第140回 新潟・青木智史プレーイングコーチ「連覇に向けた“継続”と“進化”」
昨季は初のリーグ優勝、そして日本一を達成した新潟アルビレックスBCですが、決して満足はしていません。主力選手のほとんどが残っていますから、昨季のチーム力を継承しながら、それにどれだけ上積みして進化していくことができるかが重要です。今季は内藤尚行新監督の下、連覇を目指していきます。
新潟の強さは、橋上秀樹さん、高津臣吾さんの指導法を選手たちが忠実に受け止め、その中で成長してくれたことにあります。どんなタイプの指導者の下でも、方針を明確に提示してくれさえすれば、それに適応する能力は十分にあることは実証済み。それだけに内藤新監督の下、今季はどんな野球をするのか、今から楽しみで仕方ありません。
その内藤監督のこだわりのひとつが「先取点」です。おそらく、早めに試合の流れをつかみたいということがあるのでしょう。新潟の「先取点」は他球団からすれば、脅威になり得ます。昨季とほとんど同じメンバーが揃う新潟の打線は、一度勢いがついたら止まらない爆発力があるというイメージがあると思うのです。ですから、その新潟にリードされる前に、自分たちがリードを奪いたいという気持ちがあるはずです。そこで新潟が先取点を奪えば、「あと何点奪われるのだろうか……」と相手にプレッシャーとダメージを与えることができます。そうなれば、試合を優位に進めることができるでしょう。
野呂&平野、NPBへの可能性
さて、昨季はリーグトップの打率2割8分5厘、705安打、379打点、104盗塁、280四球という成績を残しました。チーム全員の成長が、この数字に表れています。なかでも、大きな変化を遂げたのが野呂大樹(堀越高−平成国際大)です。彼の持ち味は50メートル5秒台の足です。しかし、入団1年目は失敗を恐れてなかなか走る勇気がもてず、出塁してもスタートを切ることができずにいました。
(写真:昨季、盗塁王に輝いた野呂)
「アウトになっても足のあるオマエが走ることが、相手にはプレッシャーになる」
僕のそんな言葉がどれだけ効果があったかはわかりませんが、精神面での成長が見られた昨季は結果を恐れずに、積極的に走る姿が見受けられるようになったのです。
シーズン中盤、プロのスカウトが彼をドラフト候補として注目し始めました。すると、彼はスカウトを気にしたプレーをするようになり、結果が出なくなってしまったのです。
「周りを気にして結果を出せるほど、甘い世界ではないぞ」
僕はそんなことを野呂に言ったこともありました。
ある日、彼は僕にこう言って来たのです。
「目の前のやるべきことに集中します」
それから彼は再び結果を残し始めました。結果的は彼は、走ってはリーグ最多の37個の盗塁を成功させてタイトルホルダーとなり、打ってはリーグ2位の打率3割3分5厘と、首位打者争いまで演じたのです。今季はさらなる飛躍を期待したいですね。
(写真:高い盗塁阻止率を狙う平野)
また、昨季打点王となり、シーズンMVPに輝いたのが、キャッチャーの平野進也(東福岡高−武蔵大)です。平野はバッティングもリードも申し分ありません。課題は肩にあります。いかに盗塁を刺すことができるか。これさえ通用することができれば、NPBへの可能性も開けてきます。それは本人もよくわかっているのでしょう。今オフの間、しっかりと肩のトレーニングをしてきたようです。今季にかける思いは並々ならぬものがありますので、平野の盗塁阻止率にも注目してほしいと思います。
今も残る好調時の感覚
2年間、主将を務めた清野友二が昨季限りで現役を引退し、今季、新主将には入団4
年目の佑紀(日本文理高−平成国際大)が就任しました。彼は感性が鋭く、周囲に目配り、気配りのできる選手です。普段からいろいろと考えており、「こうしたら、もっと良くなるんじゃないかな」という意見をもっているのですが、これまでは遠慮していたのか、それを口に出すことはあまりありませんでした。
