いよいよ今季の欧州ナンバーワンクラブが決定する。現地時間25日、ロンドン・ウェンブリースタジアムで2012−13欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝が行われる。ファイナルに駒を進めたのはともにドイツのバイエルン・ミュンヘンとボルシア・ドルトムント。CL決勝史上4度目の同国対決となった。バイエルンは12季ぶり5度目、ドルトムントは16季ぶり2度目のビッグイヤー獲得に挑む。
 バイエルンは準決勝で優勝候補筆頭のFCバルセロナを2戦合計7−0で粉砕し、2シーズン連続のファイナル進出を決めた。ブンデスリーガでは6試合を残しての史上最速優勝を記録するなど、国内外で安定したパフォーマンスを見せている。そんなドイツ王者の戦力を分析すると、攻守ともに穴らしい穴は見当たらない。

 まず、バルサ戦でも示したように、バイエルン最大の特徴は超攻撃的サッカーだ。MFアリエン・ロッベン(オランダ)、MFフランク・リベリー(フランス)、MFトーマス・ミュラー(ドイツ)、FWマリオ・マンジュキッチ(クロアチア)ら各国代表クラスのアタッカーを揃える前線は相手にとって脅威となる。4人とも高い個人技を誇り、フィジカル、運動量も申し分ない。また、積極的にプレスをかけることで、守備への貢献度も大きい。
 
 戦術としては高いボールポゼッションから攻撃を組み立てるのが基本スタイルだが、今季はカウンターからの得点パターンも増えている。ひとつの型に絞られなくなったことがバイエルンの攻撃をより強力にしたのだ。

 そして、守備陣も抜群の安定感を見せている。ブンデスリーガでの失点は34試合でわずか18点。次点のバイヤー・レヴァークーゼンが39失点であることを見ると、鉄壁ぶりがよくわかる。主力のDFホルガー・バトシュトゥバーを長期離脱で欠くが、その影響を感じさせない。ドイツ代表でも守護神を務めるGKマヌエル・ノイアーを中心に、決勝でも固い守りで攻撃陣を支える。

 昨季はホームでファイナルを戦いながら、優勝を逃すという屈辱を味わっただけに選手のモチベーションは高い。出場停止もなく、万全の状態でビッグイヤー獲得に臨めそうだ。

 対するドルトムントは、昨季は香川真司(現マンU)を擁してブンデス連覇とカップ戦の2冠を達成。今季は国内では無冠に終わったものの、欧州CLではレアル・マドリード、アヤックス、マンチェスター・シティという各国王者が集う死の組を突破。さらに準決勝で再び激突したレアルを下し、優勝した96−97シーズン以来の欧州CL決勝の舞台へたどり着いた。

 ドルトムントの特徴は縦に速いサッカーだ。組織的な守備からボールを奪い、すかさずカウンターを仕掛ける。サイドバックやボランチが連動して相手のアタックを抑え、個人能力の高いFWロベルト・レヴァンドフスキ、マルコ・ロイスらが待ち構える前線につなぐかたちが得点パターンだ。

 その上でディフェンス面では、バイエルンの強力なアタッカー陣にスペースを与えないことがポイントになる。そのためには、DFラインをあまり高く設定する必要はないだろう。あとは選手間の距離が間延びしないようにすること。辛抱強くバイエルンの攻撃をしのぎ、速攻につなげられるか。

 16季ぶりの快挙を企てるドルトムントだが、ここにきて暗雲が立ち込めている。守備の要で攻撃の起点にもなるセンターバックのマッツ・フンメルスが、18日のリーグ最終節で負傷交代。欧州CL決勝への出場が危ぶまれているのだ。ドルトムントは、もうひとりの中心選手であるマリオ・ゲッツェが右足のハムストリング負傷の影響でファイナルを欠場することをすでに発表している。ほぼベストメンバーのバイエルン相手に攻守のキーマンを欠くことはあまりに痛い。代役の選手を起用するなか、いかに戦力ダウンを抑えるか。ユルゲン・クロップ監督の手腕に注目が集まる。

 ここまで両チームの戦力を見てきたが、万全の状態で雪辱に燃えるバイエルンが優勢か。だが、欧州CL決勝でこれまで3度あった同国対決(スペイン、イタリア、イングランド)のうち2大会は、いずれもPK戦にまでもつれこむ死闘になっている。ドルトムントも高い組織力を発揮できれば勝機はある。

 果たして、4度目の同国対決も接戦となるのか。それとも一方が強さを見せつけるのか。全世界が注目する一戦の火ぶたがまもなく切って落される。