第2回「箱根駅伝とeスポーツ」 ~柏木正博理事長インタビュー(後編)~

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二宮清純: 今回はスポーツについておうかがい致します。大学の公式部はカヌー部、空手道部、弓道部、剣道部、硬式野球部、柔道部、卓球部、カバディ部の8つがあります。特に実績があるのはカヌー部でしょうか。

柏木正博: カヌー部は来年、創部90年を迎えます。近年では水本圭治選手が2021年東京五輪カヤックフォア500m代表に、當銘孝仁選手が同じく2021年東京五輪カナディアン・シングル1000m代表に選ばれました。このようにカヌー部は本学の看板競技のひとつになっています。

 

 

二宮: 続いてカバディ部です。言うまでもなくカバディはインド発祥の競技で、鬼ごっことドッジボールが融合したような独自のルールを持っています。日本カバディ協会によると、<紀元前、獣に対し武器を持たずに多彩なテクニックを用いて数人で囲み、声を掛けながら捕らえるという武器を持たずに戦う技術、獣の襲撃から身を守る方法が、やがてスポーツとして成熟し、カバディが生まれました>とのことです。

柏木: カバディ部は、これまで数多くの日本代表選手を輩出し、W杯でMVPを獲得した学生もいます。かつて代表チームでキャプテンを務めた河野雅亮選手も本学の出身で、天台宗来迎山地蔵院延命寺(さいたま市)の僧侶でもあります。

 

二宮: 空手道部も実績がありますね。

柏木: 女子は2017年の第60回全日本空手道選手権大会で団体形3位に入賞するなど団体組手を含め、過去全国大会で何度も表彰台に上がっています。男子は団体組手で2度の優勝(87、89年)。さらに第66回全日本大学空手道選手権大会において、団体形2位、団体組手でベスト8入りを果たしました。1986年にJKA全日本空手道選手権大会(組手)を制した小倉靖典師範も、本学の出身です。実績という面では、大正大学は長い歴史がありますので、ここですべてを紹介することはできません。

 

二宮: そんな中、驚いたのが、箱根駅伝へのチャレンジです。スクープしたスポーツ報知(WEB版)から引きます。<現在、大正大に陸上競技部は存在せず、ゼロからのスタートとなる。箱根駅伝本戦で監督経験を持つ指導者を招聘し、就任が内定。今後、現高校2年以下の選手を勧誘し、27年4月から駅伝チームが本格始動する見込み>(2026年3月3日配信)。100年の歴史を持つ大正大学ですが、これまで陸上競技部はなかったそうですね。

柏木: ありませんでした。その意味では全くゼロからのスタートです。箱根駅伝出場を目指すというと、よく“受験生が増えますよ”と言われますが、そうとは限らないし、そこを目指しているわけでもない。おそらく、一番喜んでくれるのは本学の卒業生だと思うんです。箱根を目指すことで知名度も上がるでしょうし、選手たちが頑張ってくれれば、それが誇りになり、自信にもつながっていく。そういった好循環を生み出していきたいと考えています。

 

 

二宮: 硬式野球部は現在、東都大学野球連盟の3部に属しています。2部に上がるためには3部で優勝し、2部の最下位校を倒さなければなりません。リーグ戦は春・秋の2シーズン制ですから、年に2回は昇格のチャンスがあります。

柏木: 春のリーグ戦、3部で優勝したのは国士舘大学で、本学は2位でした。本学は過去に何度か2部には昇格していますが、まだ1部に上がったことはありません。まず2部の壁を破り、いずれは1部に定着するだけの力を身に付けたいと考えており、練習環境の整備やスポーツ科学に基づくトレーニングの導入を進める予定です。

 ところで二宮さんにお聞きしたいことがあります。eスポーツの未来についてはどうお考えになっていますか?

 

 

二宮: IOC(国際オリンピック委員会)がeスポーツに興味を示している背景には、スポンサーの問題もあります。IOCのトップパートナー12社のうち5社(アリババ、サムスン、アリアンツ、コカ・コーラ、デトロイト)はeスポーツの普及に熱心に取り組んでいる企業です。

 しかし五輪競技になるには、越えなければならないハードルがあります。というのも、eスポーツの中にはバトルゲームやシューティングゲームなど暴力性のあるものが多く、「平和」を謳い文句とする五輪にはふさわしくない、という声が根強くあります。それが理由かどうかはともかく、2025年にサウジアラビアで開催予定だった「第1回 オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」は白紙になりました。

 その一方で、eスポーツの未来を肯定的にとらえる人々もいます。たとえば障がい者の中には「健常者と同じ土俵で戦えることがうれしい」という声もあり、eスポーツを障がい者の自立支援に役立てている医療機関もあります。

 ちなみにeスポーツの市場規模は、調査会社によって幅はありますが、2025年で24~81億ドル(約3892億~1兆3135億円)。インターネットの普及やライブストリーミングプラットフォームの拡大により、市場規模は2030年には60~130億ドル(約9728億~2兆1079億円)にまで拡大すると見られています。

 

 

柏木: これについては、前回お話した通信制の「カルチャープレナー学部」(仮称)とも関係がありますが、若い人の中にはeスポーツをビジネス化したい、専門家になって起業したい、あるいはeスポーツに関する知識を武器に企業に入り、活躍したいという者がたくさんいると思うんです。要するに他の大学がやっていない斬新な分野にも積極的に取り組んでいきたい、と考えています。

 この新設の学部には「108人の越境知ネットワーク」というサブタイトルが付いています。中国の「水滸伝」の英雄譚にならって、108人の非常勤講師、客員教員、地域実践者、経営者、芸術家、宗教者、編集者などによる教育ネットワークを形成したいと考えています。ぜひご協力ください。

二宮: いやぁ、「水滸伝」とは、気宇壮大ですね。「第二の開学」に向けた壮大な物語の始まりを予感します。

 

 

柏木正博(かしわぎ・まさひろ)プロフィール>

1951年8月23日生まれ。1974年3月に大正大学文学部史学科を卒業後、同大事務局に入局。教務部長、事業推進部長、事務局長、専務理事を経て、2024年3月より理事長に就任、現在に至る。事務局長在任時より同大の地域連携活動を推進し、地域構想研究所の設立を主導。現在では、当研究所相談役を務める。

学外においては、2015年4月から2018年3月まで「日本私立大学団体連合会高等教育改革委員会「地方活性化(地域共創)問題に関する小委員会」専門委員を務めた。

 

 

二宮清純(にのみや・せいじゅん)プロフィール>

1960年、愛媛県出身。明治大学大学院博士後期課程修了・博士(学術)。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。経済産業省「地域×スポーツクラブ産業研究会」委員。認定NPO法人健康都市活動支援機構理事。『スポーツ名勝負物語』(講談社現代新書)『勝者の思考法』(PHP新書)『プロ野球“衝撃の昭和史”』(文春新書)『変われない組織は亡びる』(河野太郎議員との共著・祥伝社新書)『歩を「と金」に変える人材活用術』(羽生善治氏との共著・廣済堂出版)、『森保一の決める技法』(幻冬舎新書)など著者多数。

 

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