そんな彼が「長年、アルビレックスにいる自分が、チームをまとめたい」と自ら主将に立候補してきたのです。何か自分を変えたいという思いがあったのかもしれません。僕はその佑紀の気持ちを大事にしたいと思い、彼を主将に任命することを決めました。素晴らしい考えを持っているのですから、それをどんどん口に出して伝えることさえできれば、きっと選手たちはついていくはずです。
僕自身はというと、昨年のシーズン終盤、好調時のバッティングの感覚を取り戻すことができました。試合中、ふと「いい加減なくらいに打ってみようかな」と思ったことがきっかけでした。そうしたところ、無駄な力みのないスイングができるようになったのです。そのあまりの感覚の良さに「プレーオフは、打ちまくっちゃうだろうな」と思っていたところ、案の定、プレーオフでのバッティングは冴えわたりました。一冬越えた今もまだ、そのいい感覚ははっきりと残っていますので、このままシーズンに入ることができれば、自分のバッティングができると思います。その中でランナーを背負った場面で、いかに打つことができるかが自分の役割ですので、今季は打点にこだわっていきたいと思っています。
15日からは内藤新監督の下、チームの合同トレーニングがスタートします。過去の栄光にすがることなく、今季はさらにレベルアップした姿をお見せしたいと思っていますので、応援よろしくお願いします。
<青木智史(あおき・ともし)プロフィール>:新潟アルビレックスBCプレーイングコーチ
1979年9月10日、神奈川県出身。98年、ドラフト6位で広島に入団したが、2000年オフに自由契約の身となる。その後渡米し、トライアウトを受け続けた結果、03年にシアトル・マリナーズ1Aと契約。しかし、同年に解雇。翌年には豪州のセミプロチームに所属し、05年には豪州選手主体のウェルネス魚沼に唯一の日本人選手として入団した。同年夏にはセガサミーに入社。08年、新潟アルビレックスBCに入団し、09年よりプレーイングコーチに就任。08年に本塁打王に輝くと、09年には本塁打、打点の2冠を獲得した。187センチ、100キロ。右投右打。
新潟の強さは、橋上秀樹さん、高津臣吾さんの指導法を選手たちが忠実に受け止め、その中で成長してくれたことにあります。どんなタイプの指導者の下でも、方針を明確に提示してくれさえすれば、それに適応する能力は十分にあることは実証済み。それだけに内藤新監督の下、今季はどんな野球をするのか、今から楽しみで仕方ありません。
その内藤監督のこだわりのひとつが「先取点」です。おそらく、早めに試合の流れをつかみたいということがあるのでしょう。新潟の「先取点」は他球団からすれば、脅威になり得ます。昨季とほとんど同じメンバーが揃う新潟の打線は、一度勢いがついたら止まらない爆発力があるというイメージがあると思うのです。ですから、その新潟にリードされる前に、自分たちがリードを奪いたいという気持ちがあるはずです。そこで新潟が先取点を奪えば、「あと何点奪われるのだろうか……」と相手にプレッシャーとダメージを与えることができます。そうなれば、試合を優位に進めることができるでしょう。
野呂&平野、NPBへの可能性
さて、昨季はリーグトップの打率2割8分5厘、705安打、379打点、104盗塁、280四球という成績を残しました。チーム全員の成長が、この数字に表れています。なかでも、大きな変化を遂げたのが野呂大樹(堀越高−平成国際大)です。彼の持ち味は50メートル5秒台の足です。しかし、入団1年目は失敗を恐れてなかなか走る勇気がもてず、出塁してもスタートを切ることができずにいました。(写真:昨季、盗塁王に輝いた野呂)
「アウトになっても足のあるオマエが走ることが、相手にはプレッシャーになる」
僕のそんな言葉がどれだけ効果があったかはわかりませんが、精神面での成長が見られた昨季は結果を恐れずに、積極的に走る姿が見受けられるようになったのです。
