次につなげていくために。森保監督の信念が伝わるメンバー選考
来年1月開幕のアジアカップまで指揮を執る森保一監督を「続投」と表現するのは、いささか違和感を覚える。実質的には「半年間限定の延長」であり、その先は現在、アジア競技大会を戦っている大岩剛U-21日本代表監督にバトンが託される。
「延長」の背景にあるのは、2011年大会以来となるアジアカップ優勝を成し遂げるため。JFAの宮本恒靖会長は7月の会見でこう述べた。
「今回のワールドカップにおいてもFIFAランキングが上にあるか、下にあるかというところで、戦い方がかなり違ってきます。その意味で公式戦となるアジアカップを勝つことで、ランキングを上げることが重要になってきます」
日本のランキングはアジア最上位の17位。前回のアジアカップこそ8強止まりであったが、公式戦や親善試合で世界の強豪国に勝って地道にランクを上げてきた。だが、ポット2入りした先の北中米ワールドカップでは、ベースキャンプ地選びや、試合前日のスタジアム練習における時間設定は、ポット1のチームが優先される現実があった。優勝という目標を達成するには、ポット1に入ることが重要だと思い知らされたわけだ。
アジアカップまで6試合の国際親善試合が組まれている。そのうちの4試合が、9月のキリンチャレンジカップ(24日宮城VSウルグアイ代表、28日広島VSベネズエラ代表)、10月のキリンカップ(1日神奈川VSエクアドル代表、5日東京VSニュージーランド代表ORパナマ代表)と連戦になる。長距離移動を伴う選手たちの負担を軽減すべく、FIFAは9、10月のインターナショナルマッチデーを1セットにした。チームの活動時間も伸びるため、重要な期間となることは言うまでもない。
森保監督は9、10月の4連戦をどのようなメンバー構成で臨むのか――。
アジアカップ優勝が目的であれば、新戦力の発掘というよりも森保ジャパンのコンセプトを熟知している現有戦力で臨むこともあり得る。目新しさのないメンバー選考になる可能性もあったなかで、ワールドカップ組中心ではあるものの31人のメンバーには谷村海那(横浜F・マリノス)、中野就斗(サンフレッチェ広島)、松木玖久(サウサンプトン)、齋藤俊輔(ウェステルロー)ら新顔が4人入った。
バレンシアに移籍した19歳の佐藤龍之介、PSVに移籍して初ゴールを奪った22歳の佐野航大ら伸び盛りの若手のほか、ケガから復帰して好パフォーマンスを発揮している熊坂光希(柏レイソル)や首位を走るFC町田ゼルビアをけん引する存在の相馬勇紀といった国内組も名を連ねた。一方、30代は伊東純也(ゲンク)と鎌田大地(クリスタル・パレス)の2人だけ。コアメンバーだった長友佑都(FC東京)、谷口彰悟(シントトロイデン)、そして代表引退を表明している遠藤航(リバプール)も外れる形となった。
半年間の契約更新が発表された7月の会見で語った指揮官の言葉を振り返ってみれば、ある程度予想できたとも言える。
「与えられた契約期間のなかで日本代表の勝利のため、そして日本のサッカー発展のため、自分のやるべきことに全力を尽くしたいと思っています。スタッフとともに、選手とともに全力を尽くすことで、結果を出すことで次への良きバトンタッチとしたい」
彼にとってはアジアカップまでだろうが、次回のワールドカップまでだろうが、期間はあまり関係ない。目の前にある試合に向かってベストを尽くしていくだけ。「2050年までにワールドカップを日本で開催し、日本代表チームはその大会で優勝チームとなる」と記す『JFA2005年宣言』を意識し、歴史をつないでいく役割を自覚する姿勢は一貫している。北中米大会で「優勝」を目標としたのも、今それを掲げて本気で目指していく必要性を感じたからにほかならない。
チームのベストを出せるメンバー構成を大切にしつつ、若い芽を伸ばしていくことは抜け落ちない。そして今回は欧州ばかりかJリーグで活躍する選手を、枠を広げて組み込んだのも大きな特徴。アジアカップを見据えてのものではあるものの、谷村のような28歳での初代表はJリーグでプレーする選手の励みにもなる。
アジアカップ優勝のみならず、次の日本代表につなげていくために、日本サッカーをさらに発展させていくために――。指揮官の信念が伝わってくる選考であった。