BCリーグは6日から後期がスタートしました。群馬ダイヤモンドペガサスは、同じ上信越地区の新潟アルビレックスBCと信濃グランセローズに連敗してしまいましたが、2球団との実力差はほとんど変わりません。後期こそは優勝して、2年ぶりのプレーオフ進出を目指します。
 さて、前期は新潟に9.5ゲーム差をつけられての2位に終わりました。前述したように、新潟との力の差はそこまで感じることはありませんでした。しかし、若い選手が多いためかミスが多く、勝つために何をすべきかを理解していない選手が少なくありませんでした。その部分で新潟との差が出てきたように思います。

 私自身、BCリーグでの指導は初めてということもあり、前期はどうなるのだろうという気持ちもありました。しかし、選手の特徴や性格、実力が見極められるようになった今、各選手に応じた指導ができるようになっていると感じています。また、それが十分に通用するという手応えも前期終盤につかんだことは、非常に大きな収穫でした。

 先発陣、フォーム修正後の好投

 さて、前期はチーム防御率がリーグワーストの3.86という結果でした。この成績を見ても、後期優勝へのカギはやはり投手陣の立て直しがまずは挙げられます。エースとして期待された3年目の栗山賢(日本文理高−鷺宮製作所)は、シーズン途中はなかなか勝ち星に恵まれなかった時期もありましたが、最終的にはチームトップの5勝(5敗)をマークしました。

 栗山は当初、窮屈なフォームで投げていました。具体的に言うと、体重移動しながら打者に向かっていく際に、背中が丸まり、左足が三塁側に踏み込み過ぎていたのです。そのため、特に右打者の時にストライクゾーンが狭くなり、リリースポイントも定まっていませんでした。

 おそらく栗山自身はそれが自分にとって感覚として投げやすいと勘違いしていたのです。しかし実際は、変化球が抜けるなどコントロールが定まっていませんでした。そこでシーズン途中、フォーム改善に取り組ませたところ、現在ではだいぶロスのないフォームになってきています。それが6月22日、富山戦での今季初完投・初完封につながったのだと思います。

 新人ながら先発の柱として頑張ってくれているのが、町田翔司(前橋工高−オール高崎野球クラブ)です。彼はもともと身体能力が高いのですが、入団した当初はどうしても腰が開いてしまい、ボールがシュート回転していました。そこで、腰からバッターに向かっていくようなイメージで投げるように、つまり下半身の力を維持したまま体重移動をするようにしたところ、非常に良くなりました。初登板の際には、マウンド上で落ち着きがなかった町田ですが、今月2日の信濃戦では4安打11奪三振で初完封を達成するなど、精神的にも強くなっています。最近では配球を勉強するなどの意欲を見せており、さらなる活躍に期待しています。

 実力発揮のための課題

 一方、前期は実力が発揮できなかったのが抑えの清水信寿(豊田西高−中京大−エイデン愛工大OB BLITZ−三重スリーアローズ)です。1年目の昨季は、リーグ2位タイの12セーブを挙げる活躍をした清水ですが、今季はスピードを求めすぎるあまり、身体に力が入って腰が開いてしまうのです。そのため、得意のカットボールのキレもありません。

 また、もう少し抑えとして必要な野球の知識を身に付け、メンタル面での成長が欲しいところです。例えば、3点リードでマウンドに上がった場合、ひとりくらいランナーが出ても、それほど気にする必要はありません。バッターに集中して打ち取ることが最優先です。

 ところが、そこで一生懸命に牽制球を一塁に送るのです。それでピッチングのリズムを崩したり、バッターへの集中が半減してしまうことの方がピンチを拡大させてしまいます。もちろん、1点差だったりした場合は、また違った気配りや集中が必要です。こうした野球の知識を身に付けることも、自分のピッチングを取り戻すことにつながるはずです。

 昨年7月、ケガの治療に専念するためにチームを離れた堤雅貴(高崎商業高)が6月に復帰しました。1年目の2009年には最優秀防御率(1.99)をマークし、チームの大黒柱としてリーグ初優勝の立役者となるなど、実力は証明済み。堤自身も早く投げたいという気持ちがあったのでしょう。久々の実戦にもかかわらず、なかなか腕が振れています。しかし栗山同様、体重移動に課題があり、ボールが甘く高めに入るのです。まずはフォームを修正し、後期は先発ローテーションの一角に入ってきてもらいたいと思っています。

 後期で確実に優勝をするための土台づくりには、しっかりとした手応えを感じています。やはり前期に4勝7敗1分と負け越した新潟戦がカギを握ると思いますので、新潟戦にどんどん調子のいいピッチャーをつぎこんでいくつもりです。前期のような安易なミスをすることなく、投手を中心とした安定した守備力で優勝を目指します。

川尻哲郎(かわじり・てつろう)>:群馬ダイヤモンドペガサスコーチ
1969年1月5日、東京都生まれ。日大二高、亜細亜大、日産自動車を経て、94年にドラフト4位で阪神に入団。2年目にプロ初勝利を挙げると、翌年には自己最多の13勝(9敗)をマーク。98年5月26日の中日戦で史上66人目となるノーヒットノーランを達成し、同年オールスターゲームにも出場した。2004年に近鉄に移籍し、翌年には楽天へ。05年シーズン限りで現役を引退した。13年より群馬の投手コーチを務める。
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