日本サッカー協会が、来季開幕するJ3(J2の下部リーグ)に20歳以下の選抜チームを参加させる計画を持っているという。
 全面的に賛成である。
 世界最強の代表チームは、世界最強のクラブチームに、おそらくはまったくかなわない。メッシのいる寄せ集めのチームより、メッシのいる訓練されたチームの方が強い。そして、ほとんどの国々の選抜チームが、連係上の問題や練習時間の不足に悩まされている。

 それだけに、代表チームをクラブチームのひとつとしてリーグ戦に参加させるというアイデアが実現すれば、日本のU―20代表は他の国が持たない大きなアドバンテージを手に入れることになる。毎日の練習をベースとし、年間40試合近くを戦う代表チーム……強くならないわけがない。

 他のチームの選手にとっても、若い選抜チームの参加は大きな刺激となる。

 JFLに大学チームが参加していた頃、彼らの試合には多くのJリーグのスカウトが足を運んでいた。結果、お目当ての大学生ではなく、対戦相手の選手が“発掘”されることもままあった。だが、流通経済大が降格して以来、JFLを見に来るスカウトの数は激減し、無名の才能が脚光を浴びる機会も減った。

 将来の日本を背負って立つ選手たちがリーグに参戦するとなれば、当然、注目度も高まろう。対戦する選手たちからすれば、くちばしの黄色いひよっこどもにプロの厳しさをたたき込む格好の機会である。若い才能はタフに磨かれ、若い才能を封じた側にもスポットライトが当たる――スペイン2部に加盟しているバルセロナの2軍チームが毎週立ち向かっているのと同種の構図を、日本でもぜひ見てみたい。

 ちなみに、今回の構想のモデルとなったのはシンガポールのケースだという。ここでは、「ヤングライオンズ」と呼ばれるU―23代表が国内リーグに参加し、プロのクラブチームとしのぎを削っている。そして、このリーグには、隣国マレーシアからも「ハリマウ・ムダ(ヤングタイガー)」との愛称を持つマレーシアU―23代表チームが参加している。昨シーズン、リーグの新人王に選ばれたのは、このチームのアタッカーで、後に日本でプレーする最初のマレーシア人選手となったワンザック(FC琉球)だった。

 まだ参加チームの名前、数も定まっていないJ3だが、JFLからかなりのチームが移行することを考えると、20歳以下の代表チームは相当に苦しい戦いを強いられるはず。最下位に沈みっぱなし、ということも十分に考えられる。だが、そこで味わう屈辱は、世界と戦う上でこれ以上はない財産にもなるはずだ。

<この原稿は13年5月23日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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