川廷尚弘(日本車いすテニス協会会長)<後編>「マスターズを日本に招致」

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二宮清純: 現在、車いすテニスの競技人口はどれくらいですか?

川廷尚弘: 今は減少傾向にあり、日本車いすテニス協会の会員数(選手登録者と賛助会員)で見ると、300人弱です。そのうちの選手は約200人になります。

 

伊藤数子: 多い時はどのくらいでしたか?

川廷: 500人弱です。競技者数の減少も、我々の課題のひとつです。

 

 

二宮: 協会としては底辺を拡大するために何が必要だと考えていますか?

川廷: 体験機会の創出が大事だと思っています。そのためには、病院やリハビリセンターなどで車いすテニスに触れられる環境を整備していきたい。パラリンピックの金メダリストである国枝慎吾君や小田凱人君は、中途障がいで車いすテニスに出会い、トッププレーヤーになりました。思わぬ怪我や病気で、この先、どうしようかと悩んでいる人たちに車いすテニスを選んでもらう。競技用車いすの貸与もそうですし、体験会を実施するなど、そのきっかけづくりが必要です。

 

二宮: 車いすテニスは、国枝さんや小田選手、上地結衣選手のようにパラスポーツ全体で見てもスターと呼べる選手たちが続々と生まれてきています。彼らがパラリンピックやグランドスラムなど大きな国際大会で勝てば、テレビや記事などで取り上げられる。競技普及のためには、この熱を一過性のものに終わらせてはいけない。

川廷: おっしゃる通りです。これはテニスにも言えることですが、課題はトップ選手の活躍する場がグローバル過ぎる点です。シーズンを通して海外の大会を転戦するため、拠点はほぼ海外になってしまう。日本にいるファンや子どもたちにとって身近な存在になりにくい。だから私は、逆にグローバルな世界を日本に持ってくればいいと考えます。国際テニス連盟車いすテニスツアーの「車いすテニスマスターズ」を日本に招致したいんです。

 

二宮: 全米オープン終了時に世界ランキング8位以内の選手が出場できる、いわゆるツアーファイナル的な大会ですね。

川廷: そうです。メディアに車いすテニスのトップ選手を取材していただき、報じていただくことで競技の認知拡大につながる。また日本人選手の活躍する姿を生で観られる。幸い、私は国際テニス連盟(WT)理事も兼ねています。そこで築いてきた国外とのコネクションがあります。もし開催できれは、国内における競技の認知拡大、競技普及につながりますし、選手にとっても励みになる。みんなにとってWin-Winのイベントになると自信を持っています。

 

発信力を強化

伊藤: 会場は東京・有明テニスの森公園でお考えですか?

川廷: もちろんです。そのレールは着実に引けていると思っています。現在、日本代表選手の強化拠点であり、オリンピック・パランピックをはじめ大きな国際大会を開催した実績もありますから。

 

二宮: 車いすテニスの特長は、車いすの操作技術、チェアワークです。取材したり、テレビで試合を見ていて、そのあたりの詳しい説明がもっとほしいと感じます。

川廷: 私も車いすテニスを初めて見た時に、チェアワークの迫力、スピード感にビックリしました。コート上を縦横無尽に動き回る、その技術の難しさを伝えるためには、影響力のある経験者の声が必要です。彼らの力を借りながら、発信力を強化していきたい。

 

二宮: F1などのモータースポーツは、ある種、自動車メーカーの実験の場にもなっている。その点で言えば、車いすテニスを通じて、車いすの改善にもつながっていくと思うんです。

川廷: おっしゃる通りです。私も車いすはまだ進化の途中にある。機能性もそうですが、より安価に造るためのアイディアが生まれれば、体験機会のハードルも下がるはずです。

 

伊藤: 今後に向けては、どのような展望を?

川廷: まずは車いすテニスに限らず、他のパラスポーツとひとつになってパラスポーツの楽しさや魅力を知ってもらいたい。それにはたくさん世の中に露出していくことも大事。大会やイベントを通じて、日本がパラスポーツを応援し、共生社会実現に向かっている国だと世界に発信していきたいと思っています。

 

(おわり)

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川廷尚弘(かわてい・なおひろ)プロフィール>
一般社団法人日本車いすテニス協会会長。1970年、兵庫県神戸市出身。10歳からテニスを始める。神戸学院大学卒業後、国際テニス連盟の公認審判やレフェリーとしてグランドスラムやオリンピック、パラリンピックで経験を積み、2009年から23年までジャパンオープン大会ディレクターを務める。同大会で2019年に車いすテニス種目を採用した。公益財団法人日本テニス協会常務理事を経て、2019年に国際テニス連盟の理事に就任。翌2020年、日本テニス協会副会長を務める。昨年7月に一般社団法人日本車いすテニス協会の会長に就いた。

 

>>日本車いすテニス協会

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