ゴールデンルーキーや若手、ベテランがそれぞれ見せ場をつくり、高いパフォーマンスでファンを魅了したオールスター。3日間にわたる“夢の球宴”が幕を閉じ、24日からプロ野球はペナントレースに戻る。大方の予想通りに混戦模様を呈しているパ・リーグに対し、セ・リーグは2強4弱と明暗がはっきりと分かれ、巨人と阪神の首位争いが続いている。果たして、後半戦はどんな展開となるのか。
 チームを活気づける新4番のフルスイング

 現在、6位オリックスまで7ゲーム差のパ・リーグ。前半戦は順位が激しく入れ替わった。下馬評とは裏腹に、5月9日以来首位を独走し続けてきたのが千葉ロッテだが、7月には引き分けをはさみ6連敗と貯金を減らしていった。その間にじりじりと浮上してきた東北楽天が、7月に入って首位を奪還。球団創設9年目にして、初めて首位でシーズンを折り返した。

 その楽天とロッテとの首位争いに食い込もうとしているのが、勢いを取り戻しつつある埼玉西武だ。今季、幸先いいスタートを切った西武は、4月は2位に最大4.5ゲーム差をつけて首位を独走した。しかし5月9日にロッテに首位の座を明け渡して以降は2位、3位、そしてBクラスへと下降線をたどった。だが、7月に入って再び浮上し始める。今季3度目となる5連勝で波に乗り、約1カ月ぶりにAクラス復帰を果たした。

 この浮上の原動力のひとりとなったのは、やはり12球団最年少4番の浅村栄斗だろう。現在、打率はリーグ3位の3割3分6厘、本塁打数は同4位タイの17本、そして打点はリーグトップの63をマークしている。

 3年目の11年にはレギュラーを獲得した浅村は、これまで打順は1番あるいは6、7番が多かった。だが、今季は中村剛也が昨オフに左ヒザの手術を受けて4番が不在となっており、5月29日の横浜DeNA戦から浅村がその4番に抜擢されたのだ。6月末に自由契約となったオーティズも務まらなかったポジションだが、22歳の浅村はプレッシャーとは無縁のようだ。4番での打率は4割に到達する勢いで、打点は35試合で34。豪快なバッティングは4番になって、さらに凄みを増している。「楽しみながら(4番を)できている」というコメントからも、自信の大きさがうかがえる。

 初めて出場したオールスターでは、2試合に出場し、7打数3安打とシーズンと変わらない力強いスイングでプロ野球ファンを沸かせた。彼の魅力は何といっても、フルスイングだ。豪快さこそ中村剛には及ばないものの、見ているものを魅了させてくれる。たとえ空振り三振に終わっても後味が悪くないのは、ひとつは体勢を崩されていないからだ。きちんと自分のポイントにボールを呼び込んだうえで、投手と勝負している。だからこそ、きちんと結果を残している。そしてその結果が三振であっても、中村剛と同様に、爽快感さえ感じられるのだ。

 早ければ8月中にも1軍復帰すると言われている中村剛。22歳の新4番に刺激を受けていないわけはない。チーム内の競争は、ひいてはチームの強化に結びつく。8月以降、中村剛と浅村との4番争いも見どころである。そして主砲が打線の軸を担っているチームはブレない強さがある。浅村の積極的なバッティングがチームを活気づけ、首位浮上のカギを握りそうだ。

 阪神、リリーフの再建なるか!?

 一方、セ・リーグは巨人と阪神との首位争いが続いている。現在、2位・阪神と3位・中日との差は11ゲームあり、後半戦も2強の様相を呈しそうだ。巨人と阪神との差は2.5ゲーム。巨人が突き放そうとするも、阪神が粘りを見せ、その一方で阪神も追いつくことができず、お互いにつかず離れずの状態が続いている。

 だが、後半戦は巨人が下馬評通りの独走状態を築く可能性が高いのではないか。その最大の理由は、リリーフ陣の差だ。チーム打率は巨人が2割6分2厘、阪神は2割6分1厘と、打線はどちらも好調だ。長打力に限れば、やはり巨人に分があるものの、打線のつながりという点では、阪神にも巨人にひけをとらない粘り強さがあり、終盤での逆転も少なくはない。

 また、投手陣においても先発はそれほど差はない。巨人は杉内俊哉と菅野智之が8勝、内海哲也が6勝、澤村拓一と宮國椋丞が4勝。一方の阪神は能見篤史とメッセンジャーが8勝、藤浪晋太郎が6勝、スタンリッジが5勝、榎田大樹が4勝だ。

 だが、リリーフ陣の安定という点においてはその差がグンと広がる。巨人にはセットアッパーに山口鉄也、クローザーに西村健太朗が存在する。山口は4勝2敗3セーブ、防御率は1.47。優秀なセットアッパーであることを示すホールドポイント(HP)はリーグ最多の23だ。西村は2勝3敗、防御率1.50。セーブ数はリーグ最多の23を誇る。

 阪神は、期待された新勝利の方程式「AFK」(安藤優也、福原忍、久保康友)が完全に崩壊した。メジャーリーグに移籍した藤川球児の穴を埋めるべく、先発から抑えに転向した久保が不調を極め、2軍に降格。その後は“日替わりクローザー”として安藤、福原でなんとか凌いでいるというかたちだ。だが、不安定な状態であることに変わりはない。打線や先発が好調な間に、リリーフ陣の立て直しを図ることが、逆転優勝の最低条件とも言える。

 安藤と福原のベテラン2人は今季、安定した成績を収めている。安藤は2勝0敗1セーブ、防御率2.50。HPは山口に次ぐ20をマークしている。また、福原は3勝0敗4セーブ、防御率は0.68でHPは15だ。この2人のうち、どちらをセットアッパーにし、どちらをクローザーにするのか、早急にかためるべきであろう。特に守護神は近年のプロ野球では優勝の必須条件である。後半戦、巨人との差が開く前に和田豊監督は勇断を下す必要がある。