何度もやり取りしたなかで、これまでのコンディションのつくり方、さらにU-19の選手たちとトレーニングをする機会をしっかりつくることができれば、コンディション的に問題ないとの提案を受けました。それがベストの選択ということで決めました」
パートナーを務めるU-19日本代表との試合形式のトレーニングでしっかり準備していければいいという判断。過去を振り返ってみれば、直前のテストマッチをどう使うかが、カギを握ってきた。2006年のドイツ大会ではホスト国のドイツ代表とのマッチメークが組まれ、2-2で引き分けた。しかし結果的にこの試合がピークとなった印象は拭えなかった。逆に4年後の南アフリカ大会では岡田武史監督が「大会前に強いチームと戦いたい」と希望して、イングランド代表、コートジボワール代表との対戦が実現。いずれも敗れたゲームにはなったが、戦術の変更に着手するなど効果的に使って躍進につなげている。
2010年当時は欧州でプレーする選手もそう多くなく、チームとして「対世界」を馴染ませておく狙いもあった。だが今は欧州で世界基準を日常としている選手が多いため、特にその必要もない。コンディション面、戦術面の仕上げという観点から「ベスト」の道を探った結果、大きな決断を下したわけだ。
他の代表チームとのテストマッチになれば、チューンアップとはいえコンディションに影響を及ぼす可能性もある。48チーム制に拡大する今大会は期間も延びて、かつ3位でもグループステージを突破できる可能性がある。ラウンド32以降のノックアウトステージを見据えた長丁場となるだけに、しっかりと自分たちでコンディションをコントロールして本大会に臨みたいとの意志が見えてくる。
その意味でも大会前、最後のテストマッチとなったアイスランド戦は、いろいろとテーマを詰めていた。その一つが、空中戦対策でもあった。森保監督に話を聞いた際、「高さはオランダ、スウェーデンとも共通していてセットプレーのいいシミュレーションにもなる」と語っていた。平均身長で6㎝高い相手に対して、攻守のセットプレーを確認できたことも大きい。
直前のテストマッチを用意しなくても不安はない。
3月のイギリス遠征では堅守のスコットランド代表、優勝候補の一角でもあるイングランド代表ともアウェイで戦った。8大会連続でワールドカップ出場を決めて以降、限りある日程のなかで様々な相手と様々なシチュエーションで戦ってきた。大会前のテストマッチを求めなかったのは、ある程度準備はできたという手応えの裏返しとも言えるのではないだろうか。