シーズン中盤、プロのスカウトが彼をドラフト候補として注目し始めました。すると、彼はスカウトを気にしたプレーをするようになり、結果が出なくなってしまったのです。
「周りを気にして結果を出せるほど、甘い世界ではないぞ」
僕はそんなことを野呂に言ったこともありました。
ある日、彼は僕にこう言って来たのです。
「目の前のやるべきことに集中します」
それから彼は再び結果を残し始めました。結果的は彼は、走ってはリーグ最多の37個の盗塁を成功させてタイトルホルダーとなり、打ってはリーグ2位の打率3割3分5厘と、首位打者争いまで演じたのです。今季はさらなる飛躍を期待したいですね。
(写真:高い盗塁阻止率を狙う平野)また、昨季打点王となり、シーズンMVPに輝いたのが、キャッチャーの平野進也(東福岡高−武蔵大)です。平野はバッティングもリードも申し分ありません。課題は肩にあります。いかに盗塁を刺すことができるか。これさえ通用することができれば、NPBへの可能性も開けてきます。それは本人もよくわかっているのでしょう。今オフの間、しっかりと肩のトレーニングをしてきたようです。今季にかける思いは並々ならぬものがありますので、平野の盗塁阻止率にも注目してほしいと思います。
今も残る好調時の感覚
2年間、主将を務めた清野友二が昨季限りで現役を引退し、今季、新主将には入団4
年目の佑紀(日本文理高−平成国際大)が就任しました。彼は感性が鋭く、周囲に目配り、気配りのできる選手です。普段からいろいろと考えており、「こうしたら、もっと良くなるんじゃないかな」という意見をもっているのですが、これまでは遠慮していたのか、それを口に出すことはあまりありませんでした。
そんな彼が「長年、アルビレックスにいる自分が、チームをまとめたい」と自ら主将に立候補してきたのです。何か自分を変えたいという思いがあったのかもしれません。僕はその佑紀の気持ちを大事にしたいと思い、彼を主将に任命することを決めました。素晴らしい考えを持っているのですから、それをどんどん口に出して伝えることさえできれば、きっと選手たちはついていくはずです。
僕自身はというと、昨年のシーズン終盤、好調時のバッティングの感覚を取り戻すことができました。試合中、ふと「いい加減なくらいに打ってみようかな」と思ったことがきっかけでした。そうしたところ、無駄な力みのないスイングができるようになったのです。そのあまりの感覚の良さに「プレーオフは、打ちまくっちゃうだろうな」と思っていたところ、案の定、プレーオフでのバッティングは冴えわたりました。一冬越えた今もまだ、そのいい感覚ははっきりと残っていますので、このままシーズンに入ることができれば、自分のバッティングができると思います。その中でランナーを背負った場面で、いかに打つことができるかが自分の役割ですので、今季は打点にこだわっていきたいと思っています。
15日からは内藤新監督の下、チームの合同トレーニングがスタートします。過去の栄光にすがることなく、今季はさらにレベルアップした姿をお見せしたいと思っていますので、応援よろしくお願いします。
<青木智史(あおき・ともし)プロフィール>:新潟アルビレックスBCプレーイングコーチ1979年9月10日、神奈川県出身。98年、ドラフト6位で広島に入団したが、2000年オフに自由契約の身となる。その後渡米し、トライアウトを受け続けた結果、03年にシアトル・マリナーズ1Aと契約。しかし、同年に解雇。翌年には豪州のセミプロチームに所属し、05年には豪州選手主体のウェルネス魚沼に唯一の日本人選手として入団した。同年夏にはセガサミーに入社。08年、新潟アルビレックスBCに入団し、09年よりプレーイングコーチに就任。08年に本塁打王に輝くと、09年には本塁打、打点の2冠を獲得した。187センチ、100キロ。右投右打。