部活動の地域展開、識者が語る現在地と未来
6日、スポーツ産業推進協議会は部活動の地域展開をテーマにしたシンポジウムを東京・赤坂インターシティコンファレンスにて開催した。同シンポジウムには日本スポーツ協会会長の遠藤利明氏、同副会長の益子直美氏、リーフラスの代表取締役CEO伊藤清隆氏、港区教育委員会事務局の加藤靖規氏がパネリストとして参加。長年、この問題に取り組んできた当HP編集長・二宮清純がファシリテーターを務めた。
部活動の地域展開とは、少子化や教員の負担軽減を背景に、これまで中学校など学校単位で行なわれてきた部活動を、地域のクラブや団体が運営する仕組みへ移行・展開していく取り組みだ。2022年度から3年に及ぶ「改革推進期間」を終え、26年度からは「改革実行期間」(26〜31年度)が始まった。

(写真:「日本のスポーツ政策の大きな転換点はスポーツ基本法だった」と話す遠藤会長)
シンポジウムでは、スポーツ基本法をはじめスポーツに関する法整備に尽力した遠藤会長が、部活動の地域展開がスタートした経緯を説明した。
「これは私の責任もあるのですが、『部活の地域移行』という名称を発表したことで、部活動の先生たちから散々反発がありました。『 俺たちは部活動を必死にやっているのに、それを認めないのか!』と。地元でも、部活動を愛する先生にもこっぴどく叱られました。しかし我々が進めたかったのは、部活動を地域に移行するのではなくて、部活動と地域スポーツの一体化が本来のテーマだった。本来の趣旨が伝わらず、当初は少し混乱を招いてしまいました」
創業時からスポーツスクール事業を手掛け、いち早く部活動の地域展開の支援事業に取り組んでいるリーフラス。伊藤代表取締役CEOは、現場で直面する課題をこう挙げた。
「当社は日本で一番多く、部活動支援を受託させていただいています。一番大切なのは安全面です。特にこの猛暑ですし、どこまで安全に部活動指導を実施していくかが大事です。ただ、残念ながら、自治体の公募には、安全面で問題のある業者も参入している。自治体によりますが、価格だけで業者を選んでしまっているところがあるのが実状。何か事故があってからでは遅い。そこが一番懸念している点です」

(写真:伊藤代表取締役CEOは創業時から「スポーツを楽しむ」ことを大事にしている)
その後の話は教員の働き方改革、指導者の国家資格化、体罰問題などに及び、約1時間半のシンポジウムは幕を閉じた。伊藤代表取締役CEOは「部活動の地域展開が日本をいい方向に変えていくものだと確信しています」と力強く語り、こう続けた。
「少年団の方、総合型スポーツクラブの方、民間の方を総動員し、子どもたちのためにやっていくことが必要なんです。それをもし実行できれば、地域の活性化にもつながっていく。 子どもたちが明るく楽しく、伸び伸びとスポーツに取り組むことができれば、その子どもたちが社会に出た時に、より良い人材に育っているはずです」

(写真:港区の教育現場におけるアンガーマネジメント導入を推進した加藤氏)
続けて加藤氏。
「部活動改革の動きは、教員の方の働き方改革だけの議論にしたくないと思っています。もっと子どもを主語にしていきたい。子どもたちがもっと学びたい、上達したいという思いにどう応えていくのか。それをまわりの大人たちが考えていくことが必要です。もっと学校、地域、民間の事業者さん。それぞれの強みを持ち寄り、誰一人と取り逃さない持続可能なスポーツ環境をつくっていきたい」

(写真:益子氏主催の「監督が怒ってはいけない大会」は2015年にスタート)
益子氏は、約100人の参加者たちに、こう呼びかけた。
「本当に今まで誰もやってこなかったことを、やらなければいけない。今日お越しの皆さんにも、迷っている方もいると思います。ぜひ、1人で抱え込まず、いろいろ周りの方たち、違う自治体の方、地域の方と共有していただければと思っております。私たちもたくさんの方々に、部活動の地域展開のことを知り、興味を持っていただけるように頑張ります。中学生、そしてジュニアユース世代のスポーツ環境がさらにいいものになるように、ぜひ皆様のお力をお貸しください」

ファシリテーターを務めた二宮は、「部活動の在り方が変われば、日本が変わるくらいの気持ちで、 皆さんは取り組んでいらっしゃいます。ぜひご支援のほど、お願いします」と述べた。
(文・写真/杉浦泰介)