キリンカップ優勝。“ひるまぬ守備からひるまぬ攻撃”へのトライ
いい守備から、いい攻撃へ。
森保一監督が日本代表に植えつけてきたコンセプトである。だが先のFIFAワールドカップ2026、ブラジル代表とのラウンド32において守から攻へのトランジジョンを封じられ、終盤は守備一辺倒となってしまった流れから最後の最後に勝ち越し点を奪われた。
試合から1カ月ほど経ってインタビューした際も、指揮官はずっと己の采配と向き合っていた。
「本当にブラジルは強かったです。でも采配で勝てた試合でもありました。自分の2期目において一番やってきたのは、個で局面を勝つ力を上げていくこと。苦しくなると(守備で)数的優位をつくろうとしてしまうので、まずは目の前の1対1に勝つべく、(前線から)ハメていって選手が思い切って前に出ていけるようにしていけば、背中を押せたのかもしれません。ダブルチーム(で対応する)という言葉を選手に決して使わないのも、目の前の1対1に勝つのが前提としてあるから。そこにもう一度、戻すべきだったのかもしれないというのは自分のなかにあります」
ボールを奪うことはできてもすぐに圧力を掛けてくるブラジルに回収される場面が続き、前に出ていけなくなってしまった。後半途中に両ウイングバックを交代させ、菅原由勢、鈴木淳之介を投入したのも守備重視ではなく、あくまで彼らの攻撃力をセットにした勝負手であった。だが交代カードを駆使しつつも、押し戻すことはできなかった。ブラジルを本気にさせたことで「守から攻のトランジション」におけるもう一つ上のレベルでの課題を突きつけられたのだった。
あのブラジル戦から3カ月後に用意された9、10月の親善試合4連戦。ウルグアイ代表、ベネズエラ代表に2連勝して臨んだエクアドル代表とのキリンカップ初戦ではより高い位置からハイプレスを仕掛け、守から攻のトランジションをかなり意識していたように映った。
元アルゼンチン代表のマルセロ・ガジャルド新監督率いるエクアドルもカウンタープレスに長け、日本がボールを失うシーンも目立った。局面の戦いも強く、しぶとかった。試合に対するモチベーションも高い。日本はそれでも果敢にハイプレスを仕掛け、ボールを失っても連動しながら食い止めた。危なかっしい場面はあれども、前に出ていく守備、コンパクトな守備からチャンスをつくろうとした。
印象的だったのが後半27分のプレーである。ハーフウェーライン付近、エクアドルのパスを伊東純也がカットし、佐野海舟、田中碧を経由して1トップの上田綺世にボールが渡って鎌田大地、中村敬斗へ。最後は伊東のシュートにつなげている。伊東のシュート時、ゴール前に3人が詰めており、シュートが枠内に飛んでいれば、というシーン。得点に結びつかなかったことは課題だとしても、ブラジル戦の教訓を活かそうとしている姿勢は十分に伝わってきた。
試合後の会見で森保監督はこう述べている。
「(ハイプレスは)ワールドカップでもトライしていましたが、相手も強くなってそう簡単には行けなかった。まだまだ上げていかなければない課題というか、やっていかなければならない部分として出たので、アジアカップに向けて、次のワールドカップに向けて、よりボールを奪いに行くところは長谷部(誠)コーチが中心になって、選手にトライしてもらっています。むき出しの1対1になることも多いですし、組織として守備をしながらも1対1の局面において(個々の)責任で勝っていく。ここをコーチ陣が選手に促してくれている。
かなり(強度高く)ボールを奪いに行っているので、選手たちは相当きつかったかなとは思います。湿度が高く、球際の局面で相手も強く来ていましたから。選手たちは疲労があるなかでもいいチャレンジをしてくれました」
日本はこの後、ニュージーランド代表に2-1で勝利してキリンカップを制覇。4連戦を全勝(1PK勝ち含む)で乗り切った。そして11月にはシンガポールに遠征して、再びブラジル代表との対戦を迎えることになる。
むき出しの1対1に勝つという大原則。
世界トップクラスの相手に「いい守備から、いい攻撃」では十分じゃない。個として組織として「ひるまぬ守備から、ひるまぬ攻撃」へバージョンアップしなければならない。リベンジへの大きなカギになることは言うまでもない。