17日、Jリーグは事務局で理事会を開き、J1の大会方式を2015年から前後期の2ステージ制にし、「スーパーステージ(仮称、SS)」「チャンピオンシップ(仮称、CS)」からなるポストシーズンの導入を正式決定した。2014年は従来通りの1シーズン制で行われる。大会の概要は、前、後期でそれぞれ順位を決定。レギュラーシーズン終了後、SS1回戦が「前期1位―後期2位」「後期1位―前期2位」の組み合わせで行われ、その勝者同士が2回戦で対戦してCS進出を争う。CSはSSを勝ち抜いたクラブと年間最多勝ち点獲得クラブが対戦し、年間王者を決する。SS、CSともにノックアウト方式で実施。通年の勝ち点最多獲得クラブと前後期の1位、2位クラブが重なった場合については今後、協議する。またポストシーズンの正式名称、開催地、年間順位の決定方法等についても順次、決定される見通しだ。
「大会方式を変更することで、J1リーグ戦をこれまで以上に活性化させ、スーパーステージやチャンピオンシップに注目が集まることによってJリーグが今以上に国民的なコンテンツに成長し、多くの方々に関心を持っていただき、ファン・サポーターの裾野をさらに広げることを目指します」
 会見に出席できなかった大東和美Jリーグチェアマンは公式HPでこのようなコメントを発表した。理事会は予定時間を1時間もオーバーした。この事実から、決定を下すことが容易な案件ではなかったことがうかがえた。

「1ステージ制が王道であり、望ましい姿。しかし、現在のJリーグの危機的状況を打破するために、大会方式を変更する」
 会見に臨んだ中野幸夫専務理事は、このように改革の決議理由を説明し、大会方式変更に至った背景として「年間入場者数の減少」「Jリーグ収入の減少」「メディア露出の減少」などを挙げた。

 J1の年間平均入場者数は、08年が1万9202人であったのに対し、12年は1万7566人に減少。また、Jリーグ収入に関しては、08年の128億円から12年は119億円に減益している。これらを踏まえて、中西大介競技・事業統括本部長は「このままでは2014年シーズンの(スポンサー等からの)Jリーグの収入が10億単位で落ち込む可能性がある」と説明。大会方式変更は「15年から2ステージ制に変更することで、14年も支援してもらう体制をつくることができ、今年の収入を維持するため」という見解を示した。また「(13年の)収入を維持できるということは各クラブへの配分金も確保できる。同時に、育成への投資を減らしてはならない中で、それを確保できることは重要だと考えている」と大会方式変更による効果を述べた。

 そして中西競技・事業統括本部長は大会方式を変更することでJリーグが増やしたいのは、収益のみではないことも強調した。
「Jリーグが技術的にも戦術的にもレベルが高いことは、東アジアカップの結果からも証明されている。それを幅広く知ってもらえていないことが問題で、どうすれば幅広くJリーグの魅力ある試合を知ってもらい、見てもらうことができるのか」
 すなわち、新たなファンを増やすための2ステージ制でもあるのだ。中西競技・事業統括本部長は2ステージ制変更によってシーズン中の「ヤマ場」を増やすことでメディア露出を拡大し、新たなファン獲得につながることを期待した。

 ただ、新規ファンの開拓を目指すといっても、現行のファンからは反発も受けている。先週末のリーグ戦では、各会場で2ステージ制変更に反対する横断幕が掲げられた。この日も事務局の外でサポーターが「2ステージ制断固拒否」と書かれた横断幕を広げていた。

「サポーターの方々の隅々にまでご理解していただく努力ができなかったことは申し訳なく思っている。意見をぶつけてきてくださるコアなサポーターの方々には感謝しているし、お詫びを申し上げたい」
 中野専務理事はファン・サポーターへの説明不足を謝罪し、こう続けた。
「熱心なサポーターの方々をもっと増やさないといけないという危機感がある。ライトな層の方々にもっとスタジアムに足を運んでもらうために“ヤマ”をつくり、こうしたファンをもっと増やすための方策であることを理解いただきたい」
 今後は現行のファンにも“改革”についての説明を行っていくという。

 また中野専務理事は2ステージ制導入にあたって「集客数やクラブの収入構造、経営状況に応じてある一定の目標値を立てる」ことを明かした。具体的な数字は明言しなかったが、その目標値を達成できた場合は、再び1ステージ制に戻す考えもあることを示唆。そして「再検討すべきなら謙虚に再検討すべきだ」と、2ステージ制変更の結果が芳しくなかった場合も1ステージ制に戻す可能性も示した。もちろん、1ステージ制に戻す過程として望ましいのは前者だろう。その上で中野専務理事は目標を達成するための目途として「1、2年とは思っておらず、ある程度の時間を費やした中で結果を導かないといけない。イメージとして、最低5年ぐらいはかかるのではないか」と語った。

「この決定は、決して過去への回帰ではなく、未来への前進です」
 大東チェアマンはこのように強調した。2ステージ制から1ステージ制に移行した05年が1度目の分岐点だった。15年は、Jリーグにとって2度目のターニングポイントとなる。