前期は20勝17敗3分の2位。5月下旬までは首位を走っていただけに、香川に優勝をさらわれ、とても残念です。約半分の21試合を終えた時点では14勝5敗2分と2位には3.5差をつけていました。「まだ半分、どうなるか分からない」との思いと同時に、「残りを勝率5割でなんとか逃げ切ろう」とヘンな計算をしてしまった僕にもスキがあったと感じています。
 チームがいい状態をキープするのは難しいものですが、悪くなるのはあっという間です。打撃好調でクリーンアップを任せていた大谷真徳がスライディングで肩を痛めて離脱し、そこからチームは6連敗。連敗をやっと止めたと思ったら、つなぎ役の岡崎稔弘がバントの構えをして死球で指を詰めてしまい、選手登録を抹消せざるを得なくなってしまいました。

 負けが込むとどうしてもプレーが消極的になり、ミスも出ます。今までできていたことが急にできなくなるのです。なんとかしようと皆が思っていても、それが裏目に出る悪循環。こういう時にチームとして、個人としてどう対処すべきか、私も選手も高い授業料を払った気がします。

 5月中旬まで5勝1敗と勝ち星を伸ばしていたエースの山口直紘も、チーム状態が下降線をたどるとともに勝てなくなりました。思うようなピッチングができず、マウンド上でイライラしているのは明らか。こうなると余計にリズムが悪くなり、ピッチングを乱す負のスパイラルに陥ります。

「アウトとったら、一度、感情をむき出しにして吠えてみろ」
 彼には、そんなアドバイスをしてみました。珍指令のように思われるかもしれませんが、これは僕の体験を踏まえたものです。

 僕も現役時代は、アウトをとったからと言って派手なパフォーマンスをするタイプではありませんでした。ただ、どうやってもうまくいかない時、「オリャー!」と声を出して放ったことがあります。気持ちを言葉にして無理やりにでも出せば、悪い流れを断ち切れるかもしれない。そう思ったからです。

 山口も淡々と投げる右腕ですが、何かを少し変えてみただけで本来の自分を取り戻すきっかけになることがあります。もちろん、声を出すのはひとつの例です。力はあるのですから、悪い時の修正法をいろいろと探ってほしいと思っています。

 前期を戦ってみて、投手陣に関してはセットアッパーの入野貴大、抑えのオナシス・シレットと勝ちパターンは構築できました。そこへつなぐ中継ぎとして安里基生と、福岡一成もまずまずの働きをみせています。2年目の安里は投げるリズムがいいことが結果を出せている要因でしょう。テンポよく投げ込むことでボールも走り、変化球も決まっています。バッターがタイミングをとる余裕も与えませんし、野手も守りやすいですね。リズムが狂ってポカをするケースもありますが(苦笑)、小気味よいピッチングを続けてほしいものです。

 暑い夏場は先発が毎試合、完投するのは難しくなります。彼らを中心としたブルペンがしっかりすれば、先発も気がラクです。広島から派遣されている小松剛も実戦で投げる中で調子があがってきました。前期以上に。山口、岩根成海との3本柱が試合をつくれれば、後期も十分戦えるとみています。

 後期こそ優勝する上でポイントとなるのは打線です。特に開幕前にも指摘した1、2番のバッターが機動力を駆使して相手を揺さぶれるかが重要になります。その点、前期はまだまだ不満が残りました。1番の吉村旬平は開幕1カ月こそ固め打ちが目立ったものの、試合を重ねるにつれ、あっさりとアウトになってしまう悪い癖が出てきています。2番の東弘明も勝負強さはありながら、まだボール球に手を出すシーンが多く見受けられました。

 1、2番の役割は何より出塁すること。塁に出なければ、アピールポイントである足をみせることもできません。バッターとしてヒットを打ちたい気持ちは分かります。しかし、ピッチャーの立場からすれば、足の速い選手に四球を選ばれるのは打たれること以上にイヤなものです。

 吉村と東には、ヒットも四球も同じ気持ちで打席に立ってほしいと感じています。たとえ出塁できなくてもボールを見極め、粘る。こういった姿勢をみせれば、NPBのスカウトの評価も高まるはずです。

 終わってみれば、優勝した香川と最下位の高知に負け越してしまいました。今季は、どのチームも投手力が高く、後期は一層、混戦になるでしょう。香川にサイドから力のあるボールを投げる又吉克樹がいます、愛媛には元NPBが4人(河原純一、西川雅人、金森敬之、小林憲幸)に、広島の育成選手・池ノ内亮介もいます。高知も井川博文をはじめ、実績のある選手が少なくありません。

 どの選手もドラフト指名、NPB復帰に向け、後期はスカウトに自らの存在を印象づける大事な時期です。前期の反省を踏まえ、個人の力を十分に発揮しつつ、チームとして優勝を狙う。そんな残り40試合にしたいと考えています。

 徳島の皆さん、後期はいい結果を出します。引き続き、応援よろしくお願いします。


島田直也(しまだ・なおや)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1970年3月17日、千葉県出身。常総学院時代には甲子園に春夏連続出場を果たし、夏は準優勝に輝いた。1988年、ドラフト外で日本ハムに入団。92年に大洋に移籍し、プロ初勝利を挙げる。94年には50試合に登板してチーム最多の9勝をあげると、翌年には初の2ケタ勝利をマーク。97年には最優秀中継ぎ投手を受賞し、98年は横浜の38年ぶりの日本一に貢献した。01年にはヤクルトに移籍し、2度目の日本一を経験。03年に近鉄に移籍し、その年限りで現役を引退した。日本ハムの打撃投手を経て、07年よりBCリーグ・信濃の投手コーチに。11年から徳島の投手コーチを経て、12年より監督に就任。
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