重要なのは誰を選ぶか、ではない。どう選ぶか、だ。ここをきちんと議論しない限り、永遠に球界のリーダー問題は解決しないだろう。
 統一球の仕様変更問題で統治能力の無さを露呈した加藤良三コミッショナーに対し、さる19日、労組・日本プロ野球選手会が「不信任」を突き付けた。
 選手会は、6月27日にNPBと、統一球問題を調査する第三者委員会あてに要望書を提出している。問題の背景にまで言及し、<とりわけプロ野球の将来について消極的で責任回避的な人物がこれまでコミッショナーを務め続けてきたことにある>と踏み込むなど、中身は加藤コミッショナーへの事実上の退場勧告と呼べるものだった。

 しかし、選手会側にコミッショナーを罷免する権限はない。野球協約には<コミッショナーの任免は、オーナー会議で行う>と記されているだけだ。つまり選手会が退場勧告しようが不信任を突き付けようが、オーナーやコミッショナーに無視されれば、何の拘束力も持ち得ないのが実情である。国会にたとえていえば、参議院の問責決議のようなものだ。

 この際、私は野球協約そのものを見直すべきだと考える。改憲である。よくコミッショナーをして“お飾り”と揶揄する者がいるが、協約では<コミッショナーが下す指令、裁定、裁決及び制裁は最終決定>とうたわれている。これだけの権限を持ちながら、何やらオーナーたちの傀儡のように映るのは、選任方法そのものに問題があるからだ。言葉は悪いが密室談合。可視化の動きすら見られない。

 ならば思い切ってコミッショナーを公選制にしてみてはどうか。有権者は以下のとおり。12球団オーナー12票、12球団選手会長12票、NPB審判長1票、日本高野連会長1票、全日本大学野球連盟会長1票、日本野球連盟会長1票、独立リーグ連絡協議会1票の計29票。アマチュア組織や独立リーグも含めたのは、プロ野球の発展のためには欠かすことのできないステークホルダーだからである。幅広い層から支持を得て選ばれたリーダーなら、少なくとも今よりは思い切った改革ができよう。

 あくまでも以上は私案であって叩き台に過ぎない。しかし、今のままでは事は何も前に進まない。不作為と無責任の連鎖から脱け出すために何をすべきか。それを真剣に議論すべき時である。

<この原稿は13年7月24日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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