スタートこそ良かった後期も、最終的には最下位。これで昨年から4期連続の最下位という結果に終わってしまいました。高知の皆さんには申し訳ない気持ちでいっぱいです。優勝した徳島や2位の愛媛、前期優勝した香川との差はどこにあったのか……。一言で言えば、投打の軸の不在が最後まで響いたように感じます。
 他の3球団はピッチャーにしろ、バッターにしろ、エースや中軸で投打に計算できる選手がいました。しかし、高知は違います。投げては井川博文フアン・グルジョンが1年間、先発ローテーションに入っていたものの、もうひとつ安定感がありませんでした。バッターも当初、4番に考えていた安峻亨の調子が上がらず、退団。若い迫留駿河田直人も1年間コンスタントに結果を残すには力が不足していました。

 河田は前期の後半から好調でしたが、夏場に入り、体重も減ってスイングスピードが落ちました。今まで本人は長いシーズンを戦ったことがないのですから、この事態はある程度、予想ができました。バッティングに関してはNPBのスカウトからも好評価をもらっています。来季に向け、オフにはしっかり体力づくりをしてほしいものです。

 結局、4番にはデイビー・バティスタを起用することになりました。ただ、彼は本来、俊足を生かしたトップバッターが適任の選手。4番にすると、どうしても大きいのを狙いがちです。選手にはそれぞれタイプがあります。適材適所で使えないと持ち味は発揮できません。

 他球団では2年、3年とリーグで経験を積んだ選手が着実に成長し、チームの中心になっています。しかし、高知は長く在籍している選手がケガなどで離脱することが多く、その経験をフルに発揮できていません。これがチーム力の差として表れています。1試合1試合を振り返ると、決して完敗ではないものの、大事な場面で得点できなかったり、失点して敗れているゲームが多いのです。これも試合に出ている選手の経験の有無が影響していると感じます。

 後期に入って、ウィルフィレーセル・ゲレロ(元徳島、元広島)、赤嶺祥悟(元愛媛)とリーグで実績のあるピッチャーを補強しました。ただ、2人ともブランクがあり、数カ月で元の状態に戻せるほど甘くありません。ゲレロはコントロール、赤嶺は球威の面で状態に波があったため、以前のようなピッチングができませんでした。

 苦しい戦いが続いた中、若手で来季以降が楽しみな選手が出てきたのは希望の光です。ピッチャーでは左腕の雄晴でしょう。制球難が課題でしたが、短いイニングで中継ぎを重ねるうちに改善し、一本立ちしました。トレーニングを積んで球速も140キロ台が出るようになっています。先日は先発でも起用し、初勝利を挙げました。変則サウスポーですから、うまくアピールすれば、ゆくゆくはNPBの道も見えてくるでしょう。スタミナをつけ、長いイニングを投げたり、連投も問題なくなればスカウトにも注目されるはずです。

 野手では19歳の外野手、小島慶士を先日、選手登録しました。彼は昨年から練習生としてチームに所属しており、ミート力のあるバッティングが持ち味です。守備走塁はまだまだですが、残り試合でどのくらいできるのかを試してみようと考えています。雄晴も小島も地元出身の選手。近い将来、彼らがチームの主力になってくれることを期待しています。

 チームとしての戦いは、あと3試合。しかし、個人としての戦いは、これからが本当の勝負です。10月には宮崎でのフェニックス・リーグで、NPB行きへ最後のアピールの場が設けられています。例年、ここで目に留まり、ドラフト指名を勝ち取った選手が何人もいます。シーズンが終わるからといって気を抜かず、1日1日レベルアップしていくことが大切です。

 11月には高知でウインターリーグの開催も決まりました。参加する選手には自らを売り込む機会が増えることになります。NPBに行くにせよ、四国で来年も頑張るにせよ、野球人生はこの先も続きます。4期連続最下位の現実を踏まえ、個人としてもチームとしても上を目指すには、一層の努力が欠かせません。この秋は厳しい練習が待っていることを選手も覚悟してほしいですね。僕も、ここ数年の悔しさをぶつけ、心を鬼にして選手たちを鍛えたいと思っています。 
 

定岡智秋 (さだおか・ちあき)プロフィール>: 高知ファイティングドッグス監督
 1953年6月17日、鹿児島県出身。定岡三兄弟(次男・正二=元巨人、三男・徹久=元広島)の長男として、鹿児島実業から72年、ドラフト3位で南海(現ソフトバンク)に入団。強肩の遊撃手として河埜敬幸と二遊間コンビを形成した。オールスターにも3回出場し、87年限りで現役を引退。その後、ホークス一筋でスカウトや守備走塁コーチ、二軍監督などを歴任。小久保裕紀、松中信彦、川崎宗則などを指導し、現在の強いソフトバンクの礎づくりに貢献した。息子の卓摩は東北楽天の内野手。08年より高知の監督に就任。現役時代の通算成績は1216試合、打率.232、88本塁打、370打点。
◎バックナンバーはこちらから