今年の夏はいったい何度「観測史上初」という言葉を見たり聞いたりしただろう。とてつもない暑さ。破壊的な豪雨。いままでにはなかったことも、起こり続ければ日常になる。いまはどこかに引っかかっている違和感も、あと何年かすると感じなくなっているのかもしれない。
 実は、変容しつつある気候に対して感じるのと似た違和感を、今年のサッカー界に感じている。昔は、こんなふうではなかった。こんなふうになるはずのない年だった――そんな気がしてならないのだ。

 ご存じのように、昨季終了後、欧州サッカー界ではある種の“グレート・リセット”が起きた。バルサ、レアル、マンチェスターU、バイエルンといった超ビッグクラブはそろって監督を交代させ、新たな道への挑戦を始めた。悪いこと、批判されるべきことではもちろんない。ないのだが、こうした大がかりなシャッフルは、従来、W杯が終了したあとに起こってきた印象がある。W杯で活躍した選手が新天地を求め、斬新なサッカーを披露した監督がビッグクラブに引き抜かれる――。

 もちろん、W杯は依然として重要な大会であり続けることだろう。しかし、サッカー界のサイクルは、ことに欧州のサイクルは、いよいよW杯の影響下を離れつつある。4年に一度の大会で何が起きるかということより、欧州CLで何が起きるか、ビッグクラブで何が起きるかの方が、明らかに強い影響力を発揮するようになってきた。

 つまり、変化のサイクルは短くなりつつある。変化は4年に一度ではなく、毎年ごと、ひょっとしたら半年ごとに起きるようになる。

 日本サッカーもそうした流れと無縁ではない。

 あくまでも一般論だが、これまで、日本代表に向けられる目はあくまでも4年単位だった気がする。アジアで負けることが少なくなった以上、W杯本大会が終わるまでは監督が変わる可能性はあまりない。従って、サッカーの劇的な変化、メンバーの大幅な入れ替えは4年ごとに行われるものだという思いが、暗黙のうちに行き渡っていた。

 だがいまや、おそらくはブラジルまで指揮を執るであろうザック監督には、新戦力の抜擢を求めるファン、メディアの声が当たり前のように向けられるようになった。4年前のいまごろは、監督の手腕を疑問視する声はあっても、メンバー選考に対する異論はさほどなかった印象がある。日本のファンが変化を求めるサイクルも、以前よりは確実に短くなってきている。

 果たして、これからの10カ月間にはいかなる変化が待ち受けているのか。まもなく欧州CLの本戦が始まる。必ずしも昔と同じではないサッカーの季節が、今年もやってきた。

<この原稿は13年8月28日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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