新監督と新入団選手を迎え、新たなチームとして今季の活動をスタートさせた愛媛FC。そして、ゴール裏スタンドの改修(拡大)工事が完了し、新たなスタジアムへと生まれ変わろうとしているホームのニンジニアスタジアム。実は私たちサポーターも、いろいろな面で新しい変化を迎えている2013シーズンの開幕なのである。
(写真:ついに完成した新・伊豫魂幕)
 愛媛FCサポーターズクラブ「ラランジャ トルシーダ」には、発足時に制作し、私たちメンバーが今まで管理し続けてきた横断幕が存在する。「伊豫魂」という文字が描かれた、縦1.5m、横8mの大型横断幕だ。通称「伊豫魂幕」と呼ばれているものである。
 
 想えばJ2昇格直後から、ニンジニアスタジアムはもちろんのこと、全国のさまざまな場所で、暑い日も、雨の日も、風の日も、私たちと一緒に愛媛FCやユースチーム、愛媛FCレディースや愛媛マンダリンパイレーツなどの試合を見守り、応援し続けてきた愛着のある横断幕なのである。
 
 その伊豫魂幕も、制作から7年が経過し、オレンジ色の生地は直射日光を浴びて色褪せ、白っぽく変色している。描かれた文字の塗料も所々、剥離し、かなりくたびれてしまった感がある。そんな状況を見かねてか、2年ほど前から、「そろそろ、横断幕を作り直してはどうか?」とのご意見も、周囲からは多数頂いていた。
(写真:色褪せ、白っぽくなってしまった旧・伊豫魂幕)
 
 そこで、このオフ期間を利用して、ラランジャ トルシーダでは伊豫魂幕を修繕するのではなく、新規に作成することに決定したのである。
 生地とデザインの準備は、昨年の11月末に段取りをスタートさせた。オレンジ色の生地は、ゴール裏スタンドの拡充に合わせて縦のサイズを30cmだけ伸ばし、1.8mと少しだけ大きくした横のサイズは、変わらず8m)。

 また素材は、長時間、太陽光を受けても色褪せしにくい化学繊維を主体とした生地へと変更。文字デザインは、旧横断幕のイメージを踏襲し、大きな変更は行わず、数字の「12」と「Laranja Torcida(ラランジャ トルシーダ)」の文字のレイアウト変更だけに留めた。
 
 そして、真っさらな生地と「新・伊豫魂幕」のデザインを引っ提げ、年明けの1月5日(土)、えひめ青少年ふれあいセンター(松山市上野町)の一室をお借りして、下書き作業を行った。壁に貼り付けた生地に向けて、プロジェクターを照射し、横断幕のデザインを映し出す。

 映し出されたデザインの輪郭に沿って、色鉛筆を走らせて下書きを行う。複雑なデザインではあったが、約2時間の作業で下書きを終えることができた(今回、場所や機材、材料の準備をしていただいた方々、また制作作業に、ご参加、ご協力頂いた方々には感謝を申し上げたい)。
 
 次の日からは私の職場に場所を移し、塗装の作業に入った。生地に描かれた下書きに合わせて、白色やネイビーブルーの塗料(耐水性ポスターカラー)を
重ねていく。1度目の塗装は、あくまで下地作り。2度目の塗装からが本塗装ということになる。 日曜日や平日の夜などを利用しつつ、コツコツと作業を進め、下書きの作業から約1カ月半の期間を費やし、ようやく新・伊豫魂幕が完成した。
(写真:新しい伊豫魂幕の制作風景) 

 完成直後は、達成感から来る喜びと、安堵感に包まれる感覚が強かったのだが、少し時間が経つと共に旅して戦ってきた旧・伊豫魂幕のことを、ふと思い出し、「長い付き合いだったが、これでお別れか……」という感傷的な気持ちにも苛まれ、少々寂しさも込み上げてきた。雨にも負けず、風にも負けず、これまで頑張ってくれた旧・伊豫魂幕には、「本当にお疲れさま。ありがとう」と言葉をかけてあげたい。
 
 何事にも始まりと終わりはあるもので、これからは新・伊豫魂幕に頑張ってもらわねばならない。新・伊豫魂幕は、3月3日(日)の開幕戦(対モンテディオ山形)にてお披露目となり、愛媛FCは3−1と白星スタートを切った。願わくば今後もクラブを勝利へと導いてくれる幸運な横断幕として長い期間、愛され、活躍してほしいものだ。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>
 1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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