今季、チームとして初の実戦となったJR四国との練習試合(1日)は敗れたものの収穫の多いゲームとなりました。この試合、僕は練習生も含めて出場できる選手は全員起用しました。その中で、練習生やこれまで出場機会の少なかった選手がいいアピールをしてくれたのです。
 投手では練習生の沼江亨(小松島高)が4番手で登板して1回を3人で切り抜けました。彼は高卒2年目の右腕です。昨年はまず体をつくるべく、黙々と練習に取り組んでいました。オーバーハンドとスリークォーターの中間の位置から勢いあるボールを投げ込みます。

 彼のストレートは独特で、ジャイロボールに近い回転をします。これはひとつの武器になるでしょう。コントロールは課題ですが、ストライク先行のピッチングができれば、選手登録の可能性も十分出てきます。

 野手でも2年目の酒井亮が二塁打を放ち、結果を残しました。昨季の彼は同じサードの松嶋亮太の控えに回ったこともあり、わずか30試合の出場。ただ、バッティングには非凡なものがあります。守備と走塁はまだまだですが、最初の試合で自らの長所をアピールし、今後が楽しみになってきました。練習を1日も休まずにやるような選手ですから、伸びしろも期待できるでしょう。まずはチーム内で松嶋を脅かすレベルに達してほしいものです。

 この試合、僕は1番・吉村旬平、2番・東弘明、3番・神谷厚毅と機動力の使える選手を上位に並べました。現役時代、ピッチャーの立場で一番イヤだったのは足を使って攻められること。その経験を踏まえ、昨季も盗塁やエンドランなどをうまく絡めようとしましたが、なかなか1、2番が機能しない現実がありました。吉村、東とも昨季は満足な結果が残せず、今季は目の色が変わっています。この2人が打線を引っ張ってくれれば、他球団に負けない攻撃ができるでしょう。

 投手陣では入野貴大が愛媛から移籍し、リリーフの軸ができました。彼はボールのキレだけみれば、このリーグでもトップクラスの右腕です。大きな故障もなく、毎日でも投げられるスタミナも持ち合わせています。NPBのスカウトからも注目されながら、最後のハードルを越えられないのはなぜか。それはやはり、ひとつひとつのボールの精度の問題だと感じています。

 入野は決して豪速球で勝負するタイプではないだけに、コントロールは上のレベルで活躍するための生命線です。しかし、愛媛時代は相手ベンチから見ていてもボールとストライクがはっきりしているのが残念でした。この徳島では制球力を磨いてもらい、ドラフト指名を勝ち取れるようサポートしていきたいと考えています。

 現状、先発は岩根成海山口直紘の2枠はほぼ確定で、残り1枠をカープアカデミーから派遣される外国人や、他の投手で争うかたちになります。先発がゲームをつくり、足でかき回して奪った得点を、継投で守り切る。そんな戦い方ができるのが一番の理想です。

 今季から長内孝コーチ、森山一人コーチ、根鈴雄次アシスタントコーチの3人体制で野手は指導してもらっていますから、僕も昨季よりもピッチャーを見る時間を長くとれるようになりました。これからのオープン戦で投手の役割分担を決めながら、いい状態で開幕を迎えたいものです。

 もちろん、他球団も新戦力を加えてレベルアップしているでしょうから、こちらの思い通りには簡単にはいかないでしょう。しかし、ここまでの選手たちの動きを見ていると、どのチームにも負けない手ごたえを感じています。

 V奪還と、一昨年届かなかった独立リーグ日本一、そしてNPB選手の輩出――これらの目標をしっかり達成して、独立リーグから野球を盛り上げたいものです。開幕は4月6日。昨季のチャンピオンである香川をホーム(JAバンク徳島スタジアム)に迎えます。ぜひ、たくさんの皆さんで選手を後押ししていただけるとうれしいです。よろしくお願いします。


島田直也(しまだ・なおや)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1970年3月17日、千葉県出身。常総学院時代には甲子園に春夏連続出場を果たし、夏は準優勝に輝いた。1988年、ドラフト外で日本ハムに入団。92年に大洋に移籍し、プロ初勝利を挙げる。94年には50試合に登板してチーム最多の9勝をあげると、翌年には初の2ケタ勝利をマーク。97年には最優秀中継ぎ投手を受賞し、98年は横浜の38年ぶりの日本一に貢献した。01年にはヤクルトに移籍し、2度目の日本一を経験。03年に近鉄に移籍し、その年限りで現役を引退した。日本ハムの打撃投手を経て、07年よりBCリーグ・信濃の投手コーチに。11年から徳島の投手コーチを経て、12年より監督に就任。
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